DARK SHOP   後編





・・・次の日、夜10時30分すぎ。

暗闇の中を移動する4つの影があった。 そのうちの2つは、漆黒の翼で空を飛んでいた。





「赤也、あまり暴れするぎるんじゃないぞ。」





空を飛びながら、真田がそう言う。 それに赤也は笑顔で答える。





「大丈夫ですって!」





なんか、どうも心配だと真田は思った・・・。



                                              ☆



「・・・クライアントの情報通りじゃ。 きっちり全員いるぜよ。

おっと、そろそろ始めるようじゃ。」





倉庫についた4人は物陰に潜み、中の様子を伺っていた。

仁王はその中で1人目を閉じ、耳を澄ませて中の人数や会話を他の3人に伝えた。





「では、タイミングを見計らって侵入しましょう。」





柳生がそう言うと、他の3人はああと頷いた。



                                               ☆



「・・・気配はなし。 大丈夫だ。 予定通り始めよう。」





1人の男がそう言う。

周囲には何人もの男達が取り囲み、その中心にはラフな服装に身を包んだ5人の男女と黒いスーツを着た3人の男。

それぞれの手にはアタッシュケースが握られていた。





「約束の品はこれよ。」





1人の女がそう言ってケースを開ける。 そこには大量の麻薬がぎっしりと詰まっていた。





「確かに。 これも約束の金だ。」





そう言ってスーツの男もケースを開けた。 そこには、男の言った通り金がぎっしりと詰まっていた。





「いいわね。 じゃあそこに置いて下がって。」





スーツの男は女にそう言わた通り、ケースを奥と数メートル下がった。

それを確認すると、今度は女が近寄っていってケースを取替えようとしたその時!





ヒュッ





突然何かの影が横切った。 それが何だったのかを考える前に、ドサッという音がした。

その音のした方を見るとそこには・・・。





「なっ?!」





そこには、首を掻き切られて絶命している3人のスーツの男達の骸が転がっていた。

それに何が起こったのか分からずにいると・・・。





「手ごたえなさすぎじゃ。」





いきなり声がした。 とっさに声のした方を向く。 そこには何やらガラクタの山。 その上には、1人の男。

暗くて顔が見えなくなっていたが、ふいに空を覆っていた雲が切れ、建物の隙間から月の光が入ってきた。

それによってその姿が晒される。 そこにいた全員が息を呑んだ。





「きっ、貴様は?!」





女が叫ぶ。 そこにいたのは仁王だった。 しかし、さっきとは違う。 彼の両手には、恐ろしいほど鋭くて巨大な爪が生えていた。

その左手には、先ほど男を殺した時についたのであろう。 血がべっとりとついていた。

だが、違うのは爪だけではない。 今の彼には・・・銀に輝く毛に覆われた2つの耳と長い尾があった。





「ワーウルフだ・・・。」





その姿を見て、下っ端であろう男が呟く。 男の顔は恐怖で染まり、体は小刻みに震えていた。

周りの者にも動揺が走った。 そしてそれが大きくなろうとしたその時!





「黙りやがれ!!」





突然、今まで黙っていた中心にいる男の1人が怒鳴った。 それにざわめきが一瞬で収まった。

男はずいと仁王の前に進み出る。





「ワーウルフ。 知ってるぜ。 お前、あの店の奴だな。 まさか嗅ぎつけられるとは思ってもいなかったぜ。

 だがな、お前1人じゃ俺達を全滅させるなんて不可能だぜ。」





やけに自身やっぷりに言う。 それを冷めた目で見ながら、仁王は口を開いた。





「ふん。 やけに自身があるのお。 まあいい。 ひとつ教えといちゃる。

 俺らのオーナーはこういう仕事には1人で行かしちゃくれんよ。」





「「!!」」





仁王がそう言った瞬間、その場に新たに3つの気配が。 それは、いつの間にか中に入り込んでいた真田達だった。





「てめえら、いつの間に・・・。」





「へへ。 あんたらみたいな奴にゃあバレねーよ。」





赤也がそう言う。 と、真田が。





「さて、早く終わらせるぞ。」





「「「了解!!」」」





その言葉を合図に、4人は一斉に動いた-----。



                                               ☆



「・・・これで3人目っと。」





どしゃっという音をたてて、1人の男が道に崩れ落ちる。 どうやらもう生きてはいないようだ。 その傍らに、男が立っている。

男は漆黒の服とマントで身を包んでいた。 顔は影になっていてよく見えない。 彼のてには、リストのようなものがあった。

そこには何か書いてあり、いくつかには斜線が引かれている。





「今日はあと・・・3人か。 早く終わらせよう。」





そう1人呟き、マントをばっと翻す。 そのまま彼は闇に消えた・・・。



                                               ☆



「がはあっ!」





そう声をあげ、また1人倒れていく。 建物の中は今、混戦状態だった。 真田達はその場にいた者を次々に仕留めていっていた。

しかし、中心の5人はまだだ。 と、少しの隙を見つけ、赤也が男の1人に迫る。 だが。





「うおおおお!!」





突然、ものすごい力で殴られそうになる。 それをかわし、少し距離を取る。 男の姿は、今や人間とは違っていた。

体中の筋肉は盛り上がり、体全体が大きくなっていた。 そしt皮膚は固くなっていた。





「やっぱし幸村さんの言ってた通りだよ。」





そう呟きながらも赤也はよける。 男の正体は、幸村の言ってた通りオーガだった。 と、赤也の傍に柳生が近寄ってきた。





「あとはあの5人だけですね。 切原君、もう少し真剣にやりたまえ。」





「はーい、分かりましたあ。」





そう言って、赤也は敵を見据える。 そこにはもう、先ほどまでいた人間はいなかった。 いたのは、3人のオーガと2人の女。

女のの肌は透けるように白く、髪は淡い緑色。 一見はかなさそうに見えるが、決してそうではない。 この女はバンシーと呼ばれる妖なのだ。





「ふん。 やっと本性を現したか。」





真田がそう言う。





「ここで全滅なんてさせられてたまるか! 貴様ら全員殺してやる!!」





女がそう怒鳴った瞬間、3人のオーガが一斉に動いた。 3人はまとまって突っ込んでくる。 それに仁王と柳生が動く。

仁王の爪と、柳生の持つナイフが鋭く光り、2人の姿が消えたと思ったその時には。





「ぐあっ!」





「がああ!!」





一瞬にして2人のオーガが首を掻き切られ、絶命していた。

そのあまりの速さに、最後のオーガは動けずに柳生に殺されようとしていた。 だが、その時!





『キイヤアアアア!!』





突然、ものすごい音が響き渡った。 それに思わず耳を塞ぐ2人。

動きの素早いバンシー達と戦っていた真田達も耳を塞ぐ。 この音を発したのは、片方のバンシーだった。





「くくく。 さすがに貴様らもこの声には弱いようだな。 さすがに殺すのは無理なようだが。

 そいつのようにもろければ楽なものを。」





バンシーがそう言うと、立っていたオーががゆっくりと倒れていった。





「貴様ら、自分の仲間を・・・。」





「仲間? くっははは! そいつらなど、所詮は単なる使い捨ての駒だ。 必要なくなれば切り捨てるだけのな。

 さあて、次は貴様らだ! 我らの声が響いている間は動けまい!!」





そう言った瞬間、またも強烈な音が響き渡る。 それに、またもや耳を塞ぐ4人。

4人が攻撃できないのに2人のバンシーはにやりと笑い、攻撃を仕掛けてくる。 それを、とにかく避ける4人。

と、誰よりもダメージを受けていた仁王がバランスを崩した。





「もらった!!」





バンシーの攻撃が彼に迫る。 やられる!と思ったその時、何かがヒュッと空を切る音がした。





「「!!!」」





突然のことに、全員の動きが止まった。 それもそうだ。 仁王に攻撃したはずのバンシーがその身を裂かれ、倒れていったのだから。

そしてそこには、身の丈ほどもある大鎌を持った漆黒の男が立っていた。





「んもう、皆して油断しすぎだよ。 俺が来なかったらどうするつもりだったのさ?」





「まさかこうなるとは思ってもいなくてな。 助かったよ。 佐伯。」





真田がそう言うと、佐伯と呼ばれた男はいえいえと返した。 そして彼は、最後に残ったバンシーの方を向く。 それに、ヒッと小さく悲鳴を上げる。





「きっ、貴様が死神か?! なぜ、我を狙う?!」





「知ってるでしょ? 死神のリストに載ったら最後だって。 ・・・悪いけど、死んでもらうよ。」





佐伯の大鎌が光った-----。



                                                ☆



「で、結局あの人は誰なんですか?」





仕事が終わり、リビングで休みながら赤也がそう聞く。





「彼の名前は佐伯虎次郎。 この都市に住む本当の死神です。 彼の仕事はリストの人物の抹殺。

 狙われた者に待つのは死のみです。 彼とは時々会うから顔見知りなんですよ。」





柳生のその説明に、ふーんと言う赤也。 と、その時幸村が部屋に入ってきた。





「皆、今日もお疲れ様。 話は聞いたよ。 ホント、佐伯が来なかったら危なかったね。

 あ、そうだ。 もう関係はないけど、今回のクライアントも彼リストに載ってたんだって。

 さっき佐伯がもう殺したって言ってたよ。 じゃあ、次の仕事まで休んでくれていいからね。」





そう言って幸村は部屋を出て行った。 赤也が1人呟いた。





「死神って・・・すごいんすね。」





街のどこかの、暗闇に覆われた場所で、死神がくしゅんとくしゃみをした-----。









【あとがき】

なんとか、後編で終わらせました。 この話。 ・・・大変だった。

もう少しで中編も出来てしまう所だったんです(汗)

さて、ほんの少しでしたがサエさんが出てきました♪ ・・・ホントはもっと出したかったんですけど、ね。

実は彼にはバンシーの声は効かないんです。 まあ、一応『死神』ですからね。

今の所しばらくは出てくる予定はないんですが、出来ればまた出してあげたいと考えています。



06.7.21



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