相変わらず、変わっていない。 会えてよかった。

でも、彼のほうが最初に会いたかっただろうな・・・。





Symphony of destiny  第三章・7





跡部と千石は、階段を上り5階へと向かった。

その階段は他の階と同様の作りになっていて、別段変わった所はなかった。

だが、階段を上りきり、部屋の中に足を踏み入れようとしたその時!





「跡部君、伏せて!!」





そう怒鳴って、千石は跡部を突き倒し、自分は腰の剣をとっさに鞘から抜いた。





キインッッ





その瞬間、部屋の中に響き渡る金属同士がぶつかり合う音。

ふわり、と銀の色が目に入った。





「なんじゃ、人間か。」





少しの間を空け、相手はそう言って剣を引いた。 それに千石は目をぱちくりとした。

いきなり切りつけてきたのは、少し長めの銀の髪を後ろで1つに縛った男。

千石は何が起こったのかわからないといった顔をしていた。





「すまんな。 魔物かと思ったんじゃ。」





銀髪の男はそう言って謝る。

と、その時男の後ろからまた別の男が現れた。





「嘘を言うのはダメですよ。 ごめんなさい。

 今のはわざとやったんです。 あなた達の力量が知りたくて。」





その男は、茶色い髪に細身の眼鏡をかけていた。

と、その時千石の後ろから跡部が軽くうめき声をあげて起き上がりながら言った。





「ったく。 おい、千石お前強く突き飛ばしすぎなんだよっ!

 あいつの気配くらい、俺様にだって分かってたんだからな。

 おい、お前ら! 誰だか知らねーが、迷惑なことしやがって!」





跡部のあまりにも短い堪忍袋の尾はもうすでに切れそう。

それに答えたのは、茶髪の男のほうだった。





「本当にすいません。 ですが、あなた達がどれほどの実力を持っているのかが知りたかったんです。

 あっ、すいません。 いきなり攻撃したうえにまだ自己紹介していませんでしたね。

 私は『柳生比呂士』という者です。 こっちの方は・・・。」





「『仁王雅治』じゃ。」





2人はそう名乗った。 それに、千石も自己紹介をした。





「あっ、丁寧にどうも。 俺は千石清純です。

 こっちは跡部景吾君。」





跡部は、千石がそう言うと、ふんっ、と言って横を向いた。

・・・この時、2人は気付かなかったが、ほんの一瞬だけ柳生と仁王が目配せした。





「そちらも、どうもご丁寧に。

 ・・・いろいろ検索するようで悪いのですが、お2人はここに一体何の用で来たのですか?

 あと、その実力。 ここにいる魔物達のレベルは半端ではないです。

 あの魔物を全て倒してここまで来るなんて。 騎士ですね?」





柳生のその質問には、千石が答えた。

その間、跡部と仁王の2人は黙っていたが、仁王はずっと跡部を見ていた。





「・・・確かに、俺は騎士です。 そして、ここにはオーブを探しに来たんです。

 ここに何かあるという情報をつかんだので。」





「そうでしたか。 では、失礼を承知でお聞きします。

 そちらの方はあなたのパートナーですか? 見たところ、アーティシャルのようですが。」





「いえ、違います。 彼と俺は確かに一緒にいますが。

 ところで、なんでそんなことを聞くんです?」





千石は怪訝そうに聞いた。

確かに、こんなに聞いてくるなんて普通はおかしいと思うだろう。

訝しげな顔をしている千石に、柳生は微笑んで言った。





「そんなに身構えなくてもいいですよ。 私達は怪しい者ではありませんから。

 ああ、この状況でそう言ってもあまり信じてはもらえないでしょうが。

 あと、敬語は使わなくてもいいですよ。

 私のこのしゃべり方は癖のようなものなので。」





柳生がそう言うと、千石は少々安心したようだった。

顔の、緊張を少しほぐして言った。 しかし、目は未だに鋭い光を放っていた。





「そう? じゃあ、敬語なしで。

 普段あんまり使わないから疲れるんだよ。

 で、君達は一体何者なの? 僕らのことをそれだけ聞いたんだから教えてくれるよね?」





千石がそう問うと、柳生は眼鏡をくいと上げ、言った。





「私は、考古学者です。 遺跡や、オーブのことについてなどを調べています。

 そして彼、仁王君は私の友人で用心棒です。

 調査の際には常に危険が付きまといますからね。 まあ、私も少しは戦えるのですが。

 いずれにせよ、怪しい者ではありませんよ。」





「そう。 ならいいや。」





千石は柳生のその言葉を完全に信用したようだった。

今まで保っていた緊張を解いた。





「そうだ、ここにオーブはあったの?」





千石がそう聞いた。

うると、柳生は少し顔を曇らせながら言った。





「いえ、ここにはありませんでした。 どうやらハズレのようですね。

 私達もここに来てからいろいろと探してみたのですが・・・。」





「? お前、一体何言ってやがるんだ?」





突然、今まで沈黙していた跡部が言った。

その言葉に、その場にいた全員が驚き、跡部のほうを見た。





「え? 今、何て・・・。」





「だから、何でここにオーブがないなんて言うんだ?

 ちゃんとあるだろ。」





当然のようにそう言う跡部のその言葉に、全員は言葉を無くした。

その中、柳生の顔だけが青ざめていた・・・。









【あとがき】

昨日の更新から早速書きました。

さあ、やっと柳生と仁王が出てきました!!

やった! 今まで出したくても出せなかったんですが、これからは出せるぞおー!!

この2人は後々重要なキャラになってくる予定です。

・・・なんかこの話出てくる回数が少ないのにやたら重要なキャラが多いような・・・。



05.11.30



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