真実は、全て過去の中に埋もれています。

全てを今、話しましょう。 この目で今まで見てきたものを・・・。






Symphony of destiny  第七章・2





「3人目の・・・魔導士・・・?」





はじめのその言葉に、呆然とする面々。

彼らの態度に違和感を感じたのか、はじめは問う。





「? 何か疑問でも?」





それに、千石が言う。





「いや、だって俺達は2人しか知らないんだもん。 忍足君と君。

 もう1人って誰なの?」





千石のその言葉に、はじめは深く溜め息をついた。





「・・・何であなただけ言ってないんですか? 柳生君。」





「「えっ?!」」





皆は驚く。 それもそうだろう。

以外にも、魔導士はすぐ傍にいたのだから。





「・・・そういえば言っていませんでしたね。 君達には考古学者と言っていたんでしたっけ。 忘れていました。

 私も魔導士です。 忍足君とも、観月君ともずっと昔からの仲間ですよ。 ・・・あと、『彼』も・・・。」





柳生のその言葉に、何かひっかかるものを感じたのか長太郎が尋ねる。





「あの、『彼』って一体誰なんですか? まだ他にも魔導士の方達がいるんですか?」





「いや、魔導士は俺等だけや。」





「じゃあ、誰のことですか?」





長太郎のその言葉には答えずに、忍足は千石と跡部に問いかける。





「千石、跡部。 自分らは風の谷でオジイに話を聞いてこんかったか?」





「聞いてきたが、何でお前がそのことを知ってるんだ? お前はあそこにいなかっただろ。」





「聞いたんよ。 オジイに。 俺等とオジイは似たような存在やから、伝えたいと思えば簡単に意思を伝えることが出来るんや。

 まあ、オジイのほうがよっぽど正体不明やけどな。 で、言ってたんや。 自分ら2人に過去のことをおおまかに話したってな。」





「? そのことと何の関係があるんだよ?」





「関係大有りですよ。」





忍足が言うよりも早く言ったのは、はじめ。

彼は周りをぐるりと見回し、1度深く息を吐いてから言った。





「過去の話で出てきた3人の魔導士。 それは、僕達3人のことです。

 そして、『彼』こそ時の監視者と呼ばれていた者。 それは・・・跡部君、君のことです。」





「なっ・・・?!」





その場の空気が、止まった気がした・・・。



                                               ☆



「ただ今戻りました。」





そう言って部屋の中に入ってきたのは真田。 この場に赤也はいなく、彼1人だった。

そんな彼を、部屋の主である榊は椅子に座ったまま迎える。 いつものように見えるその表情だが、今はどこか機嫌がよさそうだった。





「ご苦労。 さて、早速だが無事オーブを入手することが出来たようだな。」





「はい。 途中赤也が暴走しましたが、入手しました。

 このあと番人の元に持っていきます。」





「分かった。 頼むぞ。

 ・・・ところで真田、お前達は何者かに妨害されたのではないか?」





「よくご存知で。 はい、魔導士に妨害されました。」





真田のその言葉に、榊はやはりなと1人呟いた。





「そうか。 ・・・真田、お前に話しておかなくてはいけないことがある。 赤也にもな。

 赤也が目覚めたら、共にここに来い。 その時には手塚達も戻っていることだろう。」





「はっ、分かりました。 では、今はここで失礼いたします。」





そう言って真田は部屋を後にした。

誰もいなくなったはずの部屋。 しかし、スウッと1つの気配が現れた。





「判田か。 そっちの調整はどうだ?」





現れたのは、にまにまとした笑みを浮かべた老人、判田。

彼は榊の近くにあったソファによっこいしょと座ると、口を開いた。





「今の所順調です。 1番厄介だった子も、今は完全におとなしくなっています。

 もう少し時間をかければ完璧ですよ。 とりあえず今すぐにでもあそこから出せるのは・・・4人ですかね。 それだけいれば十分でしょう。

 ・・・ところで、手塚君の様子は?」





「今は少々不安定だ。 やはり、危険だったのかもな。 しかし、あいつの力は強力だ。

 無理矢理にでも押さえ込んで、これからも使う。 あいつの力なくば、私の願望は達成できん。」





「そうですか。 もし必要になったのなら、私はいつでも彼に処置を施しますよ。

 ・・・まあ、簡単にはやらせてはもらえないでしょうがね。」





「まあな。 だが、その心配は無用だ。 そこまで不安定ではないからな。」





榊のその言葉に、ならよかった。と返す。





「・・・さて、と。 私はそろそろ戻りますよ。」





そう言って、判田は腰を上げる。





「ああ。 ・・・もうそろそろ、あちらも動くだろう。 準備を頼む。」





「分かってますよ。 ふふふ。

 私達の望みが叶うのも、時間の問題ですね。」





心底楽しそうに笑いながら、判田は部屋を後にした。

椅子に座ったまま、榊はニヤリと笑う。





「優越に浸っているのも、時間の問題だよ。 判田・・・。」





黒い思考が、渦巻く・・・。



                                                ☆



「皆、無事でよかった・・・。」





簡素な椅子に座ったオジイが、そう言って周りを見回した。

そこは、さきほどオジイがいた崖の下にある、1件の家の中だった。 そこには、情報屋の面々と橘達シルフィードの面々がいた。

そして当然、語りの民も。 しかし、他にも何人かいた。

1人は坊主頭の男。 そして、一見感情のないように見える巨躯の男と、穏やかな顔をした男もいた。





「まず、彼らの紹介をしておかなくちゃね。 橘君とアキラ君は、知っていても会ったことはないはずだから。

 そこの坊主の子が葵剣太郎君。 で、樺地崇弘君と河村隆君だよ。」





オジイがそう紹介すると、3人は軽く会釈をした。

それに、橘と先ほど目覚めた神尾も返す。 簡単な挨拶だったが、今はそれで終わらせた。





「・・・岳人、ここまで来たんだ。 さっき言ってたことをそろそろ話してくれてもいいんじゃない?

 祐太は・・・祐太は一体どうなってしまっているの?」





不二が辛そうな声でそう問う。 それに岳人は一旦軽く息を吐き出し、ゆっくりと言った。





「・・・俺はアーティシャルじゃないから、本当かどうかは分からねえ。 合ってるかどうかは佐伯に聞いたほうがいい。

 ・・・辛い話になる。 お前にも、祐太にも。 ・・・それでも聞きたいか?」





念を押すように尋ねる岳人。 それに、不二は頷いた。





「覚悟は出来てる。 祐太が僕に襲いかかってきた時に、決めたから・・・。」





「そうか・・・。 なら、話してやる。

 ・・・俺が王都に侵入して入手した情報は2つ。 まず、討伐隊の連中が全員榊達首謀者の操り人形にされているらしいってこと。

 人間よりも忠実にするためには、人間でなくせばいい。

 そして、もう1つはそれが出来る人間が王都に存在するってこと。」





「・・・それって・・・まさか・・・。」





「そう、人間よりも忠実なのはアーティシャル。 契約さえ結べば、そいつは主の思いのままだ。

 操り人形ってのは、アーティシャルのこと。 これから考えると、討伐隊の連中は全員アーティシャルにされた可能性が高い。」





岳人の説明に、困惑の色が漂う。 それもそうだろう。 人間をアーティシャルにするなど、ありえないことなのだから。

しかし、その中で不二と佐伯は複雑な顔をしていた。





「でも、それって不可能ですよね?! 俺達アーティシャルは、人工的に作られた体に人工のオーブを心臓として入れることで生きています。

 それが出来るのは、すべてが人工だからです。

 でも、人の体はあまりにも複雑で拒否反応も起こるから、アーティシャルにするなんて無理だと聞きました。

 そのことから考えると、討伐隊の人達がアーティシャルにされたなんて信じられません!」





「・・・それが、そうでもないんだよ。」





アキラがそう怒鳴るように言うと、ポツリと佐伯が言った。

彼のその言葉に驚くアキラ達。 しかしその中で、オジイはさっきと変わらぬ顔をしていた。





「・・・どういうこと・・・ですか・・・?」





戸惑いながら、アキラが言う。 それに、佐伯が返す。





「・・・そういえば、このことはアキラ君達は知らなかったんだね。

 ・・・俺は今でこそアーティシャルだけど、本当は昔、人間だったんだよ。」





「「んなっ?!」」





佐伯の突然の告白に、驚くアキラ達。





「本当だよ。 俺は6年前、君達がシルフィードに来るほんの少し前までは人間だったんだ。

 ・・・俺と周助は、幼馴染でね。 昔からずっと一緒にいた。 あの日も、俺達は一緒にいた。

 でもあの日、俺は死んだ。 周助を庇ってね。 意識が消えていく中で、俺は周助の声をずっと聞いていたよ。」





「・・・どうやってアーティシャルに?」





「特殊な力を持つ人が来たんだ。 人間をアーティシャルとして生き返らせる力を持った人が。

 その人が、虎次郎を生き返らせてくれた。」





不二が、昔を思い出すような口調で言う。





「そう。 だから討伐隊の人達がアーティシャルにされたっていうのは、ありえないことじゃないんだ。

 王都には分からない部分が多い。 その力を持つ人がいたっておかしくないんだ。」





佐伯がそう言うと、今度は岳人が口を開いた。 そして、不二に向かって言う。





「不二、祐太に何があったかこれで分かったか?」





「うん、分かったよ。 祐太も討伐隊のメンバーだった。

 ・・・祐太は、王都の誰かに殺されてアーティシャルにされてしまったんだね・・・。」





悲しそうに、本当に悲しそうに言う不二。 頬には、1滴の雫が伝う。

その目線の先には、未だ目を覚まさない弟の姿が映っていた・・・。









【あとがき】

あー、榊と判田はやっぱり書きにくいです(汗) キャラが難しい。

そういえばリシーヌのことについてまだ全然触れていなかったっけ。 それについては、これからの語りの中で書いていきます。

・・・ぶっちゃけた話、リシーヌってかなりの思いつきで出来たんですよね。 だから、キャラが足りなくて困りました(汗)

そして、遂にサエさんと不二の過去がちょっと明らかに。 サエさんがアーティシャルなのには、実はこんな理由があったんです。

このことについては本編で書くことはきっとないので、番外にでも書こうかなと思ってます。

そして祐太! これは前から決めていたことなんですが、やっぱり書いていて悲しかったです。 ごめんね祐太ー!!



06.11.19



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