・・・何で俺、こんなに苦労してんだろ?
番外編・悩みのタネ
「ふう。 手塚も大変だなあ。」
そう言いながら道を歩いていたのは乾。
彼は、手塚の所に新しい薬を持っていった帰りだった。
手塚の家は町の郊外にあったため、乾は大通りに出ることなく、比較的人の少ない道を通って城へと戻っていった。
城の中に入ると、彼は自分が責任者をやっている研究塔へと足を運んだ。
中へ入ると・・・。
「一体今までどこに行ってたんですかーーー!!!」
と、いきなり怒られた。
「ごめんごめん。 いやあ、ちょっと手塚の所に用があってね。
少し行ってきたんだよ。」
「ったく、自分の立場を考えてくださいよ!
どうせ薬を届けに行ってたとか、簡単な用だってんでしょ?
それくらいなら俺が行きますって。 仕事ずんずんたまってるのに。 たまには俺の苦労も分かってくださいよ。」
・・・ぼろくそである。 こうなっては研究所の責任者も形無しだ。
「まあ、いいじゃないか。 俺にだってたまには息抜きも必要だよ?
ね? 『海堂』。」
「あんたはいつもとってるでしょうがーーー!!!」
・・・また怒られた。 さっきから乾に向かって怒りまくってるこの人物、名を海堂薫という。
そして、乾の助手を務めている。
ってか助手というか・・・嫁?
最近の様子を見ていると、もはや嫁にしか見えない点がいくつかある。
苦労してんだよね〜。
「はいはい、仕事すりゃあいいんでしょ?」
「そうです。 やりゃあいいんです。
今度は逃がしませんよ。 これが全部終わるまで。」
そう言いながら海堂が乾の机にどさっと置いたのは、山のような書類。
「・・・これは一体何?」
「見りゃあ分かるでしょ。 書類ですよ書類。
あなたが今までためた分のね。 いい加減に片付けてください。
苦情がきてるんですよ。 他の部から。 とっとと終わらせてくれって。
ついでに今日榊様からも言われちゃったじゃないですか!」
海堂の剣幕はすごかった。
その剣幕に、乾は負けた。
「分かった分かった。 やりますやります。」
そう言い、仕事をしはじめた乾に海堂は満足そうな顔をすると、自分も仕事を始めた。
☆
浅い眠りの中にいた海堂ははっ!と目を覚ました。
どうやらいつの間にか寝てしまっていたようだ。
傍においてある時計を見るともう夜の12時を回っていた。
そして、自分の体には毛布がかかっていた。
ああ、乾さんが掛けてくれたんだなあ。 やっぱりあの人優しいなあ。と、思った瞬間!
海堂はがばっと起き上がった。
「しまった! 乾さんのこと忘れてた!!」
・・・さあて、そこには?
誰かいる? いない?
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