操り人形にされたといっても、自分の弟。

あなたはそれでもためらうことなく戦えるのですかね?





Symphony of destiny  第六章・7





室町の振るった剣が不二を狙う。 それを不二が受け止めようとした時、佐伯が間に割って入ってきた。

佐伯の剣が室町のを止めた瞬間に、彼は左手をバッと薙ぎ払う。

その瞬間、風が渦を巻き室町を襲おうとした。 しかし、切り刻んだ感触はない。

なんと、風よりも早く室町はその場を離脱したのだった。





「早い・・・!」





佐伯がそう呻く。 不二もそれに驚いていた。

まさか、風よりも早く移動できる者がいるとは思わなかったからだ。

2人の驚く顔を尻目に、室町は不適に嗤う。





「そんな風ごときじゃあ俺は倒せませんよ。 でも、がっかりです。

 まさかここまで歯ごたえがないなんて。」





室町のその言葉にむっとしたのは佐伯。 彼は、剣を下に下げると言った。





「これくらいで俺の力を判断しないでもらいたいね。

 ・・・周助、彼は俺にやらせて。」





「分かった。 じゃあ任せるけど油断しないでよ。 彼の速さは侮れない。」





「大丈夫。 今の風じゃあ追えなかったけど、目ではちゃんと動きを捉えてたから。

 もうあんなへまはしないよ。」





佐伯がそう言うと、不二はもう1度分かったと言い祐太の近くへと向かった。

互いに向き合う2人。 と、ふいに室町が口を開いた。





「あなたも甘いですね。 まさか、俺の力があんなものだと思ってるんですか?」





そう言いながら、彼は右手に持っていた剣をふいに頭上に掲げた。 それを、いぶかしげな目で見る佐伯。

と、室町がニヤッと笑った。 それを見た瞬間、佐伯の体が宙に舞った。

そして、今まで彼のいた場所に閃光が瞬いた。 光よりも一拍遅れて、その場に轟音が響く。

佐伯はさっきよりも離れた所に着地していた。





「よく避けれましたね。」





嘲りを含んだ感じの声で室町は言う。





「まあね。 あれくらい分かるよ。」





そう平静を装った顔で言う。 しかし、内心は穏やかではなかった。

背中には嫌な汗が流れ、剣を握る手にもじっとりとした汗をかいていた。





(今のは雷か? それにしては何か変だった気がする。

 だけど、それよりも彼のあの速さ・・・。 危険だ。 今ので避けるのが精一杯なのに、彼はまだ余裕って感じだな。

 ・・・しょうがない。 使うか。)





そう自分の中で結論付けると、佐伯は今まで握っていた剣を自分の傍らの土に突き刺した。

その行動に、不審な表情をする室町。





「? 一体何のつもりですか? まさか、降参でもしてくれるんですか?」





「ふっ。 そんなことするわけないじゃない。 君とは戦いにくいから、少し俺が有利になるようにしようと思ってね。

 ・・・風よっ!」





ふいに佐伯が叫んだ。 すると、その声に反応するように風が彼の周りに集まってきた。





「風よ! 我に翼を、空を自由に駆けし翼を与えよ!! ウィールフェザー!!!」





その言霊が響いた瞬間、とてつもなく強い風が吹き荒れた。 あまりの強さのため、室町は身動きがとれない。

そして、彼は見た。 佐伯の周りに風が渦巻いているのを。

と、ふいにピタッと風が止んだ。 佐伯が唱え、風が吹き荒れたのはほんの少しの間。

しかし、その間に彼はとんでもないものをその身に纏っていた。

室町が見たもの。 それは、宙に浮かぶ彼の姿と、その背にはばたく風で出来た巨大な翼だった。





「そんな、まさか・・・。」





「さて、と。 本番はこれからだよ。」





佐伯がそう嗤った・・・。



                                                 ☆



「はあああっ!!!」





不二に向かって、勢いよく剣が振り下ろされる。 そのスピードは速く、狙いは正確だ。

受け止めながら、不二は思う。 この剣筋は、自分が教えたものだ-----と。





「祐太! 目を覚ましてよ!!」





再び呼びかけるも、結果は先ほどと同じ。 とりあえずこのままではらちがあかないと思った不二は、剣に力を込め祐太を振り払った。

それにより出来た、2人の間の空間。

数メートル離れた所で、不二は祐太をじっと見た。





(・・・外見の変化はなし、か。 ということは催眠か何かか?

 だけど、祐太がそんなのにかけられる可能性は低い。 ってことは、一体何が・・・?)





そう思案していると、再び彼が切りかかってきた。 それをかわし、とりあえず彼の動きを止めようと不二は左手を向ける。

しかし。





「!!」





とっさに不二は距離をとった。 それは、彼の持つ剣が何であるか気付いたから。





「まさか、あれは・・・。」





そう、呟く。 彼、祐太の持つ剣の刀身は、普通のものと違っていた。

普通の剣の刀身は白い。 しかし、彼の持つものは少し、黒味を帯びていた。





(僕があげた、剣・・・。)





そう、祐太の持つ剣は以前祐太がこの村を出る時に不二があげたものだったのだ。





-----この黒味を帯びた刀身には、僕の闇の力が宿っている。 これは、祐太を守ってくれるよ。-----





そう言ってあげた剣。 しかしその剣が今、牙を向いていた。





(どうしようか。 あの剣には僕の力がほとんど効かない。

 でも、だからといって祐太に怪我を負わせるわけには・・・。)





不二が考えている間も、祐太は容赦なしに攻撃を仕掛けてきた。

だが、それは剣による攻撃のみ。 祐太には、元々エレメントはなかった。

そのことが、今の不二にとって唯一の救いだった。





(でも、このままじゃ本当にらちがあかない。 どうすれば・・・。)





再び考え込む不二。

だがその時、ふいに強すぎる風がその場を駆け抜けた-----。









【あとがき】

久しぶりの更新です! 今回は不二達の所でした。

こんだけ間があると、何書いたか忘れて困ります(汗) 今回もまず読み返す所から始めましたよ。

さて、まだしばらく戦いは続きます。

文才がなくて表現にかなり苦労してますが、待っていただけるとうれしいです。



06.10.20



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