ったく、来るのが遅いんだよ。

それにしても多いなあ・・・。






Symphony of destiny  第四章・6





谷に向かってくる魔物の気配を察知した3人は、奥に避難する杏達と別れ村の入口へと向かった。

すると、そこには橘が言ったようにすでに神尾が待っていた。





「ずいぶん遅かったですね、マスター。

 あれ? あなた達も手伝ってくれるんですか?」





谷にふく風が強くなってきた。

神尾はその風によって乱れた髪を軽く押さえながら2人に聞いた。





「うん。 手伝うよ。 この数だとさすがに2人じゃ大変でしょ?」





「確かに、少しはきついかもしれませんね。 よろしくお願いします。

 ・・・それにしても、今回はまたやけに多いですね。」





神尾は谷の入口のほうを見ながらそう言った。

その目線の先には、谷を覆う山。 そして、そこから湧き出るように村へと向かってくる魔物の大群。

その数はざっと見ても数百匹はいるだろう。 それほどの数の魔物が4人に、谷に向かって来ていた。





「ああ。 これほどの襲撃は初めてだ。 さすがにお前達がいなかったらきつかっただろうな。

 アキラはこの場所をあまり離れて戦えないからな。」





「? 何でだ?」





「それは、この村から谷の奥まで結界を張るからだよ。 ここから先に、魔物を1匹たりとも入れるわけにはいかない。

 まあ、通り抜けようとしても俺とマスターがそれを許さないけどね。 でも、一応念のために張るんだ。

 結界を張った者は行動を制限される。 だから2人共、とにかくよろしくな。」





「分かった。 まあ、用は倒せばいいだけだからね。

 単純だね。 まかせてよ。 魔物退治は専門だからさ。」





「そう言ってくれると助かる。 さて・・・戦闘開始だ!!」





橘がそう声を張り上げると、神尾だけをその場に残し、3人は魔物の中に突っ込んでいった。

その場に残った神尾は、自分の胸の前に左手を構え、右手をばっと前に突き出した。

そして右手で円を描き、その円の中心にむかって構えていた左手とともに両手を突き出し、唱えた。





『谷に吹き荒れし風よ! 我に集え!

 集りし風よ! 覆え! この場所を! 何人たりとも通さぬ盾となれ! ディフェンルード!!』





神尾がそう唱えた瞬間、ものすごい風が吹き荒れた。

その風は渦を巻き、神尾の後ろにあった村の入口を覆った。

それは神尾の作り出すことが出来る最高の結界だった。 結界から吹き零れた風は、神尾を守るために回りを覆っていた。





「マスター、お気をつけて・・・。」





神尾は、橘達の倒し損ねた魔物を前にし、そう呟きながら腰に差してあった剣をすらっと抜いた・・・。



                                     ☆



「ちっ! 雑魚のくせに数ばっかいやがって!!」





跡部はそう悪態をつきながらも剣を振り下ろした。

彼が戦っているのは、神尾から50メートルほど離れた所だった。

大量の魔物達と戦いながら周りをちらりと見回すと、自分の右方向、30メートルほど先には千石が。

そして、前方60メートルほど先には橘が、それぞれ戦っていた。





(あいつらも相当てこずっているな。 まあ、数が数だ。

 だが、この俺様がこんなにてこずっているのは許せねえ。 とっとと片をつけてやる!)





そう思い、跡部は1度その場から数メートルほど飛びのき、魔物に向かって剣を垂直に構えた。

そして・・・。





「くらえっ!!」





跡部は1回目を閉じ、軽く息をはいた瞬間、剣を思いっきり突き出した。

その瞬間、前方にいた十数匹の魔物達が切り刻まれ地に伏した。

これのことを、跡部は『ラグリッション』と呼んでいた。

彼は、この技が一体何なのか知ってはいない。 ただ使えたから、彼は使っているだけである。





「ったく、うじゃうじゃと沸きやがって。 しつこい連中だなっ!!」





倒しても倒しても、魔物はとどまることを知らない。

それどころか、1度に襲ってくる魔物の量が増えた気がする。 と、その時!!





「アキラ!!」





いきなりそう叫ぶ橘の声。 慌てて神尾のほうを見ると、彼のほうに何十匹の魔物が!

神尾は、それを全て止めるつもりなのかその場を動こうとしない。





「!! あいつ、死ぬつもりか?!」





そう怒鳴り、跡部がその場から走り始めようとした瞬間!!





ゴォッッッ!!!





いきなりとてつもなく強い風がふき、神尾を覆った。

その風はそのまま神尾を襲おうとしていた魔物達を切り刻んだ。

その光景に驚いたのは跡部だけではなかった。

少し離れた所で戦っていた千石も、今まで勢いを失っていなかった魔物達まで、動きを止めた。





「・・・ったく、来るのが遅いんですよ。 2人共。」





神尾はそう言って、自分が今まで背を向けていたほうに顔を向けた。

そこには・・・。





「ごめんごめん。 ちょっと話が長くなっちゃたものだから。」





「ずいぶん遅刻をしっちゃったみたいだけど、とりあえず皆無事でよかった。」





そこに立っていたのは、2人の男だった。

2人共、顔に人のよさそうな笑みを浮かべていた。





「あれは一体、誰なんだ?」





千石は突然のことに驚き、魔物達と同じように動きを止めた。

そして、いきなり現れた2人を見ていた。





「へえ・・・。 彼らもいるのか。 まあいい。

 とりあえずここの魔物達を全て倒そう。 話はその後だ。」





「そうだね。 じゃあそうしようか。」





現れた2人がそう言葉を交わしていると・・・。





「おい! 2人共。 お前達はそこでアキラのサポートを頼む!!」





突然橘の声が。 2人はそれに頷くと、剣をすらりと抜いた。

と、その時千石が魔物を倒しながら2人のもとまでやってきた。





「俺も手伝います。 あの、かなりタイミング悪い時なんですが、一応名前だけ教えてもらえませんか?

 そのほうがきっと戦いやすいでしょうし。 

 あっ、俺は千石清純です。 で、あっちで戦っているのが、跡部景吾君です。」





千石は魔物を切りながらそう言った。

すると、片方が答えた。





「確かにそうだね。 じゃあ、先に名前だけ。

 僕の名前は『不二周助』。 で、こっちが『佐伯虎次郎』だよ。 よろしくね。」





不二と名乗ったほうはそう言ってにっこりと笑ったと思ったら急に真剣な顔になった。

それにつられて千石も真剣になり、再び魔物の大群の中に突っ込んでいった-----。









【あとがき】

やったあ!! 遂に出せたーーー!!

大変お待たせいたしました。 遂に不二と佐伯コンビの登場です。 ここまで長かった・・・。 

今までアンケートのほうでこの2人を!というコメントをたくさんいただいたので予定より早くの登場になりました。

まあでも、十分遅いですけどね(汗)

次はこの2人も加わっての戦いになります。

よしっ! 早く書こう!!



06.1.15



BACK ←  → NEXT
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送