やっと見つけた。
まさか、本当にこんなことになっているとは・・・。
Symphony of destiny 第三章・6
比較的明るい森の中を、2人は歩く。
時々、何か思い出したかのように魔物が襲ってくることはあったが、それをなんなく倒し、先へと進んで行った。
そして、歩くこと数時間。
2人はいきなり開けた場所に着いた。
「うわっ。 すご・・・。」
その光景を見た瞬間、千石は感嘆の言葉を漏らした。
跡部も言葉を発しなかった。
目の前に広がっていたのは、巨大な建造物だった。
それは、もう何百年も前に立てられたもののようだったが、とてもしっかりしていた。
外から見た限りでは、それは地上5階。
形状は台形で、上に行くにしたがって細くなっていた。
「・・・遺跡ってこんなにすごかったんだね。 予想以上なんだけど。」
「俺様もここまでとは思ってなかった。 かなりでかいな。
・・・おい、思ったんだがなんでこんなでかいもんが今まで発見されなかったんだ?
これ、明らかに木よりもでかいだろ。」
「そういえば・・・。」
跡部のその言葉に、千石は唸った。 確かに彼の言うことはもっともだ。
ここが森のかなり奥だとはいっても、これだけ巨大なものが今まで発見されなかったのはおかしい。
だが、いくら考えても、千石にはその答えなどは思い付かなかった。
「う〜ん。 分かんないや。 でも、何か理由がありそうだね。
まあ、とりあえず中に入って調べようか? ここにいてもしょうがないし。」
「そうだな。 とりあえず入るか。」
そう言葉を交わし、2人は遺跡の中に入っていった。
この時、2人は気付かなかったが、遺跡の最上階から、何かが2人を見ていた・・・。
☆
遺跡の中は思っていたほど広くはなかった。
だが、出現する魔物の強さは森の中の比ではなく、2人はかなり苦戦を強いられていた。
「くっそ! 何でこんなに強いんだよっ!
こんなに強いの、今までほとんど見たことないんだけど!!」
「文句言う前に体を動かせ! 気を抜くと死ぬぞ!!
んにしてもなんでこんなに。 まるで何かを守ってるみたいな気がするんだが・・・。」
「案外そうかもしれないよ。 情報屋の情報が今まで違ったことなんてないから。
でもとりあえずここを何とか抜けなきゃ!
『風よ! 我が剣に纏い、敵を切り刻め! ウインラッド!!』」
千石がそう唱えると、風が渦巻き、彼の剣に纏われた。
それにより、剣のリーチは延び、なおかつ攻撃力がアップした。
魔物達はその攻撃の前に、次々と地にひれ伏していった。
互いの戦闘技術と持ち前の攻撃力の高さで、2人は着々に上の階へと歩を進めていった。
そして、4階の敵を全て倒し、2人は5階へと通じる階段の前へ立っていた。
「ふう、やっとここまで来たね。 なんかやたら時間がかかった気がするけど・・・。」
「まあ、予想外にあいつらが強かったからな。
これがいい修行にでもなったと思ってりゃあいいだろ。」
「確かに。 よし、そう思うことにしよう。
・・・さて! このこの先が最上階だ!! 気合いれていくぞー!!」
そう言いながら、千石は1回大きく伸びをした。
それを目の端に捕らえながら、跡部はこの先に何かを感じていた。
それは、懐かしさという感じに似ていた。 しかし、どうしても思い出すことが出来ない。
(何でだ? 何でこんなに懐かしい感じがするんだ?
一体俺の過去は何なんだ? 何で記憶が何もないんだ?)
跡部は記憶がないことに軽い恐怖を覚えていた。
それもそうだろう。
自分が過去に何をしていたか。 自分がどういう人物で、どういう環境で生きていたのか。
それすらも分からないのだから。
もしかしたら・・・。と跡部は思う。
もしかしたら、自分は何か大罪を犯したりしたから記憶を消されたのではないか?
それとも、知ってはいけない何かを知ってしまったから?
考えだしたら、止まらなくなってしまった。
「・・・どうしたの? 跡部君。 顔が真っ青だよ?」
「!!」
千石がいきなりかけてきたその言葉で、跡部は現実に戻された。
いつの間にかうつむいていた顔を上げると、心配そうな顔をした千石が、自分の顔を覗き込んでいた。
「・・・なんで・・・もない。 ちょっと考え事をしていただけだ。」
「そう? ならいいけど。 でも、何かあったら言ってよ。
僕達は契約を結んでるわけじゃないけど、一緒に旅をしているんだ。
君がアーティシャルとかそんな事は関係ない。 僕には、君が大切なんだ。」
千石のその言葉に、跡部は目を見開いた。
-----大切。
その言葉を最後に聞いたのは、ずっと、ずっと昔だった気がする。
跡部の頭の中に、1人の人物が浮かび上がってきていた。
しかし、その顔は靄にかかったようにかすんでいて、どうしても思い出すことが出来ない。
その人物に、大切だと言われたような気がした。
千石と、その人物の顔が重なる。
(俺のことをそんな風に思っていてくれたんだな。)
跡部の心の中に、安心感が満ちた。
こいつなら付いていける。 こいつなら信用できる・・・。
「ふん。 俺は別にお前のことなんか大切なんかじゃねーぞ。
だが、何かあったらその時は言ってやる。」
そう言って、跡部は千石に背を向けた。 ちらっと見えたその顔は、少し照れているような顔だった。
そして、その背中を見ながら、千石はかすかに笑った。
(まったく、本当に素直じゃないんだから。)
「おい、ぐずぐずしてると置いてくぞ!」
「はいはい。 今行くよ。」
そう言って、千石は跡部を追った-----。
【あとがき】
休止中第三弾。
今回も跡部と千石の話でした。
なんか、最初に考えていたのと展開がものすごく違います。
本当は、今回のこの話は書く予定なかったんです。
でも、なんか書いていたらなぜかこんな展開に・・・。
キャラ達が勝手に暴走していますよ。
暴走の結果、本来はここで出てくるはずだった新キャラは次回に持ち越し。
ああ、早くだしたいのに・・・。
次こそは絶対に出すぞー!!
05.11.27
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