信じてなんかいなかった。

どうせ単なる噂。 それくらいの軽い気持ちしか持っていなかったのに・・・。





あと九十四本・・・ビデオ





「皆、この話知ってる?」





最初にそう話をしてきたのは、淳だった。

相変わらずのクスクスとした笑みを浮かべながら、就寝前にくつろいでいた皆の前に来てそう言った。





「何だよ? おもしれー話か?」





それに直ぐに喰らいついてきたのは赤澤だった。

こういう時、彼はノリがいい。





「まあね。 怪談話なんだけど、『怨念のビデオ』っていうのがあるんだ。

 それはビデオ屋の隅にひっそりとあって、店員が何度片付けてもいつの間にかまたそこにある。

 で、それはやっぱりいわくつきで見た人には何か起こるんだってさ。」





淳の話に、そこにいた祐太は顔が若干青ざめていた。

どうもこの手の話は苦手らしい。 赤澤は信じやすいので、ふんふんと真剣に聞いている。

はじめはそういう類のを信じてはいないので、話を聞きつつも目は手元の本に向いている。





「そんなのがあるのか〜。 ってか、それ見たら何が起こるんだよ?」





「さあ?」





「さあ?って・・・。」





「だって俺だって見たことないんだもん。 でも、これ聞いた時すごく気になってさ。

 ・・・これ、なーんだ?」





そう言って、今まで後ろに回していた手を前に出す。

果たしてそこには、1本の黒いビデオ。





「そ、それってまさか・・・。」





祐太の顔が更に青ざめる。

それを面白そうに見ながら、明るい声で淳は言う。





「そっ! これがその噂のビデオ。 気になったから借りてきちゃった。

 さて、今から見よう。」





淳の口からその言葉が紡がれた瞬間、祐太がものすごい勢いで立ち上がった。

そして逃げようとするが、笑顔で淳に腕を掴まれ逃走を阻止されてしまった。





「先輩放してくださいー!!」





「逃がすわけないじゃん。 怖がっている人に見せるのが、面白いんだし。

 さて、早速俺の部屋に行こうか? 観月、君も強制連行だからね。」





「は? 僕もですか?

 生憎僕はそんなもの信じてはいませんよ?」





「いいじゃん。 とにかく来る。 どんなのか楽しみだなー。

 あっ、赤澤。 君もだからね。」





そう言うと淳は、祐太を引きずって自分の部屋へと向かった。 廊下に、祐太の悲痛な叫びが木霊する。

2人の後ろを見ていた赤澤とはじめだったが、ふうと息を吐くと後を追った。





「・・・何で僕まで。」





「仕方ないさ。 諦めろ。 淳があーなったら誰も止めらんねー。」





「分かってますが、それでも納得できませんよ。」





「まあまあ。 とにかく行こうぜ。」





・・・この時はまだ、日常だった・・・。



                                               ☆



「再生っと。」





あれから直ぐに、淳の部屋でそのビデオは再生された。

ザーっという砂嵐がブラウン管に映る。 ちなみに演出の関係で部屋の電気は消してある。

祐太は、はじめの横で今にも泣き出しそうな顔をしていた。





(まったく、何てくだらない。)





そう思いながらも、はじめは画面を見る。

と、急に映像が映し出された。 そこに映っているのは、森。

深い深い森の映像だった。 その森の中を、ひたすらに進んで行く。 人の姿は見えない。

どうやら、カメラを持った人物が自分を映さないように歩いているらしかった。

ただひたすらに、森の中を突き進む。 そこには木以外の何も見えない・・・はずだった。





(!!!)





突如、はじめの顔が強張った。 ありえないと、目を何度か瞬く。

しかし彼の目に映っているモノは、消えない。





「・・・つまんねーなー。」





退屈そうな声を上げたのは赤澤だった。





「確かに。 何にもないじゃない。 何が怨念なのかな?

 あーあ、噂何て信じるんじゃなかった。 レンタル代、無駄になったなあ。」





淳もそうぼやく。 祐太も、何も起こらないことに安堵の表情を浮かべていた。

しかし・・・。





(嘘だ?! 何も無いなんて。

 ・・・まさか、3人には何も見えていないのか?!)





はじめの背中に嫌な汗が流れる。 そう、彼には見えていたのだ。

他の3人には見えない、『何か』が・・・。





「あっ、切れた。」





そうこうしているうちに、突然映像が切れた。 どうやら、これで終わりらしかった。

つまんねー。と言いながら、赤澤が立ち上がって部屋の電気をつけた。

淳も、デッキからビデオを取り出す。





「よかったー。 何にもなくて。 ね、観月さん?」





そう言って祐太がはじめの顔を覗き込む。





「え、ええ。 そうですね。」





いたって平静を装い、はじめは答える。





「はー、これで今日は安心して寝られる。」





そう言って祐太は背伸びをした。

・・・その横では、硬い顔をしたはじめがまだ座っていた・・・。



                                              ☆



「おい、観月。 お前、顔色よくねーぞ。」





あれから数週間が経った。 3人共、あのビデオのことなどもう忘れてしまっているようだった。

今日もいつも通りテニスの練習に励んでいると、突然赤澤にそう言われた。





「・・・そうですか?」





「ああ。 何かいつも白いが、今日は青白いって感じだ。

 具合悪いんならあんま無理すんなよ? お前が倒れると、色々困る。」





「色々ってなんですか?」





「うーん。 まあ色々だ。 気にすんな。 ホントに無理すんなよ。」





そう言って赤澤はコートに戻っていった。

その後ろ姿を見ながら、はじめは溜め息をつく。





(じきに、倒れるじゃすまなくなりますよ・・・。)





心の中でそう呟く。

・・・あのビデオを見たあと、はじめには今まで視えていなかったものが視えるようになってしまっていた。

それは・・・この世の者ではないモノ達・・・。

俗に言う幽霊だ。 しかし、ただ霊が視えるようになっただけならまだいい。

彼には今、それが大量に取り付いてしまっているのだった。





(なんとかしたいんですがね・・・。)





霊が視えるようになってしまって、直ぐにこれには耐えられないと思った。

だからかなり躊躇いはあったが、除霊師を探してみてもらったのだ。 しかしそこで言われたのは絶望的な答えだった。





「申し訳ありませんが、はっきり言いましょう。

 ・・・あなたに取り付いている霊。 それを全て取り除くことは不可能です。」





それを聞いた瞬間、目の前が真っ暗になる感じがした。

除霊師曰く、はじめには強力な呪いがかかってしまっているらしい。 それをなんとかすることは不可能。

彼はこれから先、霊達と共に暮らさなくてはならないのだ。





(・・・あと持って、どのくらいでしょうね?)





そう思う。 視てもらってから、彼に取り付いてくる霊は更に増えていっていた。

そして最近は、体調にまで影響が出てきてしまっている。

そっと周りに目をやると、明らかに霊の性質が変わっていた。

最初は普通の霊ばかりだったのだが、最近はどう見ても怨念を持っているようなのばかり付いて来る。

どうやら、自分の生気を吸い取っているらしい。 だんだんと弱っていっているのが分かる。





「多分このまま、私は死ぬのでしょうね・・・。」





声に出して呟く。 それを嘲笑うかのように、霊達がざわめく。

今も霊達は寄って来ている。 彼に向かって。





『コイツは当たりだったな。

 さあて、骨の髄まで吸い尽くしてやろうじゃないか。』





霊達がまた、嗤った・・・。









【あとがき】

なんじゃこりゃあーーー??!! 何かもうネタが何にも思い浮かばなかったんです、はい。

ビデオっていったらもう、あの有名な髪の長い方のしか出てこなかったんで(汗)

ちなみにこれは完璧、私の妄想の産物でございます。 こんなもの、実際にはありません(多分)

あっ、ちなみに補足ですがあのビデオは霊能者を発見するためのものです。

はじめはあの何も無いはずの森の映像の中で、ものすごい数の霊を見ています。

それが見えると、霊達は反応して寄ってくるわけです。

・・・うん、なんともまあよく分かんない設定です。 はい。

久しぶりの更新がこんなんでホントにすいません(土下座)

次はもっとマシなの書きます。 ・・・いつになるか分かんないけど。(滝汗)

では、次回また。



07.2.20





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