おいで、おいで。
青白い手が、呼んでいる・・・。
あと九十八本・・・手
「岳人! 何やっとるんや? 早く来!」
侑士にそう呼ばれ、俺はその場を離れ、皆の所へ駆け出した・・・。
・・・ここは海。 近くに跡部の別荘があるというので、俺達氷帝メンバーは遊びに来ていた。
「ところでさー、ちょっと聞きたいことがあるんだけど。」
ひとしきり遊んだあとで別荘に戻って来て、休んでいた時に、ふいにジローが跡部に尋ねた。
「なんだ?」
「さっき見つけたんだけどね、海岸の奥のほうに洞窟があったんだ。
で、中を探検でもしてもようかな〜って思ったらそこを丁度通りかかった地元の人に怒られちゃったんだよ。
別になんにもしてないのに何で〜?」
「そんなこと俺様が知るかよ。」
そう話していると、飲み物を持ってきた執事が、
「えっ? あそこの洞窟に近づいたんですか?」
と、聞いてきた。 それにジローがうんと答えると、執事は少し青い顔になって言った。
「・・・あそこには近づいてはいけません。 絶対に。」
何故か理由を聞いても、執事はこれ以上何も言わなかった。
俺はこの話を聞いて、どうせここら辺の伝説かなんかだろと思った。
どうせわあわあ言ってたってあそこには何もないんだ。と。
その日は皆疲れたので、また明日と言って早々に寝床についた。
★
次の日もまた、俺達は海に行って遊んでいた。
そして、俺はひょんなことから、昨日話題になっていた洞窟の傍に来ていた。
その洞窟の入口は、ぽっかりと空いていて、中は真っ暗だったが結構広そうだ。
「結構おもしろそうだな。 よっしゃ!
少し中を探検してみるか。 そんでもって中には何にも無かったってことを皆に教えてあげよーっと。」
そう言って岳人は洞窟の中へと入っていった。
★
洞窟の中はひんやりとしていて、夏の外の暑さが嘘のようだった。
「やっぱこん中は涼しいなあ。 おっ、まだ先がある。
行ってみよーっと。」
・・・その頃、外では急にいなくなった岳人を皆が探し回っていた。
「おーい! 岳人ー!! どこに行ったんだよー!」
「岳人ー!」
探し回っても見つからない。 どこに行ったのかと皆があせり始めた時、宍戸が、
「おい! こっち来てみろ!!」
と、呼んだ。 それに全員が行くと、そこにはぽっかりと口を空けた洞窟が・・・。
「見てみろよ。 これ、岳人のだ。」
そう言って宍戸が見せたのは、岳人が最近つけていた一本のミサンガだった。
「まさか、岳人はこん中に?」
「そう考えるのが妥当だろうな。 ったく、あいつは一体何を考えてるんだ?
まあいい。 おい、中に入って探すぞ。」
跡部がそう言って中に入ろうとすると・・・。
「おいっ! そこで何をしている?!」
と、急に誰かに怒鳴られた。 声のしたほうを見るとそこには1人の老人がいた。
「いえ、この中に友人が入っていってしまったみたいなんで、中に入って探そうと。」
そう跡部が言うと、老人の顔はみるみる青ざめていった。
「だめじゃ、ここには何があっても入ってはいかん。
・・・君たちの友達はもう戻ってはこないだろう・・・。」
「何で?!」
老人は、ゆっくりと語りだした・・・。
★
そのころ、中に入った岳人はずんずん奥へと入っていった。
なぜだろうか、彼の耳にはさっきからずっと自分を呼ぶ声が聞こえていたのだ。
『おいで、おいで・・・。」
と。 その声に誘われるまま、岳人は進んでいった。
彼の意識は朦朧としていた。 もう、自分が何のためにここに入っていったのか分からないほどに。
彼の意識はすでにその声に支配されていた。
そして、誘われるまま、彼は進み、そして・・・。
『来た・・・。 我らと同じ苦しみを味わうものが・・・。』
彼をここに誘っていたのは無数の、青白い手だった。
その手は、岳人の体を一斉につかんだ。 その瞬間、彼の意識が戻った。
「うわあああああーーーーー!!!」
洞窟の中に響き渡った悲鳴は、外にいた跡部達にも、確かに聞こえていた・・・。
『この洞窟は戦時中、防空壕として使われていたんじゃ。 この中には多くの人が隠れていた。
じゃが、運悪く敵に見つかっての。 敵はこの入口で火を焚いて中の人を焼き殺したそうじゃ。
人々は苦しみにもがき、この世を、人を強く怨みながら死んでいったという。
それからじゃ、この洞窟に入っていった者が戻ってこなくなったのは。
だから、入っては絶対にいかん。
ここに入ると、戻ってこれなくなり、永遠に成仏出来ずに苦しむことになるじゃろう・・・。』
【あとがき】
・・・一体何を書きたかったんだ?
まったく意味不明なものになってしまった・・・。
今回の犠牲者は、分かりづらいですががっくんです。 なんでこんなに分からんものになったんだ?
ってか、どんな話よ? これ。
またその場で考えたからこんなことになるのよ。 少しは計画性を持ちなさいよ。
05.7.9
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