なんでここに来たのかは分からない。
だけど、何かに呼ばれた気がしたんだ・・・。
Symphony of destiny 第一章・2
ここは、跡部達がいる町シュールから50キロほど離れたところにある森、キィエ。
その中を、黒髪で眼鏡をかけた男が歩いていた。
その足取りに迷いはなく、どこかに向かって歩いているようだ。
(ったく・・・。 一体どこまで行ったらおるんや。
俺をずっと呼んどる奴は。)
・・・この歩いている男の名は 『忍足侑士』。
その首に何の模様もないことからアーティシャルではないことが分かる。
だが、騎士でもない。 なぜかというとその身に目立つような武器を何も装備していないからだ。
騎士は普通剣を持っている。 その剣の長さなどは騎士によってまちまちだが・・・。
まあ、とりあえず今はこの話はおいといて、この剣も何も持っていないこの男は一体どうやってここまできたのだろうか?
それは・・・。
「! おっと危ない奴やっちゃなあ。」
忍足はそうつぶやいてひょいと体を横に逸らした。
その瞬間、さっきまで彼がいた所を、黒い、獣のようなものがとおりすぎていった。
その手先には、鋭く光る長い爪が・・・。
避けなければ確実に彼の命はなかっただろう。
(これは・・・ウルフやな。 まあたこいつかい。
いい加減同じのばっかで飽きたんになあ。 まあしゃーないか。
森の中に多く生息する奴さかい。)
そう思っていると突然ウルフが飛び掛ってきた。
それをまた軽く避けると、忍足は唱えた。
「火よ! 燃え上がり敵を焼き焦がせ!!」
そう叫んだ瞬間、突如ウルフの周りに火が発生。
それは一瞬で敵を焼き尽くし、その場には影も形もなくなっていた。
・・・そう、彼忍足はこの世界では数少ない魔導師なのだ。
「はあ、ほんとに手ごたえも何もないやっちゃなあ。
ここにはこんな弱い奴しかおらんのかい! このままやとこの森出るまでにかなり鈍りそうや・・・。」
そうブツブツ言いながら、忍足は先へ足を進めた。
☆
そして、それからしばらく時間が経ち、忍足は少し開けた場所に来ていた。
そこにはあまり広くはないのだが、透き通っていてとても綺麗な池があった。
その水面には・・・。
(! 人・・・? なんでこんなトコに?)
忍足はそう思ってその池に近づいていった。
水面に浮かんでいるのは、銀髪の男だった。 その顔は青年というにはまだ若く、その目は固く閉じられていた。
そして、近づいていって分かったことがもうひとつ・・・。
(・・・!! こいつ、アーティシャルか!)
その男の首には、アーティシャルということを証明する模様が刻まれていた。
(んにしても、何でこないなとこにアーティシャルがおるんや?
まあええわ。 とりあえず起こして何があったのか聞くか。)
そう思った忍足は早速池の中にザブザブと入っていった。
そして、男をわせわせと岸へと引き上げた。 すると、何の前触れもなく男が目を開けた。
「!!! うをっ! ビックリした!
いきなり起きるなんて反則やで!」
「はあ、すいません。 ・・・!!! 今何年ですか?!」
「へ? 今は2655年やで。 それが何や?」
「そんな、まさか・・・。 もう5年も経ったなんて・・・。」
男はそう言ってがくりと肩を落とした。
忍足はわけが分からずにその場に立ちつくしていたが、とりあえずたずねようと思い、男に聞いてみた。
「いきなり一体何があったんや? 俺でよければ話、聞かせてくれへんか?
それに、自分アーティシャルやろ? 自分の主はどうしたん?」
忍足にそう問われ、男は顔をあげ、言った。
「・・・すいません。 いきなり尋ねた上に勝手に落ち込んで。
俺の名は鳳長太郎。 あなたの言うとおりアーティシャルです。」
「いや、それは別いいねん。 おっと俺の名前、まだ言ってへんかったな。
俺は忍足侑士や。 よろしゅうに。」
そう言って忍足は右手を差し出した。
その手を軽く握り返し、長太郎は言った。
「こちらこそ。 それで、さっきのですけど、今、俺に主はいません。
今から5年前に契約は切られました・・・。」
「なんでや? まさか死んだん?」
「いいえ、マスターはあの時全然元気でした。」
「せやったら、何で・・・。」
「分かりません。 だけど、あの時何があったのかはお話しできます・・・。」
そう言って、長太郎は、話だした・・・。
【あとがき】
結構時間がかかってしまった・・・。 2話目です。
今回の視点は忍足とチョタ。 いきなり吹っ飛びました。
なんでこんなにいきなり変わるのよっ?!ってあまり突っ込まんでください。
いろいろとありまして・・・。
まあそれはさておき(をい)次の話は5年前。 チョタの過去の話です。
始まったばっかなのにいきなり昔に飛ぶんかいっ!て思っても見捨てないでください。
05.3.24
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