なぜこの人がここに?

死んだはずじゃなかったのか・・・?





Symphony of destiny  第四章・3





「俺の名前は橘桔平。 元、王都の騎士だ。」





岳人から情報をもらって行った風の谷シルフィード。

そこで出会った杏という少女に案内され、彼女の家にやってきた2人。

2人に会いたいと言った杏の兄は、本当ならここにいてはいけない人物だった。





「? 一体どういうことだ? 『まさか生きてた』って。」





「・・・王都に属する騎士とアーティシャルは、絶対の服従を誓っているんだ。

 まあ、それはこの2つだけじゃないけど。 それに反して裏切るということは死罪にあたる。

 今まで、王都を裏切って生き残れた人なんていないんだ。」





「何で生き残れないんだ? 強い奴だったら大丈夫だろ?」





「いや、そうでもないんだ。 裏切り者に制裁を加えるのは、自分よりも強い者だったり、複数だったりするから。

 そう考えると、たとえ3強でも裏切ったら命はないということ。」





「だが、こいつは現にここにいるぞ? 何でだ?」





「それは俺が言おう。」





千石を跡部が話している間、沈黙を守っていた橘がそう言って口を開いた。





「俺が王都を離反したのは6年前。 理由は・・・まあ、あとで言おう。

 とにかく、その時はやはり追手が来た。 俺を追ってきたのは、3強の幸村だ。」





「え? あなたの追手はあの幸村さんだったんですか?!」





千石がそう驚いて言うと、跡部が訝しげな顔をした。





「幸村って誰だ?」





「幸村さんは、今でも3強として戦っている人だよ。 その戦闘能力は半端じゃない。

 他にも2人、3強はいるけど、彼はその中でも1番強いかもね。

 まあ、実際に戦ったわけじゃないからなんともいえないけど。 一体何で幸村さんだったんですか?」





「俺が、王都を離反するまで3強の1人だったことは知っているな?

 あの当時、3強だったのは、俺と幸村、そして真田だ。

 手塚はあの頃はまだ騎士としては強かったが、俺ほどじゃなかった。

 当時、3人の中で俺は幸村にだけはどうしても勝てなかった。 だから、あいつが俺の追手になったんだ。

 真田は倒せたからな。」





「どうやって逃げ切ったんですか?」





「・・・俺の能力と、俺のパートナーの力のおかげだ。

 あと、幸村が逃がしてくれたんだ。」





その言葉に、千石は驚いていた。

幸村が逃がしてくれた。 確かに驚くのも無理はないだろう。

そのことが王都にばれたら、自分の命も危ないのだから。





「俺の能力のことはさすがに知らないだろうな。 俺はいつも自分の力で戦っていたからな。

 だが、パートナーのことは知っているだろう?」





「あなたのパートナーって確か、風の力を持っていて動きが早いのが自慢の・・・。」





「そう、『神尾アキラ』だ。 あいつのエレメントは風。 そのお陰で早く逃げることが出来た。

 で、教えてやろう。 もう、戦うことは多分ないからな。

 俺の能力は・・・時の停止だ。」





「え?」





橘のその言葉に、千石だけでなく跡部も言葉を失った。 それもそうだろう。 

時空を越え、さまざまな場所に移動できる能力者はいるが、時間を止める力を持つ者など、聞いたことがない。

2人はただ呆然としていた。





「まあ、驚くのも無理はないだろう。 こんな力を持ってるのなんて俺しかいないからな。

 だが、時間を止めるといってもほんのわずか、5分だけだ。

 それ以上は無理だ。 だが、この力のお陰で追手が来たら奴らの時間を止め、その間にアキラの力を使って逃げることができた。」





「? あれ? あの当時は時の欠片はなかったんですか?

 それに、普通の風の能力者じゃあ移動は出来ませんよ?」





「ちょっと、そんなに俺をなめないでくださいよ。」





「「!!」」





いきなりそう声がして、2人ははっと辺りを見回した。

すると、一陣の風が部屋の中に吹き込んだかと思うと橘の隣に前髪のやたら長い男が立っていた。





「こんにちは。 初めまして。 俺が神尾アキラです。」





「アキラ、ご苦労だったな。 様子はどうだった?」





橘は、千石達のほうに向けていた顔を、神尾のほうに向けて尋ねた。





「今の所大丈夫です。 ですが、もう少ししたらかなり大掛かりな襲撃が予想されます。

 俺達だけでも十分かと思いましたが、万が一のことを考えあの2人にもここに来るように頼んでおきました。

 彼らは『語りの民』の所によってからすぐに来るそうです。」





「そうか、ご苦労だったな。 ・・・まだ時間はあるな。 今まで働き詰めだったからな、少し休んでいいぞ。」





「分かりました。 じゃあ、お言葉に甘えて休ませてもらいます。

 何かあったらすぐに来ます。」





「ああ、頼んだぞ。」





「はい。 では、失礼します」





そう言うと、神尾は部屋から出ていった。

そして、橘は話を始める前に杏が持ってきてくれていたお茶を一口飲んで、また話し始めた。





「途切れてすまなかったな。 あの当時、時の欠片なんてものは存在しなかった。

 あれが開発されて実用化されたのは俺が離反した1年後。

 丁度手塚のパートナーの越前が造られた時くらいだ。

 で、アキラのことだが、あいつも一応元、3強だぞ。」





「ええ?!」





橘のその言葉に、千石は再び驚いた。





「知らなかった・・・。 まさか今の人が3強だったなんて・・・。」





「まあ、知らなくても無理はあるまい。 王都はその6年前に事件を隠しているからな。

 さすがに俺のことまでは隠しきれなかったようだがな。

 とにかく、俺達はなんとか王都を離反できた。 で、そのあとはこの谷に落ち着いてここの平和を守っているというわけだ。」





「・・・そうだったんですか。 そうだ、まだ理由を聞いていませんでした。

 あなたが王都を裏切った理由って一体なんだったんですか?」





「・・・俺達が王都を離反した理由は・・・この世界を守るためだ。」





橘はそう言って、2人の目をまっすぐに見た。

その言葉には、強い力がこもっていた-----。









【あとがき】

なんか・・・長いです。 珍しく長いです。

そして橘さんとアキラ、かなり重要ってか強いキャラになってしまっている(汗)

本当はこの2人ってあんまり重要じゃなかったんですけど、話の都合上重要に。

特に橘さんなんてかなり予想外でした。 本当はこんな能力じゃなかったんですよ。

もっと違うのだったんです。 なんか、この話が無事に終わるのかかなり心配になってきた今日この頃です・・・。



05.12.30



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