DARK SHOP
   前編





「ごくろう。 今日の依頼も完璧にこなしたね。

 明日はオフにしておくから、ゆっくり休んでていいよ。」





そう言うと、部屋にいた男はああと言って去って行った。

部屋に取り残された男は、月明かりの入ってくる大窓から外を見て呟く。





「・・・これから忙しくなるかもな・・・。」





その呟きは誰にも聞こえることなく、夜の中に消えていった・・・。



                                        ☆



灰色の大都市『レイニックシティ』。 世界のほぼ中央に位置する。その名の通りの大都市。

『灰色』と呼ばれているのは、その景観のためだ。 都市には巨大な建物がいくつもそびえたち、どこか暗い影を落としている。





この都市には、主に人間が暮らしていた。 だが、当然妖(あやかし)もいる。

彼らはこの都市では表に出ることを嫌い、闇の中に生きていた。 巨大な所にはおのずと闇が濃くなるから・・・。





・・・このシティのとある裏路地のさらに奥に、1件の店がああった。 こじんまりとしているが、品のありそうな店。

そこには様々な者が出入りしていた。

裏の世界でなを知らぬ者はないといわれるその店。 仕切っているのは若きオーナー。

その店の名は『ノクターン』。 闇の仕事のみを請け負う、『何でも屋』-----。



                                         ☆



カランカラン





店の中にベルの音が鳴り響く。 それは、誰かお客が来た合図。

入ってきたのは若い男。 スーツをしっかりと着込んでいて、手には少し大きなアタッシュケースが握られていた。

その顔は青白く、何かに怯えているようだった。

男は、店の中に入るとまっすぐ奥にあるカウンターに向かった。





「いらっしゃいませ。」





その男に向かって、カウンターの中にいた男が声をかける。

茶髪で眼鏡をかけたその男は、穏やかな表情をしていた。





「ご用件は何でしょうか?」





茶髪の男が尋ねる。 すると、若い男も口を開いた。





「依頼したいのは・・・ある人物の暗殺だ。」





それを聞くと、茶髪の男は頷いた。





「分かりました。 その依頼、お受けいたしましょう。」





男の目が鋭く光った-----。



                                            ☆



「久しぶりだな。 実務に出るのは。」





どこかの建物の屋上で、1人の男がそう言う。

その手には、黒光りするライフルが握られていた。





「確かに久しぶりだ。 こうして、俺とお前が組むのもな。」





「そうだな。 お前は単独での仕事のほうが多いからな。」





そう話す2人の人物。 と、片方の男が腕時計を見た。





「・・・そろそろ時間だ。 始めるぞ、弦一郎。」





「ああ、分かった。 蓮二。」





2人の姿が、闇の中に溶け込むように消えた-----。



                                            ☆



「疲れたあ〜。」





そう言って、銀髪の男がソファに倒れこむ。





「おい、それぐらいでへばるなよ〜。 お前と俺とじゃ体力差すごいだろうが。」





「お前が動かないのが悪いんじゃ!」





「なんだとー!!」





「はいはい。 仁王君に丸井君。 ケンカはそのぐらいにしてください」





そう言いながら眼鏡をかけた男が銀のお盆の上にティーカップをいくつか乗せて、奥から現れた。





「どうぞ。 少し甘くしてありますから疲れにいいですよ。」





そう言ってティーカップを差し出した。





「そういやあ柳生、お前最近ずっとここにいるな。」





「ええ。 最近はずっと幸村君の手伝いをしているものですから。

 それに、今は依頼も少ないですからね。」





「そっかあ。 でも柳生は休みでいいなー。 俺も休み欲しいぜ。」





「あー、お前体力ねーもんな。」





「うるせー。 俺は普通の人間なんだよ。 お前と一緒にするな!」





そう仁王と丸井が言い合っていると。





「もう少し静かにできないのか? 声が外まで聞こえてきていたぞ。」





そう言いながら、柳と真田が部屋の中に入ってきた。

その2人に仁王達がおつかれーと言い、柳生は2人分のお茶を淹れるために奥へと行った。





「そういやあ真田、お前今回の仕事ってけっこう名の知れた奴の暗殺じゃなかったんか?」





「何でだ?」





「いや、お前さんから血の臭いがプンプンするんじゃよ。

 いつmpはそんな奴の血吸ってこないじゃろ?」





「相変わらず鼻がいいな。」





「当たり前じゃ。 俺が悪くちゃいかんぜよ。」





そう言って仁王はニカっと笑った。と、その時や牛が奥から新しくカップを2つ持って戻ってきた。

そしてそれを2人に渡した時、部屋の1番奥にある扉が開いた。





「皆、今日も仕事お疲れ様。」





そう言いながら現れたのは、線の細い男。

しかし、彼がこの店のオーナー、幸村精一なのだった。





「今日の依頼達成率も100パーセント。 いつも通りいいね。

 ・・・さて、早速だけど次の仕事だよ。」





「ほう、今回はくるのが早いな。」





「まあね。 さて、次には真田、仁王、柳生、そして今はいないけど赤也にやってもらう。

 内容は、麻薬組織の壊滅だ。」





そう言うと、幸村はニヤリと笑った。





「久しぶりですね。 組織の壊滅なんて。

 ・・・相手は妖ですか?」





そう尋ねる柳生。 それに幸村は頷いた。





「ああ。 クライアントの情報だと主要なのは5人。 下っ端はざっと30人くらい。

 下っ端も全員妖だけど、所詮雑魚だから。 でも、中心のは違う。

 5人のうち3人はオーガであとの2人がバンシーだよ。」





幸村がそう言うと、仁王がゲッと言った。





「俺、バンシー嫌いじゃ。 あの声はいかん。」





「そんなこと言ってもしっかりやってもらうからね。 行動開始時刻は明日夜11時。 場所は北地区の古倉庫。

 その時間に始まる取引を狙う。 今回も成功させてきてね。」





そう言って幸村は部屋を出ていった。

夜は更けていく・・・。









【あとがき】

えっと、まずは軽くお詫びから。 すいません!

1話完結とか言っておきながら、いきなり前後編になってしまいました(汗)

まさかこんなに長くなるなんて予想していなかったものですから・・・。

さて! 話を切り替えて、この話どうでしたでしょうか?

前からこんなのを書いてみたかったんで、結構楽しく書いてました。

とりあえず全員の詳しいことはまた後々書いていく予定なので、ぜひとも見てやってください!

・・・とにかくまずは早く後編書きます(汗)



06.7.12



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