君のために、僕は何が出来る?

僕はあまりにも・・・無力だ・・・。






Symphony of destiny  第七章・4





一筋の涙が、不二の頬を伝う。

声を上げて泣くようなことはしない。 ただ、静かに涙を流すだけ。

そんな彼のいたたましい姿に、周りにいるほとんどは、声をかけることが出来なかった。 しかし・・・。





「・・・祐太君を救う手はあるよ。」





突然、オジイがそう言った。 その言葉に、不二の目が輝く。





「本当に?!」





「うん。 観月君を覚えているね? 彼は今、シーユという所にいるんだ。 かつての仲間達と一緒に。 そこには、跡部君達もいるよ。

 彼の力をまた借りるんだ。 祐太君が君達を襲ったのは、恐らく闇のせい。 彼の体から、闇の匂いがすごくする。

 といっても、不二君とは違う闇だよ。 彼に染み付いているのは、もっと凶悪な闇。

 それが、祐太君を操っているんだ。 さっきがっくんがした話、あれは本当なんだよ。 でも、少し違うんだけどね。

 実際に主を持っているの、は少し前に亡くなった室町君だけだと思う。 彼は元々アーティシャルだったからね。

 だけど、祐太君達は違う。 通常、契約できるのは1人だけ。 それ以上持つことは出来ないはずなんだ。

 それから考えると、敵はアーティシャルにする際に闇の力の篭ったオーブを使った可能性が高い。

 だけど、自分のエレメント以外は拒絶してしまうからあくまで篭っているだけ。 闇ではないよ。

 だから、オーブから闇を抜けば祐太君は元に戻るってわけ。 そして、それが出来るのは光のエレメントを持つ者だけ。

 それが、観月君だよ。 本当はもう1人いるけど、彼はまだまだだからね。」





「そうか、その手があったか。 不二君、よかったね!」





滝が優しい笑みを浮かべ、不二にそう言う。 それに不二も笑顔で返す。





「じゃあ、祐太君が目覚める前にシーユに行こうか。 誰かに向かえに来てもらうようにするよ。

 剣ちゃん、忍足君ならここを知ってるよね?」





オジイのその言葉に、剣太郎が言う。





「うん、大丈夫。 あの人は魔物の子を連れてるから。

 ここまではたやすく来れるよ。 って言っても、ここに最後に来たのはもう何年も前だけどね。」





剣太郎のその言葉に、岳人と滝が不思議そうな顔をする。





「ねえ、忍足って最近王都のアーティシャルをパートナーにした人のこと?」





「うんそうだよ。 それが何か?」





滝の問いに、剣太郎が答える。 2人は、その答えに驚いたようだった。





「いや、そりゃ驚くって! あいつ、何も知らない普通の奴じゃないのか?!

 なんでそいつがお前等と知り合いなんだよ?!」





岳人のその言葉に剣太郎が答える前に、オジイが口を開いた。





 「それは彼が、この全ての中心にいる重要な人だからだよ。」





「「・・・ええっ?!」」





滝と岳人が叫ぶ。 だが、彼のことを知らない不二達は困惑した表情を浮かべていた。





「そういえば、不二君達には彼らのことを話していなかったね。 でも、すぐに会うことになるから。

 さて、と。 実は皆に話しておかなくちゃいけないことがあるんだ。」





オジイのその言葉に、訝しげな顔をする面々。





「・・・話しておかなくちゃいけないことっていうのは、過去のこと。 全てが始まった時のこと。

 だいたいは皆知っていると思う。 だけど、本当に詳しいことは知らないよね? それを今、全部話すよ。

 それが、話しておかなくちゃいけないこと。」





オジイのその言葉に、橘が口を開く。





「その話っていうのは、そんなに重要なことなのか?」





「うん、重要だよ。 過去の出来事があったから、今の出来事があるんだ。 過去は、全て未来に繋がっている。

 ・・・さて、と。 じゃあゆっくり話そうかね。

 全ての始まりは500年前。 世界がまだ、限りなく平和だった時-----。」





オジイが、ゆっくりと語り出した-----。



                                                   ☆



「ただ今戻りました。」





榊の部屋に、手塚とリョーマが入って来た。 中には、榊の他に真田と赤也もいた。

・・・赤也の目が少し涙目になっているように見えたが、そこはあえて触れないようにした。





「ご苦労。 報告は連絡隊から既に聞いている。 谷の壊滅に成功したようだな。」





「はい。 しかし、室町が・・・。」





「気にするな。 任務には、常に危険が伴う。 彼のことは残念だが、お前が干渉することではない。

 さて、2人共そこに座れ。 今から大切な話をする。」





榊にそう促され、2人は真田達の隣に座る。





「榊様、話とは一体何なのですか?」





「過去のことだ。 私がオーブを集めることを決心した話。 たぶんお前達は伝説として少しは聞いているのかもしれんな。

 しかし、詳細を知っているわけではあるまい。 それを今、話す。」





「何故今、その話を?」





「事態が変わったのだ。 千石と鳳が私達を裏切り、敵に組したために。

 幸村と柳だけでも痛手だったのに、そこにさらに2人。 4人を騙し、私達から奪っていったのは間違いなく魔導士達だ。

 奴らは世界を手に入れるためにオーブを探し求めている。

 しかし探している間に私達に妨害されたら叶わないと思い、強力な力を持つ4人を引き入れたのだ。

 これ以上、奴らに騙されるわけにはいかない。 そのために私は話そうと思ったのだ。」





「そうだったのですか・・・。」





榊のその言葉に、4人は深く聞き入る。 それに内心ほくそえみながら、彼は続ける。





「ゆっくり話していこう。 しっかりと聞け。」





榊が口を開く。 4人は、彼の話に耳を傾けた。





(くくく。 こいつらは私を疑わない。 私の言葉が真実だと思い込むだろう。

 特に真田などは扱いやすいしな。 さて、話してやろうか・・・。)





榊は何を企んでいるのだろうか・・・?」



                                                   ☆



「一体どういうこと?! 500年前の魔導士が君達3人で、時の監視者が跡部君?!

 ありえるわけがないじゃない! そんな長い時を、どんな人間が生きていられるていうのさ?!」





はじめの言葉に、千石が言う。 彼の言うことは最もだった。





「本当です。 ・・・なんなら、私達が普通ではない証拠をお見せいたしましょう。」





はじめはそう言うと、懐から短剣を取り出した。

そしておもむろに自分の右腕を、その短剣でばっさりと切り裂いた。 噴出す血。 しかし・・・。





「まさかっ?! そんなっ?!」





彼らが見たのは、信じられない光景だった。

なんと、深く切り裂かれた彼の腕の傷が、みるみる治っていくのだ。 それには、全員言葉を無くした。





「・・・分かりましたか? 私は普通の人間ではない。

 これなら、私達の話を信じてくれるでしょう?」





「・・・俺はどうなんだよ?」





ふいに跡部が口を開いた。 全員、彼のほうを向く。





「俺にはお前達の記憶なんてねえ。 いきなりそんなこと言ったって信じるわけねーだろが。

 そこんとこはどう説明すんだよ?」





不機嫌全開の声で言う。 それに忍足が。





「それは、今からの俺らの話の中で順番に説明してく。 だから、聞いてくれな。」





「・・・まあいい。 聞いてやるよ。」





ふんっ。と言うと、跡部は椅子に深く座りなおした。

それを見届けると、誰が指示するわけでもなくはじめが口を開いた。





「では、話します。

 ・・・全ての始まりは今から500年前。 世界がまだ、魔物にも何にも恐れていなかった時のことです・・・。」





全てが今、語られる。

今まで闇の中に埋もれていた、記憶が-----。









【あとがき】

かなり無理矢理だあっ!!! 書いていてそう痛切に感じました。

次から全場面で過去の語りに入らせるために、無謀なことしまくりです。 でも、まいっか(よくない!)

さて、次からやっとこの話の核心に入ります。 ここまで長かった・・・。

頑張って書くぞー!!



06.11.25



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