風は吹き荒れ谷に恵みをもたらす。 

豊かさを守るは巨大な力。 それを守るは強き力。

互いに揃いしその力は、均衡を保ち平和をもたらす-----。






Symphony of destiny  第四章・1





岳人から風の谷、シルフィードの話を聞いた千石と跡部の2人は、時の欠片の力を使い谷の所に来ていた。





「へえ、ここがシルフィードかあ〜。」





千石はそう感嘆の声を漏らした。

今、2人がいるのは谷の前、小高い丘の上。 丁度そこからは谷を見下ろすことが出来るようになっていた。





「なかなかいい眺めだな。 それに、風が心地いい。」





跡部がそう言ったように、ここには穏やかな風が吹いていた。

そこはさすが風の谷ということだろう。





「さて、跡部君。 そろそろ行こうか。」





「ああ。」





そう2人は言葉を交わし、丘を降りて歩き始めた。

谷は一面緑の柔らかい草に覆われ、空には小鳥が楽しそうに飛んでいた。





「・・・こんなに平和な場所だったなんて思わなかったよ。

 今、この世界は魔物の脅威に怯えている所ばかりだけど、ここは本当に平和だね。

 どんなに平和そうに見える町でも、どこか暗い影を落としてる。

 でも、ここにはそんなものはどこにも感じられない。」





「ああ。 それは俺にも分かる。

 ここは、何か強い力で守られてるみたいだな。」





「もしかして、それがオーブの力なのかもね。」





「ああ、そうかもな。」





そう話しながら、2人はどんどんと谷を降りていった。

そして、しばらく行くとなにやら村のような集落が見えてきた。





「あっ! 跡部君、あれって村だよね?」





「そりゃあそうだろ。 あれはどっからどう見ても村だ。」





「じゃあ、人もいるね。 早速聞き込み聞き込み。」





そう話していると・・・。





「あっ、あなた達ちょっと待って!」





いきなりそう声をかけられた。





「「???」」





その聞き覚えのないその声に首をかしげながらも2人が後ろを向くと、そこには1人の女の子がいた。

その女の子は肩くらいの長さの髪をしていて、前髪をピンで留めていた。





「いきなり呼び止めてごめんなさい。

 あっ、自己紹介がまだだったわね。 私の名前は『橘杏』。 ここの村に住んでいるの。

 あなた達は王都の騎士とそのパートナーの人かしら?」





「わざわざ丁寧にありがと。 俺の名前は千石清純。 で、こっちが跡部景吾君。

 君の言っていたことは半分だけあってるよ。

 確かに俺は王都の騎士だけど、跡部君は俺のパートナーじゃないよ。」





「そう。 いきなり聞いてごめんなさい。

 お詫びに、私の家に招待するわ。 ここまで来るのは大変だったでしょう?

 そこで休んで行くといいわ。 あと、私の兄さんも紹介してあげる。

 こっちよ。 付いて来て。」





そう言って、杏は歩き出した。

2人は最初はどうしようかと思ったが、誘いを断る理由もなかったので、彼女に付いて行くことにした。





(それにしても、橘ってどっかで聞いたような名前のような・・・。)





千石は歩きながらそう考えていた。



                                      ☆



杏に連れられて着いた先は、村の奥にある大きな家だった。

どうやらそこが彼女の家のようだ。 杏は何のためらいもなく、中に入っていった。

そして2人は彼女に案内され、客室に通された。





「2人共、ちょっとここで待っててくれる? 今お茶を淹れてくるわ。」





そう言って杏は家の奥へと消えていった。



                                      ☆



「ただいま、兄さん。」





「ああ、おかえり。 珍しいな。 お前が客を連れてくるなんて。」





「あの人達とは、谷の入口で会ったの。 

 本当はあまり連れてくるつもりはなかったんだけど、聞いてみたら王都の騎士だって言うから。

 兄さん、会いたがってたことを思い出して連れてきたの。」





「そうか、わざわざありがとな。 じゃあ、さっそく会ってみるか。

 杏、お茶の準備を頼む。」





「分かったわ。」



                                       ☆



「待たせてしまってすまない。」





そう言いながら、杏の兄は千石達の待つ部屋に入ってきた。





「あっ、あなたは!!」





彼が入ってきたとたん、千石が驚愕の声を上げた。





「何だよ千石、お前の知り合いか?」





「知り合いも何もこの人を知らない騎士なんていないよ?!

 まさか、生きていたなんて・・・。」





「俺のことは、まだ皆覚えていたんだな。 紹介がまだだったな。

 俺の名前は『橘桔平』。 元、王都の騎士だ。」





突如2人の前に現れた元、王都の騎士。

彼の出現は一体何を意味しているのだろうか・・・?









【あとがき】

えー、始まりました第四章。

まあ、三章の続きから始まったわけですがまた新キャラ登場です。

橘兄妹。 桔平のほうはわけありです。

これからたぶんしばらくの間毎回新キャラが出てきます。

何でこんなにいっぱいにしちゃったんだろう・・・?



05.12.17



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