休める場所を求めて辿り着いたのは、大きな館でした。
しかし、ここには・・・。
輝きを失った石 第一章・2
合宿場に向かうバスの中、突如自分たちを襲った悲劇。
その場にいるのは困難を極めたため、全員はバスを降り、山の中を歩いていた。
向かうは、さっき佐伯が見たという建物・・・。
★
・・・山道の中を、全員は無言で歩いていた。
無理も無い。 さっき、人が目の前で無残に死ぬのを見てしまったのだから・・・。
「岳人、大丈夫か?」
忍足はそう岳人に声をかけた。
「ああ、大丈夫だよ。 心配すんなって。」
岳人はそう言って忍足を心配させまいとしたが、その顔は真っ青だった。
彼は、さっきの事故で、運転手の一番近くにいた。
そのため、運転手が死ぬ様をはっきりと見、そしてその血もあびてしまったのだ。
彼は、精神的に、深い傷を負ってしまった・・・。
その間も、全員は確実に前へと進み、ついに・・・。
「・・・ここです。 さっ僕が見た建物は。」
そう言う佐伯の前に建つのは、かなり古い洋館だった。
館の周りにはつたが覆い茂り、それがまた館の不気味さを増長させていた。
「かなり不気味な建物だね。 ここ。」
そう呟いたのは千石。 その顔には、いつもの明るさは無かった。
「そうだな・・・。」
相槌をうつ南の表情も固かった。
そんな状況を一番先に変えたのは榊だった。
「こんな所に突っ立っていても何も変わらない。
とりあえず中に入るぞ。」
その言葉に全員うなづき、榊を先頭にして、全員は館の中に足を踏み入れた・・・。
★
館の中は不気味なほど静まりかえっていた。
当然のごとく、人が住んでいる気配は全く無い。
全員が足を踏み入れたのは、どうやらホールのようだ。
そこはかなり広く、目の前には大きな階段があり、二階へ行けるようになっているようだ。
階段の後ろには、全員のいるところからではよく見えないが、どうやら2つの扉があるようだ。
他にも左右にひとつずつ、大きな扉があった。
「・・・やはり人の気配はないか。
そうだな、とりあえず何人かでチームを作り、この館の中を探索しよう。
このままいても何も変わらないからな。」
榊がそう言うと、全員はうなづいた。
そして、彼が言ったとおり、彼らはチームを作り始めた。
★
数分後、チームができた。
まずは、跡部・宍戸・長太郎・ジロー。 次は、真田・柳・柳生・仁王。
手塚・リョーマ・不二・乾。 佐伯・ダビデ・樹・黒羽・観月。 そして、千石・南・東方・祐太の計5チーム。
忍足は岳人と一緒にここに残ることになった。
「いいかい、お前達。 何が起こるかわからないんだ。
十分気をつけて行ってくるんだよ。」
「「はい。」」
スミレにそう言葉をかけられると、全員はそう返事を返した。
「跡部。」
他の仲間が行こうとしていたところへ、忍足がそう声をかけた。
「どうした? 忍足。」
その声に反応し、跡部は後ろを振り返った。
「・・・いやや。 行ってほしくない。 嫌な予感がするんや。
ここで行かせてしもうたら、もう二度と遭えへん気がして・・・。」
忍足がそう言うと、跡部はふっと微笑んだ。
「大丈夫だ。 心配すんな。
絶対戻ってくるから。」
「約束やで・・・。」
「ああ、約束だ。」
そう言うと跡部は忍足に背を向け、他の仲間達と一緒にこの場をあとにした。
その後ろ姿を、忍足は不安そうな目で見つめていた・・・。
【あとがき】
・・・なんとか2話です。 展開がやたら早いなあ。
この話から舞台が洋館へと変わります。
この洋館やたら広い予定です。
なので、できれば見取り図なんかもつけたいと思っています。
05.4.4
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