怨嗟の炎  前編





「!! いけない! ここのままだと持たない!

 早くあいつに連絡を! ここは俺がなんとか食い止めるから!!」





「分かった! すぐに戻るから! それまで、絶対に死なないでよっ!!」





暗い、暗いこの場所。 他の生き物の気配はなし。

しかし禍々しい気配が、その場には満ちていた・・・。



                                           ☆



「幸村!!」





ある日のこと、1人の男がいきなり店に駆け込んできた。

獣の耳を生やし綺麗な茶の尾を持ったその男は、荒い息をつきながらも繰り返し幸村の名を呼ぶ。

その声に、他のメンバーは何事かと自身の部屋を出てくる。 そして様子を見ていると、幸村がその男を手招きした。

言われるがままに、彼の部屋に入る男。

そして、数分後。 男と共に部屋を出てきた幸村の形相は、今まで見たこともないほど歪んだものだった。





「ここで待っていてくれ。 この場所なら安全だ。 何かあったら皆が守ってくれるから。」





「分かった・・・。 幸村、亮を絶対に死なせないで・・・。」





「分かってる。 必ず連れて戻って来るから。」





そう言葉を交わすと、幸村は事情が分からないといった他のメンバーに、彼に詳しいことは聞いてくれというとすぐに店を出て行った。

彼が店を出て行くと、メンバーはすぐに男の周りにやってきた。

そして、皆を代表して柳が最初に口を開いて名前と事情を説明してくれと言った。





「・・・木更津淳。 かまいたちだよ。

 ・・・幸村が向かったのは、『ディグレスト』っていう森。 そこにある祠。

 そこに幸村は今から約100年前にとある人物を封印したんだ。」





「一体、誰を・・・?」





「封印した人物の名は『手塚国光』。 滅亡した妖狐の一族の長だった、最強の妖の1人である九尾の狐・・・。」





その名が出てきた瞬間、その場の空気が凍りついた-----。



                                         ☆



「・・・まさかこんなにも急に封印が緩むなんて・・・!」





ギリリと歯を噛み締めながら、幸村は闇に覆われた空を駆ける。 その速度はとんでもなく速い。

しかしそれでも遅いといったように、彼は顔を歪める。 ふっと、彼の口が微かに動く。

と、次の瞬間彼の体は掻き消すようにその場から消え失せた・・・。



                                          ☆



「!!」





1人の男がはっと窓から空を見上げる。 空は雲に覆われ、今は闇に閉ざされている。





「この感覚は・・・まさか!」





何かに思い当たったのか、男はそう呻く。 その瞬間、彼は自分のいた部屋を飛び出した。

そのまま一気に階段を駆け下り、外に飛び出す。





「どうしたの? 南。」





出た途端、声をかけられる。 そこにはオレンジの髪をした男が、すぐ傍にある寂れた階段の手すりに腰掛けていた。





「ヤバイことになった。 千石! 俺と一緒に来てくれ。

 このままだと、都市が1つ滅ぶ・・・!」





南と呼ばれた、黒髪をした男のその言葉に千石の顔は驚きに満ちる。





「一体どういう・・・?」





「今説明してる時間はない! 行きながら話すから。 とにかく今は来てくれ!」





「分かった。」





千石がそう返事をしてすぐ、その場に強い風が吹いた。 風が収まった時には、2人の姿はもうない。

上空を見上げると、何かが飛び去って行くのが微かに見えた・・・。



                                            ☆



「九尾の狐・・・ってあの伝説のか?」





ブン太がそう問う。





「そうだ。 そうか、お前は知らなかったのだったな。」





「知るわけねーだろ。 100年も前のことなんて。 俺は一応普通の人間だからな。

 お前等と違って。 これでもまだ21だ。」





お前等みたく年とってねーからな。と言うブン太を尻目に、蓮二は話を進める。





「聞かせてくれ。 100年前に妖狐が滅亡したというのは知っている。 あの話は俺達の中じゃあ衝撃的だったからな。

 その際、長も死んだというのが俺達が聞いた話だ。 何故封印なんだ?」





蓮二の問いに、淳はポツポツと話し出した。





「そうか、幸村は君達にも本当のことは話していないんだね。

 ・・・今から100年前、妖狐の一族は滅んだ。 詳しい理由は今でも分からない。 だけど、人間によって滅んだっていう話はある。

 で、一族がことごとく殺された時、怒り狂ったのは当然長である手塚だった。

 彼は一体誰がやったのか考えることが出来ないくらい怒っていたんだ。 彼は復讐しようとした。

 この世界の、全ての者達に。 それは、人間も妖も関係なく無差別なもの。 彼にはもう、仲間の言葉も届かなくなっていたんだ。

 それを嘆いた幸村は、彼を殺すのではなく封印しようと考えた。 さすがの彼も、殺すことは躊躇われたんだ。

 そして、それは成功した。 そのあと、俺は幸村に頼まれて封印の番をしていたというわけ。」





淳のその話に、全員神妙な面持ちをしていた。

と、その時。 大きな揺れが店を襲った。





「なっ、何だ?!」





あまりの揺れに立っていることが出来ず、何かに掴まり必死に耐える。

この揺れの意味するものに気付いた淳の顔が青ざめる。





「封印が・・・!!」





空を、光が覆った・・・。



                                           ☆



「くそっ! 一歩遅かったか・・・。」





祠に辿り着いた幸村が見たものは、ボロボロに崩れたそれと傍らに倒れ伏す亮の姿だった。

急いで駆け寄り、呼吸を確かめる。





(・・・なんとか生きてる状態だな。 このままだと危険だ。 とりあえず回復を・・・。)





そう思った幸村が右手を翳そうとした時、ガシッと亮が彼の腕を掴んだ。

それに驚く幸村。 しかしそれには構わず、力の入らない血だらけの体で、何かを必死に伝えようとする亮。

唇が微かに動く。 それを、幸村は読み取る。





「手塚・・・の怒りは、まだ収まって・・・いない。 彼は、まだ全てを滅ぼそうとして・・・いる。

 レイニックシティに・・・むかった?! 何だと?!」





幸村のその言葉に、頷く亮。 幸村の背に、嫌な汗が流れる。





「そんなっ?! このままだと、皆が危ない!

 だけど、亮をこのままにしておくわけには・・・。」





幸村は迷う。 だが、この時強い風と共に2人の傍に現れた者たちがいた。





「君達は?!」





それは、忍足と日吉だった。 彼等と一緒に、以前アンバーグリスで見かけた滝という男もいる。





「幸村、こいつは俺達に任せてくれや。 絶対に死なせん。

 跡部が、山を降りた。 もうそろそろレイニックシティに着いた頃やと思う。

 早く行け。 手塚の力は脅威や。 跡部は1人じゃあ止められん可能性が高い言うとったわ。」





「分かった。 彼は頼むよ。 ・・・他に動きはあった?」





幸村のその問いに、今度は日吉が答える。





「俺達が飛んで来た時には、特になかったです。 しかし、跡部さんが言ってました。

 『光が動く。』と。 俺達はその意味を知りません。 とりあえず伝えておきます。」





日吉のその言葉に、微かに彼の表情が和らいだ。

しかし、すぐにそれを引き締めて言う。





「分かった。 ありがとう。

 あっちは俺達でなんとかするから。 君達はもっと安全な場所に行っていて。

 ここも、もしかしたら飛び火するかもしれないから。」





それに頷くと、幸村は亮に淳は大丈夫だからと一言言う。

そして次の瞬間には、その場から消え去っていた・・・。










【あとがき】

よく意味の分かんない始まり方になってしまいました(汗)

しかも肝心のメインがまだ出てこないっ!! ヤバイですね(汗)

一応説明は入れたんですけど、まだ不十分な気がバリバリします。 次あたりで書かないと。

ってか、暗いなー。 これ。 もっと明るいのにすればよかった気がします。



07.01.15



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