何故、分かるんだ?

まさか、もう全てが遅かったのか?





Symphony of destiny  第三章・8





跡部の発したその言葉に、全員は言葉を無くした。

それもそうだろう。 3人の目には、何も映ってなどいなかったのだから・・・。





「え? 跡部君、どういうこと?

 俺の目には何にも見えないんだけど・・・。」





千石がそう言うと、跡部は信じられないといった顔をした。





「何? お前らには見えないのか?

 俺には、こんなにはっきり見えているのに・・・。 何でなんだ?

 まあいい。 なあ、これ取ってもいいだろ?」





跡部がそう聞くと、千石はいいよ。と言った。





「いいよ。 別に取っても。 取ったら何かあるってわけじゃないみたいだから。」





「分かった。 じゃあ取るぞ。」





跡部はそう言って、部屋の中央へと歩いていった。





(おい、柳生。 このままじゃヤバイんじゃないのか?!)





(かなりヤバイです。 しかし、今ここで止めたら私の正体がばれる恐れがあります。

 彼らが私のことを知るのにはまだ早すぎます。 それに・・・。)





(それに?)





(私には、跡部君の言う、オーブが見えていないんです。)





(はっ?! 何で柳生に見えてないんじゃ?!

 俺なら分かるけど、お前は普通見えるじゃろ?)





(・・・いえ、見えなくてもおかしくはないんです。 

 ここにオーブを持って来たのは私ではないんです。

 『彼』は慎重でしたから。 万一のために私達にも見えなくしたのでしょう。)





(そっか。 じゃけど、どうするんじゃ?)





(とりあえずここは見ていましょう。 後のことは、臨機応変に。)





(・・・お前にしてはやけに変わった発想じゃな。)





この会話を、2人は跡部が歩いている時にこっそりとしていた。





跡部は部屋の中央に歩いていった。

そこには、昔祭壇か何かがあったのだろう。

少し盛り上がった石が、丁度三角錐のような形に無造作に置いてあった。

その1番先。 その空中に向かって、跡部は手を伸ばした。

するとその瞬間!





カッッ!!





突然強烈な光が辺りを満たした。

そのあまりに眩しさに、3人は目を覆った。

そして、光が消えた頃、そっと覆っていた手をはずし跡部のほうを見ると・・・。





「これが・・・。」





彼の前には、1つの半透明で黄色に輝く宝石が浮いていた。

その大きさは丁度人のこぶしくらい。

それは、内に秘められた力が漏れ出ているかのように、淡く光っていた。





「すごい、これが丸々1個のオーブなのか。

 水は3分の1しか持ってないから、1個を見えるのは初めてなんだよね。」





そう言いながら千石は跡部のほうへ近づいていった。

その光景を、仁王と柳生の2人は後ろから静かに見守っていた。





「ものすごく強い力だ。 さすがはオーブだな。」





跡部はそう呟く。 そして、そのオーブを手に取った。





「・・・これは雷の属性みたいだね。 確か赤也君がこの属性だったかな。

 同じ属性の人が持たないと力は上がんないから俺達じゃダメだね。」





千石の隣に来た千石がそう言った。

すると、いきなり後ろにいる柳生達のほうを向いた。





「俺達は王都からオーブを持ってくるように言われているんだ。

 これが研究の対象としてかなり興味深いものだっていうのは分かるけど王都の命令は俺には絶対だから持っていくね。」





「はい。 いいですよ。 私達は王都の研究員ではないのでしょうがないです。

 また、探しますよ。」





柳生はそう言って軽く微笑んだ。

それに千石は安心したような笑みを見せ、





「じゃあ、俺達はこれで行くよ。 早くこの森を抜けないと夜になっちゃうから。

 この明るさだったらまだここを抜けられる。

 2人はどうするの?」





「私達はまだしばらくここにいます。 夜になっても大丈夫ですから。」





「そっか。 じゃあ、ここでお別れだね。 

 なんかいきなり来てオーブ持ってっちゃうのはやっぱ悪い気がするけど・・・。

 また、どこかで会えるといいね。」





「ええ。 ・・・でも、きっと近いうちにまた会いますよ。」





柳生が最後に言った言葉はあまりにも小さすぎて、2人には届かなかった。

この後、2人はこの遺跡を立ち去った。 雷のオーブは千石が持っていた。

その後姿を、柳生と仁王は、静かに見守っていた・・・。



                                     ☆



「今回のこれは完全に予想外じゃったな。」





千石と跡部のいなくなった部屋で、仁王がそう言った。





「ええ。 まさか、ここに来るのが彼らだとは思いもしませんでしたよ。 他の人だったらまだ対処の使用があったんですが。

 でも、雷とは。 惜しい物を王都に渡す結果になってしまいましたね。」





「そうじゃな。 あれをもし俺らが手に入れていたらかなりの戦力になったんじゃがの。

 ・・・なあ、あいつはもう目覚めてしまっとるんか?」





いきなり、仁王が声を低くして言った。

その顔は、さっきまでとは違い、真剣な物になっていた。





「・・・いえ、まだです。 本体は完全に目覚めていません。 目覚めていたら、私か『彼ら』が気付きます。

 でも、勝手に封印が解けることなどありません。 あれにかけた封印はとても強力ですから。

 あれの封印が解けたその時は・・・世界が再び滅びます。」





柳生のその言葉の重さに、その場に沈黙が下りた・・・。





この2人は一体何者なのだろう?

そして『彼ら』とは。 そして、跡部達とはどんな関わりが?

謎は増していくばかりだった・・・。









【あとがき】

えー・・・今回のこの話はいろいろ予想外でした。

書いててどうしようと悩んだ部分がかなりたくさん。

特に悩んだのがオーブを見つけたあとの跡部と千石の会話。

いいのが思いつかなかったからあんなに短くなってしまいました。

ごめんね跡部。 見つけたのに出番ほとんどなくて(汗)

柳生と仁王の2人も謎の人です。

でも、なんか内容的に誰を気にかけているのか分かると思いますが。

もうそろそろ話しは確信に入る予定です。

次からは場面を変えて、また新しいキャラが出てくる予定。

・・・早く他の人達もっと出したいな。



05.12.5



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