来るなっ! 来るなあ!!





あと九十六本・・・追いかけてくる





(まったく、今日はツイテない。)





そう思いながら、神尾は自転車をこいでいた。

今は部活帰り。 本当に今日、神尾には何もいいことがなかった。

それは、部活の時に派手に転んだとか、お昼にパンが買えなかったとか、些細なものだが、以外にこういうのが堪える。

明日はいいことがあるといいなあと思いながら、走っていた。

そして、丁度墓地のある辺りを通った時、神尾は何かを見つけた。





(? 何だあれ?)





普通は気付かないであろう些細なもの。

しかし、神尾は気付いてしまった。 そして彼は、自転車を降り、墓地の中へと足を踏み入れていった。





「何だ、これか。」





神尾が見つけたのは、小さなブローチ。

それは、バラの形をしていて小さいながらも細かい細工がしてあった。

普通はここにそのまま置いていくものだろう。 しかし神尾は、何故かそれを拾ってしまった。





(・・・何でだろ? これはここにあっちゃいけない気がする・・・。)





そう思い、神尾はそのブローチをかばんの中にしまいこんだ。

そして再び自転車に乗り、家を目指した。

・・・その背後には、墓地が不気味に聳え立っていた・・・。



                                       ★



次の日は、昨日とは打って変わっていい日だった。

お昼には1番人気のパンが買えたし、部活の時には橘にほめられたうえに試合で伊武に勝てた。

その日の帰りには、彼はかなりの上機嫌になっていた。





(やった♪ 本当に今日はいいことがあったぞ〜。)





その上機嫌のまま、彼は墓地の辺りを通りかかった。 そして、スピードを落とすことなくそこを通りすぎた。

・・・墓地の中から、何かが見てる感じがした・・・。



                                         ★



次の日も、また次の日も神尾はついていた。 

しかし、あまりの運のよさに彼は何かひっかかるものを感じていた。





(何でだろうなあ〜。 何か変な感じがする。)





そう思いながらも、彼はその原因が分からなかったので、こんな時もあるか!と割り切っていた。

だが、その日の放課後・・・。





「やっべー、ちょっと遅くなっちまった。」





そう呟きながら彼は少し急いで自転車をこいでいた。

今日は試合で負けたので、ムキになって練習していたら少し遅くなってしまった。

そのため、彼は自転車をとばしていたのだ。 だが、いつもの墓地の所まで来た時・・・。





「あれ?」





妙な違和感を感じて神尾は自転車を止めた。 それがどんなものかは分からない。

だが、何かが自分を呼んでいる感じがしたのだ。 そして神尾は墓地へと足を踏み入れた。

・・・墓地の中には明かりがないに等しく、視界はかなり悪かった。 だが、それでも彼は進んでいった。

どこをどういう風に進んでいったのかは定かではない。 しかし、狭い墓地だ。 その広さはたかが知れている。

神尾が足を止めたのはとある墓の前。 そこは・・・。





「ここって確か・・・。」





そう、そこは先日神尾がバラのブローチを拾った場所だったのだ。

と、その時!





「ねえ、ここで一体何をしているの?」





突然そう声をかけられた。 その声に神尾はものすごく驚いた。

心臓がバクバク言っている。 まあ、夜にこんな場所でいきなり声をかけられたらそりゃあ驚くだろう。





「きっ、君は?」





必死に平静さをつくろってそう声を絞り出す。 こんなに取り乱しているなんて知られたくなかった。

それもそうだろう。 声をかけたのは小学1、2年生くらいの女の子だった。

こんな小さな子に取り乱している姿など見せられるはずがない。





「私? 私は『葵』っていうの。 お兄ちゃんは?」





「お、俺はアキラ。 ところで君はここで一体何をしているの? こんな時間に。」





そう尋ねると、葵と名乗った女の子は少し下をうつむいて言った。





「ここで落し物をしちゃったの。」





「えっ? どんな?」





「バラの・・・ブローチ。」





その言葉に、神尾は背筋に何か冷たいものが走るのを感じた。

逃げろ、逃げろと自分の本能が言っている。 早く、早くここから逃げなければ。

しかし、足はその場にぴたりと張り付いて動かない。





「ねえ、お兄ちゃん知らない?」





「知らない、知らないよ。」





早くこの子から開放されたくて、とっさに嘘を言う。 しかし・・・。





「嘘。」





そう言って葵はいきなり顔を上げた。





「ひっ!」





その顔を見て、神尾は悲鳴を漏らす。 それもそうだろう。

葵の顔は、さっき見たかわいらしい顔ではなく、火傷で右半分が真っ赤に焼け爛れていたのだから。





「嘘つき。 お兄ちゃん、ここで拾ったもん。 私のブローチをね。

 何で嘘なんかついたの? せっかく願い事かなえてあげたのに。 嘘つきは大っ嫌い!!」





神尾は自分の言ったことを後悔した。 何で嘘なんてついたのだろう?と。

そして悟った。 自分は取り返しのつかないことをしてしまったのだと。





「ごめん。 ごめんよ。」





「もう許さない。 知ってるって言ってくれれば、はいって言って返してくれれば何もしないでこのまま帰してあげようと思ったのに。

 嘘ついた罰。 私と一緒のとこに連れてってあげる。 もう2度と戻れない所にね。」





「やめろ・・・やめてくれ。」





「あっ! でもこのまま連れてくのはおもしろくないなあ。 う〜ん、どうしよう?

 ・・・そうだ! お兄ちゃんにチャンスをあげる。 今から鬼ごっこをやろ。

 鬼は私。 逃げるのはお兄ちゃん。 もしお兄ちゃんが逃げ切ったなら許してあげる。

 でも、私が捕まえたら・・・。 分かってるよね?

 よし! じゃあ始めよう! 10数えたら追いかけるから!」





そう言って葵は数え始めた。 その瞬間、神尾に足は動くようになった。

そして彼は全力でその場から走り始めた。

少しの間を空けて、葵が10!と言う声が聞こえてきた。 神尾はとにかく必死になって走る。

後ろから葵の声が聞こえてくる。





「ははははは! 早い早い!! でも、逃がさない!!」





「来るなっ! 来るなああっ!!」





そう叫びながらも足はけして止めることはない。 しかし・・・。





「お兄ちゃん、バカだね。 最初から私に勝てるわけなんてないのに。」





気付いた時には、自分の腕を葵がつかんでいた。





「捕まえた。」









【あとがき】

これは一体何なんでしょう? 数ヶ月ぶりに書いたのがこんな話だとは。

あまりの文才のなさに涙が出てきそうですよ。

今回の話はアキラメインだったんですが・・・。 ホントよくわかんない話だ。

書いててもう何が何だか。 最後のほうなんかは完全に投げやりです。

次はもっとましなの書こう・・・。



06.1.31



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