命令とあらば俺は何をやることも辞さない。

それが、俺にできるたったひとつのことなのだから・・・。






Symphony of destiny   第一章・5






『榊様が呼んでいる。 どうやら新しい任務みたいだぞ。

 すぐに榊様の部屋に行くようにしてくれ。』





人通りのあまり多くない喫茶店で、彼はコーヒーを飲んでいた。

この店は彼のお気に入りだった。

あまり高くなく、いい豆を使っている。 そして、街中と違ってそんなにうるさくない。

そこが、彼の気に入った理由だった。

仕事のせいで多忙な中、戻ってきた時には必ずここに来るようにしていた。





「また任務か・・・。」





くつろいでいた彼は、そう呟くとからになったコーヒーカップを置いた。

だが、彼の周りには誰もいない。





「お仕事ですか? 大変ですね。」





「ああ。」





笑顔でそう言う店員にそっけない返事をし、彼は料金を払い、店をでた。

そして、すぐそこにある裏路地に入ると・・・。





「遅いっすよ。

 俺、さっきから待ちくたびれちゃいましたよ。」





「だったら先に戻っていればよかっただろう?

 町の中なんだ。 危険はない。」





「まあ、俺がただ待ちたかっただけなんすけどね。 もしかしたら任務がくるかもしんないと思ってましたし。」





そう言うのはさほど身長の高くない少年。

その髪は黒。 そして、どこか生意気な感じの雰囲気を出していた。

一緒にいるのは濃い茶の髪をした男。

その顔に笑顔はなく、お前一度も笑ったことねーんじゃないの?という感じがした。





「まあいい。 赤澤、何のようだ?

 また新しい任務か?」





茶の髪をした男がそう言うと、ふいに目の前に人が出現した。

それが赤澤という人物なのだろう。





「ああ、そうだ。 だが、内容は榊様が直接言うそうだ。

 それもすぐにだ。 何かあったらしいぞ。

 俺は単なる伝言役だからな。 これ以上詳しいことは何も聞いていない。

 直接聞いてくれ。」





「分かった。 すぐに行こう。 連絡すまなかったな。」





別にいいさ。 そう言うと赤澤はその場から一瞬のうちに消えた。





「一体なんなんですかね? 榊様から直接とは。」





「予測をするより聞いたほうが早い。

 行くぞ、『リョーマ』。」





「はい、『マスター』。」





互いにそう言うと、二人はその場から・・・消えた。









・・・ここは、王都エルリード。

ここには政治の中心があり、全てのものが集まっていた。

町の中にはいくつもの川が流れ、人々の生活を支えていた。

その自然もある町のはずれには、大きな城が建っていた。

そこには、この町を治めている者が住んでいた。

この国の最高権力者、榊太郎が・・・。









城に入ると、2人はまっすぐに長い廊下を進み、上の階へと上っていった。

そして、最上階につくと、目の前にある大きな扉を軽くノックした。





『どうぞ。』





「失礼します。」





そう言って2人は部屋の中に入っていった。

部屋の中は広く、大きな窓からはさんさんと太陽の光が降り注いでいた。

その前の大きめの机のところに2人を呼び出した人物は座っていた。





「すまなかったな。 急に呼び出して。

 なにせ緊急のことなもんでな。」





椅子の上で足を組み、榊は2人を振り返ってそう言った。





「いえ、別にかまいません。 それより緊急なこととは?」





「・・・ここから西に100キロほど離れたところにパフェナという町がある。

 そこに最近多数の魔物が出現しているという報告が入った。

 お前達には今からすぐにそこに向かってもらう。」





「お言葉ですがそれは別に我々でなくともいいのではないのですか?

 他の騎士達でも十分にこなせる任務では?」





そう問われると、榊は困った顔をした。





「実はそうもいかなくてな。 そこに出現した魔物が今までのものとは違う新種のものらしい。

 すでに何人かの騎士を出したのだが・・・全滅した。」





榊がそう言うと、2人は息を呑んだ。





「・・・分かりました。 すぐに向かいます。」





「よろしく頼む。 何があるかわからんが、『3強』といわれるお前たちなら大丈夫だろう。

 では、手塚、越前・・・行ってよし!」





榊はそうびしっと決めポーズを決めた。









【あとがき】

 また視点が変わりました。 今度は手塚とリョーマです。

 ホントはこんな最後に2人の名前だす予定なかったんだけどな〜。

 ちょっと事情が重なって一番最後に名前がでました。

 リョーマは少し前にでてますが・・・。

 しばらく彼らの話になります。 

 ・・・跡部、主人公のはずなのに最初しかでてないよ。

 早く出してあげなきゃなあ・・・。

    05.4.7



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