あなたは一体何を考えていたの?

なんで俺には何も言ってくれなかったの?






    Symphony of destiny  第一章・3







・・・長太郎が忍足と出会う5年前のお話・・・。





「5年前の2650年、俺は自分の主と各地を巡って魔物を倒して回っていました。

そんなある時、マスターは王都の連絡員から、王都へと来いという連絡を受けて、そこに向かいました・・・。」










王都へ着くと、彼の主は長太郎に待っていろと言い、今現在実権を握っている人物、榊のもとへと向かった。

そこでどんな会話がされたのかは、今となっては長太郎に知るすべはない。

だが、はっきりと分かることは、主が榊のもとから戻ってきた時、その目に哀しみと後悔の色をたたえていたということだった・・・。

それから後のことは、よく思い出すことができない。

気付いた時には、もうすでにキィエの森の中の池の傍にいた。


そこまで長太郎が話すと、忍足が尋ねてきた。





「なんでそこまでのことを思い出すことができんのや?」





「それはたぶんマスターが俺の記憶を消したからだと思います。

 アーティシャルの記憶は以外に簡単に消すことができますから。」





「そうやったのか。 止めて悪かったな。

 先に進めてくれや。」





忍足にそう言われ、長太郎はまた話出した。


池の傍で主は長太郎にこう言った。





『すまない・・・。』





と。 なぜそんなことを尋ねるんです?と言うと、





『すまない・・・。』





と言うだけで、なにも言ってはくれなかった。 そして・・・。





『Seek out your next・・・。』





彼の主は確かにそう言った・・・。





「何なんや? その言葉。」





「これは、騎士が自分のアーティシャルと契約を切る時に言う言葉です。

 普通は騎士が死ぬ時に言うんです。 騎士とアーティシャルでは寿命がかなり違いますから。」





「そうなんか・・・。」





・・・そう契約解除の言葉を言った主は、長太郎を池へと突き落とした。

そして、彼が 『なんでっっ?!』 と叫び主を見ると、彼は呪文を唱えながら剣を地面に突き刺したところだった。

その剣からは赤い光が発せられていて、文様が池を取り囲んでいた。

そして、急速に遠のいていく意識の中で、長太郎は聞いた。





『本当にすまない・・・。 次の主が来るまで、静かに眠れ・・・。』





と。 それから5年。 長太郎はこの池にやってきて、自分を起こしてくれた忍足と出会った・・・。









「そうか・・・そうやったんか・・・。」





話を聞き終わると、忍足はそう言った。

その言葉には、長太郎に対する哀れみの感情がこもっていたに違いない。





「・・・自分の主は、確かにお前さんを捨てた。

 せやけどな、そいつにもなんか事情があったんやと、俺は思うで。

 そうやなかったらなんで結界まで張ったのかわからへん。」





そう言うと、長太郎が忍足に尋ねてきた。





「あの、その結界って何なんですか?

 そんなの一体どこに・・・。」





長太郎にそう聞かれると、忍足は池の岸を見ながら言った。





「結界はな、自分が5年前に見た剣から出とった赤い光や。

 そいつにどんな力があったのかわ分からんが、かなり特殊な力を持っとったのは確かや。

 こんな強力のを張れる奴なんて聞いたことない。」





「どれくらい強力なんですか?」





そう聞かれると、忍足は少し目を細めた。

それはその結界の特性をも見極めようとしているようだった。





「・・・この結界は普通のもんは入れへんようなっとるな。

 選ばれたほんのわずかなもんだけや。 この池に入ることができんのは。

 ってことはや、だ。 この池に入れたもんにお前さんを頼みたいっちゅーことやな。」





「ということは・・・。」





「そうや、俺はなんか選ばれたもんらしいなあ。

 んで、お前さんの前の主にお前さんを頼まれたっちゅーことやな。」





その言葉に長太郎は目を大きく見開いた。

無理もない。 彼には、この短時間でいろいろなことが起こりすぎた。

目を覚ましたら5年も経っていて、会って間もない男が次の自分の主になるかもしれないのだから。





「・・・俺は一体どうすれば・・・?」





長太郎はそうつぶやいた。

その彼に、忍足は言葉をかけた。





「そんなあせって答えを出す必要はあらへんよ。

 お前さんが答えを出すまで、待っててやるさかい。

 俺は何の強制もせえへんよ。 おっと、ひとつ言い忘れとったわ。

 俺は騎士やないねん。 俺は魔導士や。

 それも覚えといてくれや。」





そう言うと、忍足は森の中へと消えていった。

池の傍には、悩むアーティシャルが一人、ぽつんと座り込んでいた・・・。






【あとがき】

 ・・・しまった。 やってしまったよ。

 本当はこの忍足と長太郎の出会う話、ここで終わらせる予定だったのに・・・。

 予想以上に長くなってしまった。 ・・・次こそは終わらせなければ。

 いきなりわけのわかんない状態から始まりましたが、この状態はまだ結構続きます。(続くんかい・・・。)

 見捨てないで見てやってくださいね。

      05.3.28



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