・・・一体どこに行ったんだ?

まさか・・・。 いや、止めておこう。 俺の勘は変な所で当たるから・・・。





Symphony of destiny  第七章・3





カツンカツン





静かで広い廊下に、1つの靴音が響く。

歩いているのは、真田。 彼は今、とある場所に向かって歩を進めていた。

向かうは、限られた者しか近寄ることすら許されない完全封鎖区域。 その最奥にある、エレメントオーブ保管室。





「俺だ。 真田だ。」





歩くこと数分。 真田は、廊下の突き当たりにある巨大な門の前でそう言った。

すると、ギギギと音を立てて、扉がゆっくりと開いていった。

扉が開くと、彼は再び歩き始めた。 そこは、1つの巨大な部屋だった。

一面染み1つない白い壁。 直径50メートルはあろうかという広い正方形の部屋。 そこは、窓があるわけではなかったがとても明るい光が満ちていた。

そう、それは闇を全て祓うかのように、部屋に満ちていた。

部屋の床には、黒い線がびっちりと書かれていた。 それはよく見ると、何かの文様のようだった。

そしてその文様の中心。 そこに、1人の男が立っていた。

褐色の肌をした、男。 彼は、文様の中ただ1人で立っていた。 彼の名前は、ジャッカル桑原。 オーブの守人の1人・・・。





「・・・珍しいな。 お前がここに来るなんて。 赤也はどうした?」





真田を振り返り、ジャッカルが口を開く。





「あいつは今、俺の家で休ませている。 さっき少し暴走してな。

 まだ不安定な所が多くて、手を妬いてるよ。」





「相変わらず苦労してるみたいだな。

 ・・・さて、と。 お前がここに来たってことは、オーブを手に入れたんだろ?」





「ああ。 さすがだな。」





「そんなことないさ。 ここにずっといるから、オーブの気配を知っているだけだ。

 で、どの属性だ?」





「炎だ。 レイダーツにあった。 保管しておいてくれ。」





そう言いながら、真田は懐から火のオーブを取り出しジャッカルに渡した。

人の拳大の大きさの火のオーブ。 それは火というだけあって、赤く、燃えているような色をしていた。

それを受け取るジャッカル。





「分かった。 ちゃんと保管しとく。」





「頼んだぞ。 さて、俺はそろそろ戻る。 榊様の所にまた行かなければいけないからな。」





そう言うと、真田はジャッカルに背を向けた。





「おい!」





と、ふいに真田に声をかけるジャッカル。





「? どうした?」





「あっ・・・いや、何でもねえ。 呼び止めて悪かったな。」





ジャッカルのその行動に、少々疑問を持つ真田だったが、彼はそのまま部屋を出て行った。

・・・誰もいなくなった部屋の中、ジャッカルは1人文様の中心にたたずんでいた。





「・・・一体どこに行っちまったんだ? あの日から、ずっと戻ってきてねえ。

 何かあったんじゃないといいが・・・。 ・・・無事でいてくれよ・・・ブン太・・・。」





真っ白な部屋の中で、ジャッカルはそう呟く。

・・・そして、彼はふいに唱えた。 迷いを振り払うかのように。





『全てを隠し、守る我が堅固なる壁よ。 その姿を、今示せ。』





ジャッカルがそう唱えると、床一面に刻まれていた文様が光りだした。 それは、巨大な魔法陣だったのだ。

魔法陣が光りだすと、部屋の中の空気が変わった。 とても、とても純粋な空気。 あまりにも透明すぎる空気。

ふいに、魔法陣の光が弱まった。 それと同時に、ジャッカルの丁度真上に、2つの強い光が現れた。

それは、王都が手に入れジャッカルが守っていた、土と無のオーブだった。 ジャッカルは、火のオーブを取り出す。

ふわっと、それは彼の手に触れることなく宙に浮く。 そのオーブを、上に押しやるように右手を下から上げる。

すると、オーブは上へとゆっくり上昇していき、他のオーブと同じ高さにまで上がって止まった。





『レイズ。』





呟くように、ジャッカルは言う。 その途端、3つのオーブは掻き消すようにその場から消えた。

オーブが消えると、空気も元に戻った。 その中で、ジャッカルは呟く。





「・・・俺はここから出られない。 あいつを、ブン太を探してやることも・・・。

 くそっ! ここに束縛などされてなければっ! なければ・・・自由でいられたのに・・・」





その場にうずくまり、床を拳で叩き続ける。 彼の目からは涙が溢れ、嗚咽が部屋に響き渡った。

白い、白い部屋。 そこに満ちるのは、澄み切った空気と悲痛な泣き声だった・・・。



                                                   ☆



「んっ・・・。」





軽く声をあげ、ゴロンと寝返りを打つ。 ふかふかな布団に枕。 1番安心できる場所。





「あー、あったけえ・・・。 ・・・あれ?」





布団に包まったまま、赤也の動きが止まる。 少しの間、考える頭。

そして、浮かんだ1つの考え。





「・・・何で俺寝てるのーーー??!!」





そう叫びながら、布団を跳ね除ける。 キョロキョロと辺りを見回すと、そこは確かに自分の部屋。

しかし、自分で戻ってきた記憶はない。 最後の記憶は、レイダーツで雷を落とした所で途切れていた。





「何でー?!」





わたわたしながらも布団から起き、部屋から出る。

大慌てで向かったのは、日当たりのいい書斎。 そこは、彼の主である真田の部屋だった。

彼は、任務のない日はいつもそこで本を読みながらくつろいでいるのだった。





バンッ!





豪快な音を立てて、扉を開ける。 果たしてその先には、ゆったりとした椅子に座る真田がいた。





「赤也、扉をそんな乱暴に開けるなといつも言っているだろう?!」





「すっ、すいませんっす! ・・・ってそんなことじゃなくて、マスター!

 何で俺、ここにいるんすか?」





「そんなの、俺が連れてきたからに決まっているだろう。」





「いや、そうじゃなくて! レイダーツはどうなったんすか?!」





赤也のその問いに答える前に、真田はとりあえず落ち着いて座れ。と言って、赤也を座らせた。

そして、口を開く。





「とりあえず火のオーブは無事入手した。 もうすでにジャッカルに渡してきた。

 今回の任務は成功だ。 だが、しかし赤也! お前はまったくもってたるみすぎだ!!」





説明などほんの少しで、真田は説教に取り掛かった。

ガミガミ言う彼に小さくなりながら、赤也は心の底から思う。





(これさえなかったら、マスターいい人なのに・・・。)





「聞いているのかっ?!」





「はいっ! 聞いてますっ!」





真田の説教は、このあともまだ続いたという・・・。









【あとがき】

こんなのんびりしたシーンを書くのはホント久しぶりです。

この2人はのほほんとした感じがどこか抜けないんですよね。 特に赤也。 かわいいなあ〜。

なんか、初めてしゃべったのにジャッカルがかわいそうなことになってる(汗)

予定だとこうなるはずじゃなかったんだけどなあ・・・。



06.11.24



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