お久しぶりです。

と言っても、あなたは私のことを覚えていないでしょうが・・・。






Symphony of destiny  第四章・10





情報屋から出た2人は景に乗り、ジローの言っていた町、リンドブルーに着いた。

町は噂どおりの美しい所だったが、町の人々はどことなく暗い顔をしていた。

それを疑問に思い、長太郎が聞きに行った。 それによると・・・。





「どうやら少し前から町の水量が減っているみたいです。

 その時期はオーブが砕かれた時とほぼ一緒です。 どうやらこの町が栄えていたのはオーブのおかげだったみたいですね。」





「そうやな。 そう考えると、やっぱオーブはすごいもんなんやなあ。」





そう話しながら、2人は町の中を歩く。 しかし、その日いっぱい調べたが、オーブに関する情報は得ることが出来なかった。

そのうちに辺りも暗くなってきたので、2人はとりあえず宿を取って泊まろうとした。

だが、宿に入ろうとしたその時。





「・・・誰かが、呼んどる・・・。」





突然忍足がそう言った。 その言葉に驚く長太郎。

そんな長太郎にかまわず、忍足は歩き出した。





「ちょっ! マスター?!」





「ついてきい。 来いって呼んどるんや・・・。」





そう言いながらも、どこかに向かいまっすぐに歩く忍足。

それに戸惑いながらも、長太郎はそのあとをついて言った。



                                     ☆



忍足が向かったのは、町の中心にある噴水-----ではなく、そこから少し奥ばった場所にある古びた建物だった。

その中には地下に降りるはしごがあり、2人はそこから地下へと降りて行った。

降りて行った先の地下通路は暗く、明かりとなるようなものは何もなかった。

しかし、忍足が何やら唱えると2人の周りに小さな光が出現し、2人を照らした。





「すごい。」





「光を生み出す呪文や。 魔導師とかごく少数のやつにしかできひんよ。

 さて、もっと先や。 行こか。」





「はい、マスター。」





そう返事をして、2人はさらに奥へと向かった。

・・・しばらく歩くと、何やらサラサラという音が聞こえてきた。





「・・・これは、水の音?」





「どうやらそうみたいやな。 ・・・ん? 誰かおる。」





「え?! マスターを呼んでいた人ってこの先にいるんじゃないんですか?」





「いや、俺もてっきりここにおると思ってたんやけど・・・。

 どうやら違うみたいやな。 せやけど、どうもひっかかる。 ・・・行くで、長太郎。 誰がいるか確かめるんや。」





「はい。」





そう言って、2人はさらに奥へと進んだ。 と、急に目の前が開けた。

そこに広がっていたのは、巨大な湖。 そして・・・そこには・・・。





「!! あなたは?!」





長太郎が叫ぶ。 そこにいたのは茶の髪をし、閉じているような目をした・・・。





「久しぶりだな。 長太郎。」





「蓮二さん・・・。」





そこに立っていたのは、3強といわれる幸村のパートナーで自身も3強といわれるアーティシャル、柳蓮二だった。

彼は軽くそう言うと、2人に背を向けた。





「ちょっ! 蓮二さん! あなたには聞きたいことがあるんです!」





長太郎がそう言っても、蓮二は振り返らない。

そしてそのまま歩いていき・・・水の上に足を置いた。





「「!!」」





普通だったら水の上に立ったら沈むものだ。

だが、彼は違った。 彼は水の上に立ち、そして歩いたのだ。 その光景に、2人は息を呑んだ。





「こんなん、さすがに初めてみたわ・・・。」





そう呟く忍足。 当の本人の蓮二は、湖の真ん中あたりまで歩いた時、その足を止めた。

そして、2人に言った。





「お前達2人が会わなくてはいけない人達がいる。 そこまで案内しよう。

 そこには、私の主もいる。 さあ、水の上に乗ってくれ。 安心しろ。 沈みはしない。」





そう蓮二は促す。 この言葉に、さすがに最初は戸惑いはしたが、少しして忍足がその足を1歩踏み出した。





「マスター?!」





「大丈夫や。 見た所、こいつのエレメントは水。 沈みはせえへんよ。

 会わせたい人っちゅうんは本当やろ。 目を見れば分かる。 こいつが何者かはお前のほうがよく知っとる。

 本来なら信用できひん状況におかれとる奴だってことも、雰囲気で分かる。

 せやけど、今はこいつを信用してもええんとちゃうか? どんな事情があったかは、またあとで聞けばいいんや。」





「・・・そうですね。 蓮二さんは、幸村さんのパートナーなんですが。

 蓮二さん、ついていったらあなたが王都を離反した理由を聞かせてもらえますか?」





「ああ、全て話してやろう。 だから今は、俺を信用してくれ。」





その言葉に、長太郎は頷いた。 そして2人は蓮二に言われるがまま、水の上に足を踏み入れた。

水は、まるで普通の地面のようだった。

そして、蓮二は2人が自分の傍まで来ると、静かに唱えだした。





『水よ、我らを潤す清き水よ。 大地に満ちる強き水よ。

 我らを誘い、彼の地へ導け。 ウィークルード。』





そう唱え終わると、3人の周りの水が渦を巻きだした。

そしてその水は3人を包み込んだと思った瞬間、ふっと元に戻った。

水が完全に元に戻ったその場所には、もう何の人影もなかった-----。



                                        ☆



「ここは・・・?」





蓮二に連れられ、辿り着いた先にあったのは緑に覆われた森。

その中のさほど大きくない池の上に、3人は立っていた。





「ここは誰にも知られていない土地だ。 名を、『シーユ』という。

 さて、いつまでもここにいるわけにもいかないな。 こっちだ。 ついてきてくれ。」





そう言って、蓮二は歩き始めた。 その彼について行く2人。

しばらく歩くと、森の中に突然大きな館が見えてきた。

その館に向かって、蓮二はまっすぐに歩く。 そして、彼に導かれるまま、2人は館に足を踏み入れた。





「なかなかすごい内装やな。」





館に入ってすぐ、忍足はそう言った。 忍足の言ったとおり、内装はなかなかすごかった。

あるのは古そうな物がばかりだったが、それはどれも年季の入った高価そうな物ばかりだった。

入口を入った目の前に、大きな階段があった。

その階段は途中で左右に分かれているタイプのもので、手すりにも見事な彫刻が施されていた。

と、その時-----。





「お帰り蓮二。 お疲れ様、ありがとう。

 そして、長太郎。 久しぶりだね。 こうやって直接会うのは。 元気にしてたかい?」





そう言いながら現れたのは・・・。





「幸村さん!!」





階段の上から現れたのは、1ヶ月前に王都を離反した3強の1人、幸村精一。

彼は、長太郎の知っている顔で微笑んだ。

と、幸村の降りてきた上からまた人影が2つ。





「・・・こうやってあなたと会うのは、どれくらい久しぶりなんでしょう?

 今でもあなたといた最後の時のことをよく覚えていますよ。 忍足君。」





そう言ったのは、茶色い髪をして眼鏡をかけた男。

その少し後ろには、銀の髪を一房だけ伸ばしてしばっている男が何も言わずたたずんでいた。





「ちょ、ちょお待てや! 俺はお前のことを知らんで?! 一体何のことや?!」





「・・・やはり、自分の記憶を操作していましたか。 ・・・とりあえず名乗っておきましょう。 長太郎君は本当に知らないですから。

 私の名前は柳生比呂士。 そして彼は仁王雅治君です。

 自分の記憶の操作をここまでやるとは。 さすがです。

 しかし、消すことは出来ていないようですね。 自分のことを魔導師と言っているのが何よりの証拠です。

 ・・・本当はやりたくはないですが・・・あなたの記憶の封印を解かせてもらいます。

 あの時のままだったらよかったのですが、今は状況が変わりすぎてしまった。」





そう言って柳生は階段を降り、忍足の元に近づいていった。

それに警戒する長太郎。 しかし、柳生が彼のほうに手を伸ばすと、長太郎は動きを止めた。





「お前、何をした?」





「ちょっと動きを止めただけです。 封印を解くにはかなりの集中力を要しますから。」





「俺はまださせるなんて言ってへんで?」





「そんな意見を聞いている暇は残念ながらありません。

 ・・・動かないでくださいよ。 動いたら失敗する危険性がありますからね。」





そう言った瞬間、柳生は忍足の額に右手をばっと押し当てた。

手が当たったと思ったその時、2人の下に魔法陣のようなものが出現した。

そして、辺りに光が満ちた-----。









【あとがき】

今回はまたえらい話の展開が急でした(汗)

そんで、遂に柳生達が再び登場!! やっぱり正体のよくわかんない人でした。

あと、忍足にも何やら秘密があるっぽい展開に。

この話、全体的に謎のある人達ばかりです。



06.2.15



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