何も知らない。 何も分からない。

誰か、教えて―――――――――。






Symphony of destiny  第三章・3





リンドブルーで水のオーブを砕かれ、その欠片を1つ入手した跡部と千石は、残りを探すべく再び旅だった。





「・・・これから一体どうするんだ?」





そう尋ねたのは跡部。

彼は、リンドブルーでのこと以来、考え事をすることが多くなっていた。





「とりあえずクーヘルって町に行こうと思う。 あそこには『情報屋』があるんだ。」





跡部のその暗い雰囲気を少しでもなくそうと、千石は努めて明るく言った。





「情報屋? 王都には行かないでいいのか?」





跡部のその言葉に、千石は少し気まずい顔をした。





「本当は行かなきゃいけないんだけどね。 でも、嫌なんだよ。 行くの。

 最近何にも報告しに戻ってないんだ。 それに、今回オーブ割っちゃったでしょ?

 怒られたくないんだよ。 榊様かなり怖いし。

 大丈夫。 菊丸君にはしっかり口止めしてあるから。」





「いいのか? それで・・・。」





跡部は少しばかり不安そうだった。



                                     ☆



その後、2人はクーヘルへと向かった。 この2人の移動手段はもっぱら空間移動。

この世界では馬が交通の主な手段だった。

しかし、王都に属する者は、大抵『時の欠片』と呼ばれるものをを持っていた。

時の欠片とは、人工的に作り出した空間移動装置のことである。

これは手塚のアーティシャルであるリョーマの力を参考に開発されたもので、これを使えば短距離ではあるが空間移動をすることが出来る。

ちなみに、リョーマには移動距離の制限はない。

距離によって当然力の消費量は変わってくるが、魔法陣を使えばそれもさほど問題ではない。

情報屋というのは、その名の通り、情報を売ることを生業としている者のことである。

その正確な拠点は不明だが、店はクーヘルという王都から比較的近い町にあった。

しかし、情報屋を知るものは数少ない。

知っているのは王都関係者と1部の人間だけである。

そんな所に、2人は行こうとしていた。



                                      ☆



「着いた! ここがクーヘルだよ。」





千石はそう言って目の前にある町並みの中に足を踏み入れた。

2人が空間転移をして辿り着いたのは、町の入口。

クーヘルは、見た目からも分かるように、さほど綺麗な町ではなかった。

どちらかといえば、都に住めないようなごろつきのいる町、そんな感じがした。





少し埃っぽい道を、2人は歩いていった。

先を行く千石は、町の中をジグザグに進み、かなり細い裏路地を歩いていった。





「・・・おい、千石。 本当にこんな所に情報屋ってのはあるんだろうな?」





「うん、ちゃんとあるよ。 情報ってのはかなり重要なものだからね。

 ここのことは、ごく1部の人間しか知らないんだ。

 信頼関係で成り立ってるんだよ。」





そう話しながら進むと、急に目の前が開けた。

そこには、少し広めの空間と、1軒の建物があった。

その中に、2人は入っていった。 千石は当然周りの気配にかなり気を配っていたが。





カランカラン





店の扉を開けると、乾いた鐘の音が響いた。

その中はさほど広くはなく、古びたカウンターがあった。





「・・・? おい、誰もいねーじゃねーか。」





「いるよ。 ただ単に出てこないだけ。 合言葉が必要なんだ、ここはね。

 『シーク』」





「『アウト』 いらっしゃい。 よく来たね、千石。」





そう言って奥から現れたのは、赤い髪を綺麗に切りそろえた男。

その顔には穏やかな笑みを浮かべていた。





「久しぶり、滝。」





滝と呼ばれたこの男は、情報屋の1人。

この店には千石が知る限り、3人がいた。





「他の2人はいないんだ。」





「うん、今はね。 君は・・・跡部君だよね。 へえ、君がね。

 ところで、今日は何? 何の情報が欲しいの? やっぱりオーブのこと?」





滝がそう尋ねた。





「ちょっと待て、お前なんで俺のことを知っているんだ?」





滝のさっきの発言が気になった跡部はそう尋ねた。

すると、滝はまた軽く微笑み、言った。





「そりゃあ知ってるよ。 なんたって僕は情報屋だからね。

 常に情報は集めてる。 君のことは他の仲間が教えてくれたんだ。

 あと、これも知ってるよ。 先日、水のオーブが砕けたこともね。」





「う〜、やっぱり君達には敵わないね。 もう知ってるとは。

 そうだよ、オーブについて知りたいんだ。 どこにあるかとかね。」





千石がそう言うと、滝は少し考えるような格好をとった。

そして、教えてくれた。





「・・・ここから結構離れたところにアレクキサールていう古代の遺跡があるんだ。

 そこに、何かがあるってのは聞いたことがあるよ。 それがオーブかどうかは分からないけど。

 この情報を仕入れたのは本当に最近でね。 まだ何にも調べてないんだ。」





「ふーん。 そっかあ。 じゃあそこに行ってみようかな。

 ありがと。 早速行ってみるよ。」





「十分に気をつけていきなよ。 あそこら辺は魔物が結構出るらしいから。

 新しいことが分かったら知らせにいってあげようか?」





「いいの?! やった! そうしてくれると助かる〜。」





千石の顔にさっきより明るい笑顔が。





「まあ、付き合い長いからね。

 そこに行って何か分かったら教えてね。」





「うん、分かってる。 じゃあ、ありがとね!」





そう言って千石は店から出ていった。

そして、完全に無視されていた跡部も、溜め息をついて出て行こうとした時、





「ちょっと待って。」





いきなり滝に呼び止められた。





「何だ?」





「・・・確かなことはわかってないけど、一応忠告しておくよ。

 最近王都の動きに不審な部分があるんだ。 気をつけて。」





「何で俺に言うんだ? 言うなら千石だろう?」





跡部のその言葉に、滝は少し困ったような顔をした。





「分かんないけど、君に言ったほうがいい気がしたんだ。

 千石には言わないでいいよ。 いろいろ心配すぎるからね。」





「そうか、一応礼は言っておく。」





そう言って跡部は店を出ていった。

彼の出て行った店の中で、滝は難しい顔をして、1人たたずんでいた。





「・・・何で僕、こんなことを言ったんだろう?

 何か、起こる気がする・・・。」





静かな店の中に。一陣の風が吹いた気がした・・・。









【あとがき】

放置してからいつの間にか1ヶ月以上が経っていました。

すいません!

最近こっちかがかなりおろそかになってます。

とっとと書かなければ!!

何故か跡部達のほうに話が移りました。

何故こうなったかは、私にも分かりません。 ・・・ごめんなさい・・・。



05.10.24



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