間章 〜 海の支配者 〜





「今回はありがとう。 お陰でこの仕事を片付けることが出来たよ。」





月の光の差し込む部屋中、ソファに座った幸村がそう言う。

彼の前には同じくソファに座り、静かにカップを傾ける橘の姿があった。





「礼には及ばないさ。 長い付き合いの友人の頼みだ。 断るわけがないだろう。

 それに、俺のテリトリーもまた広げることが出来たからな。」





「そういえば、あそこはまだだって言ってたもんね。 そっちはどう?

 順調に治められてる?」





「ああ、大丈夫だ。 海は人間ではなく俺達の領土だからな。

 今、海の中で俺よりも強い力を持つ者は出てきてはいない。 だから平和だ。 それに、俺には強い仲間もいるからな。」





「ああ、あの子達のことね。 確かにいい仲間だよね。

 まあ、仲間っていえば俺も負けてはいないけどね。」





得意そうに言う幸村。 それに、橘は言う。





「確かにいい仲間だな。 彼らのような者と出会えて、お前は本当によかったな。

 ・・・ところで、柳だったか。 あの呪いは何だ? 不死になるほどとは、相当強いのじゃないか。」





「・・・あれは柳の友人だった者から受けた呪いだ。 その人物は、死神だった。

 詳しいことは柳は語ってくれない。 だが、彼の様子を見る限り苦しんではいないみたいだよ。

今は、いつか話してくれるのを待っているんだ。」





「そうか・・・。 だが、本人がいいと言うのなら大丈夫だろうな。

 不死の呪いか・・・。 不老長寿の俺達とは違って、解かない限り永遠に生き続けなければいけないからたちが悪いな。」





「そうだね。 生き続けるってことは、結構辛いことだからね・・・。」





その場に、しばしの静寂が訪れた。 2人は互いに紅茶を静かに飲んだ。

と、その時。 部屋にある巨大な窓に、空を飛ぶ何かの影が映った。

それはかなりの速さで飛んでおり、あっという間に視界から消えた。





「・・・あれは跡部か?」





橘がそう言う。 幸村はたぶんね。と、返す。





「珍しいな。 ここを飛んでいるなんて。 いつもは山から出ないのにな。」





「本当に何かあったのかもね。 でも、本当に非常事態だったら俺達を頼ってきてくれるはずだから。

 それまでは干渉しないほうがいいさ。

 あっ、そういえば橘の所にエスピオーグの誰か来てない? 少し前に今度仕事で行くって言ってたんだけど。」





「本当か? いや、俺は知らないな。」





「そう? じゃあ、君への用事じゃなかったのかもね。」





「そうかもな。 ・・・そういえば、封印はまだ大丈夫か?」





「うん。 今は大丈夫だよ。 でも、彼の力は強いから。 何かきっかけがあれば、簡単に解けちゃうかもね。

 まあ、解ければ俺がすぐに気付くよ。」





「そうだな。 考えたくはないが、封印が解けたらまた戦いになるだろうな。

 あいつの恨みが納まっているなんて考えられないもんな。」





「うん。 もしその時が来たら、今度は・・・。」





幸村が黙る。 それを、橘は静かに見つめていた・・・。



                                         ☆



「兄貴! こんな所にいたのかよ。 長に怒られるぞ。」





波打ち際にある、少し大きな岩に腰掛け海を眺めていた不二の元に祐太がかけてくる。





「ごめんごめん。 ちょっと風に当たりたかったから。」





「まったく。 兄貴は相変わらずだよ。 何年経ってもちっとも変わらない。」





そう言いながらも、祐太は不二の傍に腰を下ろした。

2人で、静かに海を見つめる。 波は静かに押し寄せては引いていっていた。





「・・・そういえば兄貴。 この前の橘さんだけど、あの人ってリバイアサンだよな?」





ふいに祐太がそう尋ねる。





「そうだよ。 僕も初めて見たけど、あの人はこの海を守っている人。

 そして、海に存在する妖の長のような人だよ。 あの人がいるから、海は平和なんだって。」





「へえー。 そんなすごい人だったなんて、驚きだよな。」





「まあね。 ・・・そういえば祐太、四天王の話知ってる?」





「四天王?」





「うん。 前に、長が話してくれたんだ。

 この世界には、途方もなく長い時を生きている4人の妖がいるって。 その人達は昔、妖全てをまとめていたんだってさ。

 それで、その人達は今もどこかで生きているって話だよ。」





「俺は聞いたことがないな。 長も酷いな。 今度、聞いてみるか。」





「そうしなよ。 結構おもしろい話だったからさ。」





その場に、静寂が訪れた。 日が赤く染まりだし、もうすぐ夜が訪れる。

そんな場所にいる2人の耳に聞こえてくるのは、静かな波の音だけだった・・・。









【あとがき】

えー、前の本編では書ききれなかった所を、こうやって間章として書かせていただきました。

うー、こうなるんだったら最初から前後編にするんだった(汗)

とりあえずこれで重要なことは書いたかな。 1話完結といいながら、なんだかんだで話と話が続いていたり。

なんか、無理矢理な話の書き方でホント、すません(汗)



06.11.18



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