君が苦しんでいるのに、俺は何もすることが出来ない。
何であの時、俺は君を助けに行かなかったのだろう・・・?
輝きを失った石 第二章・5
「んっ・・・。 くうっ・・・。」
忍足が天根の足の縫合を始めた。 天根は苦しそうな声を出していた。
それもそうだ。 麻酔がないのだから。
しかし彼は、その痛みに必死になって耐えていた。
「ダビデ・・・。」
佐伯が辛そうに呟き、自分のこぶしを強く、強く握った。
★
「・・・よし、終わったで。」
10分以上かかって、やっと縫合は終わった。
黒羽はすぐに、天根が咥えていたタオルを取ってやった。
「ダビデ、よく耐えたな。」
黒羽がそう言うと、天根はかすかに微笑んだ。
その顔は、そうとう疲れた表情をしていた。
「岳人。 救急箱の中からガーゼ持ってき。」
岳人はそう言われると、すぐに救急箱の中を探し始めた。
その間に忍足は、荒い木綿糸で縫った傷口の上から、再び消毒液をかけた。
「はい、侑士。 持ってきたよ。」
「ありがとな。」
そして、岳人が見つけてきたガーゼを受け取り、傷口にのせた。
さらにその上から包帯を巻き、治療は終了した。
「よし、これでOKや。 まあ、簡単な応急処置や。
でも、これで出血多量の心配はあらへん。」
「ありがとうございます。」
「いや、礼なんていいねん。 実際に耐えたのは自分や。」
忍足はそう言って、にこっと笑った。
「それにしてもすごいですね。 まさか縫合が出来るとは。」
「実際にやったのは初めてやけどな。 なんとか出来てよかったわ。」
「それでもよくやった。 忍足。
さて、と。 早速で悪いが今後の対策を練らなくてはな。
この館に何かが潜んでいる以上、より慎重にならなくては。
・・・戻ってきてない者達は大丈夫だろうか・・・?」
榊はそう呟いた・・・。
【あとがき】
えー、長らく更新停滞していてすいません。
久々の更新です。
・・・なんかすごく短い。 本当はもっと長いかと思ってたんですけど、予想外でした。
次こそは長く、そして早めに!
最近他の原稿もあってまた遅くなってしまうかもしれませんが待っていてくださるとうれしいです。
05.12.3
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