何で、あの人が・・・?





Symphony of destiny  第四章・4





「幸村が・・・王都を、我々を裏切った。」





真田が発したその言葉に、長太郎は呆然とした。

それもそうだろう。 真田が言ったことは、完全に彼の予想外だった。





「どういう・・・ことですか・・・?」





「その言葉の通りだ。 今から1ヶ月前のことになる。

 あいつは、久しぶりに王都へと戻ってきた。 そして榊様の所へ行き、任務の報告をしたそうだ。

 そのあとすぐ、幸村はある場所へと向かった。」





「ある場所とは?」





「・・・オーブ保管室だ。」





「え?」





オーブ保管室。 そこは、その名の通りオーブを保管する場所。

それは、王都の城の最奥に存在する。

騎士達が入手してきたオーブはそこに入れられ、2人の番人によって守られる。

2人の番人とは、『丸井ブン太』『ジャッカル桑原』のことである。

彼らは、常にそこを守っている。





「結論から言うと、オーブは盗られていない。 2人が必死で死守したそうだ。

 だが、かなりの重症はおったという。

 盗られなかったのは、幸村の様子に違和感を感じたジャッカルが、とっさに結界を張ったのがよかったらしい。

 あいつの結界は俺が知る中で1番強いからな。 いくら幸村でも破れなかったらしい。

 丸井は増援が来るまで1人であいつと戦ったという。

 まあ、あいつの能力は『音』だからな。 空気を振動させて超音波を発生させ、敵をかく乱させることなどたやすいだろう。

 だが、相手が悪かった。 さすがにあいつだとな。 まあ、殺されなかっただけよかっただろう。

 とにかく、入手に失敗した幸村は、こう言い残して消えたそうだ。

 『お前達は過ちに気付いていない。 手遅れになる前に、なんとしてでも止めてみせる。

 ・・・これからは互いに敵通しだ・・・。』

 ・・・この言葉が何を意味するのかは分からない。 だが、これだけは確かだ。

 もう、幸村は俺達の仲間ではない・・・。」





真田の言葉が、胸にずっしりと残った。

もう、仲間ではない。 それはつまり、見つけたら殺さなくてはいけないということ。

王都を裏切った者に待つのは死、のみ。 それが絶対の掟。





「なぜ、こんなとに・・・?」





「分からん。 あいつにも何か考えがあったのだろう。

 だが、王都の掟はそれを許さない。 榊様から、命令が下ったんだ。

 『騎士、幸村精一を王都反逆の罪で処刑しろ。』と。

 この任務を直接受けたのは俺達だ。 だから、俺達はあいつらを追っている。

 ・・・橘の時も、あいつは俺と同じだったのだろうか・・・?」





「橘?」





忍足が不思議そうに尋ねた。

だが、真田のその言葉に、長太郎ははっとした。





「・・・橘とは、今から6年前に王都を裏切って処刑された元3強のことだ。

 当時、あいつを追ったのは幸村だった。 あいつは俺より強かったからな。

 橘も、何を考えて王都を離反したのかは分からない。 幸村は何も語らなかった。

 ・・・幸村も、苦しかっただろうな・・・。」





そう言って、真田は黙った。 その場を、重苦しい雰囲気が流れた。





「・・・マスター!!」





流れていた重苦しい空気を破って言ったのは、赤也だった。

彼は、その場にばんと立ち、真田をまっすぐに見て、言った。





「マスター、今ここでうじうじ考えるのは止めにしましょうよ! ここで考えたって何も分かりませんし、変わりません。

 もうこうなったら直接本人に聞くしかないじゃないですか! こんなに考え込むなんて、いつものマスターらしくありません!!」





赤也のその言葉は、真田心に深く響いた。

彼は、顔を上げた。 そこにはもう、暗い影はなかった。





「そうだったな。 確かに、確かめればいいことだ。

 ありがとうな、赤也。 お前のお陰だ。」





「へへっ。 こっちこそ。 マスターが俺にお礼言ってくれるなんて珍しいや。」





「まあ、それだけお前に感謝したということだ。

 さて、長居をしすぎたな。 そろそろ行くとするか。

 忍足、長太郎。 話を聞いてくれてありがとうな。」





「いや、礼を言われるほどのことやない。 見つかるとええな。」





「ああ、探し出してみせるさ。 またどこかで会えるといいな。」





「また会えるさ。 それまで、2人共元気でやりいや。」





「気遣いありがとうな。 長太郎、主が変わって辛いこともいろいろとあるだろうががんばってやれよ。」





「はい、頑張ります。」





「じゃあ、俺達は先に失礼する。 行くぞ、赤也。」





「はーい。 じゃあな忍足さん、長太郎。 また、どこかで。」





そう言って、2人は店を出て行った。

彼らの姿が見えなくなると、忍足達も店を出て行って情報屋へと向かった-----。









【あとがき】

今年初めての更新はこれでした。

今回はゆっきーの裏切りの話がメインでしたけど、どうでしたか?

ちなみに、ブンちゃんとジャッカルも今回初登場。

本人出てきてないのにどんどん話が進んでいってるよ(汗)

この人達も早く出したいです。 もう少しすれば一気に出せるんだけどなあ。

さて、今年も更新頑張るんでよろしくお願いします!!



06.1.7



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