これは、昔々のお話-----。





Symphony of destiny  第五章・1





風の谷シルフィードの最奥にある塔、その中に千石達はいた。

周りにいるのは、谷で知り合った者達。 そして、自分の前にいるのは『語りの民』と名乗った4人。

この4人の中の中心人物であろう老人は、全員を座らせ、その口を開いた。





「さて、君達を呼んだのは話があったからなんだ。

 今から話すのは、『時』のことと昔話。 だけど、単なる昔話じゃあない。 すごく重要な昔話なんだよ。

 だから、真剣に聞いてね。」





そう前置きをして、オジイは語りだした。





「さて、皆はこの世に存在するオーブが8種類だけじゃなことはもう知っているね?

 この世にはあともう1種類、時の属性を持つオーブが存在している。

 しかし、このことを知っている者はとても少ない。 それはなぜか。

 それは、その『時』がとても危険なものだからだよ。」





「何で危険なんだ? 他のオーブはそんなことないだろ?」





「うん、他のはそこまで危険じゃない。 使える者がかなり限られているから。

 でも、『時』は違う。 確かに時の力を持つ者が使ったほうがより威力を発揮することが出来る。

 だけど、時の力を持つ者なんてほとんどいないでしょ? 『時』には特別な特徴があってね。

 それは、持った者に絶大なる力を与えるということ。 どんな属性を持っていようと関係ないんだよ。

 でも、『時』の力は強すぎる力を秘めているんだ。 あれを完全にコントロールできる者なんて存在しない。」





オジイのその言葉に、千石は息を呑んだ。 それを知ってかしらずか、オジイは話を先に進めた。





「さて、『時』のことについては大雑把に説明したからそろそろ昔話をしようか。

 ・・・時は遡って今から500年前。

 当時、世界を支配する者は存在していなく、人々は平和に暮らしていた。

 その時は世界の1ヶ所にオーブがあり、その力のお陰で人々は魔物の脅威に怯えることはなかった。

 そんな世界に、『魔導士』と人々から呼ばれる3人の若者と、『時の監視者』と呼ばれる若者がいた。

 彼らはオーブの番をし、世界の安定を守っていた。

 オーブは、それだけ強い力を秘めているんだよ。 そうだ、細かい説明もしなきゃね。

 『魔導士』とは、1つの属性だけでなく全ての属性を使うことが出来る者のこと。

 まあ、彼らにも1番得意とする属性はあるけどね。 とにかく彼らは何でもでき、人々の信頼を一身に集めていた。

 『時の監視者』とは、その当時唯一時のエレメントを持っていた者のこと。

 彼は時空の移動だけでなく時の停止や、時空をたくみに使った攻撃なども出来たそうだよ。

 そんな彼は、時のオーブの恐ろしさを1番分かっていたみたいだね。

 とにかく、彼はいつも『時』の監視をしていた。 だから、人々にそう呼ばれるようになった。」





ここまで話して、オジイは1回言葉を切った。

そして再び話し出した。





「だけど、そんな平和な世界にある時事件が起きた。

 決して触れてはいけないオーブが、『時』だけ盗まれたんだ。

 盗んだのは、世界でも指折りの力を持っていた者。 彼は元々、そんなことをするような者ではなかった。

 彼をそんな行動に走らせたのは・・・時のオーブ。」





オジイのその言葉は衝撃的だった。

これに驚いたのは、千石達だけではなかった。 橘も不二も、初めて聞いたのか、かなり驚いていた。





「そ、そんなことが可能なのか?」





戸惑いながらオジイにそう尋ねる橘。 その言葉に、オジイは頷いた。





「可能だよ。 時のオーブには、感情があったんだ。 他のオーブにはないね。

 その感情は、人間でいう負の感情。 恨み、怒り、哀しみに憎しみ。 そんな感情を、『時』は持っていた。

 時の監視者である彼はそれを知っていたんだ。 だから、常に見張っていた。

 だけど、その時はほんの少しだけその場を離れたんだ。 それが命取りになった。

 彼らの心を操り、監視の目から逃れた『時』は、あることをしようとしていた。

 ・・・それは、世界の破壊。 『時』は世界を破壊することを望んでいた。

 だから彼の心を操り、自由を手にしたんだ。 監視者達の元じゃあ絶対に自由は手に入らないからね。

 自由を手にした『時』は、その者の体を乗っ取った。

 そして、宣戦布告をしたんだ。 魔導士と、監視者にね。」





オジイの話に息を呑む千石達。





「彼らは『時』を止め、世界の破滅を防ぐために戦うことを決めた。

 だけど、そこで1つの問題が発生したんだ。

 『時』を止めるには、それ以上の力で封じる必要がある。

 魔導士の3人の力を合わせれば、かろうじて上回ることは出来た。

 そして、封印する力は、他のオーブを使えば問題はない。

 しかし、封印するための器も欲しかったんだ。 それがないと、『時』の力を抑えることが出来なかった。」





「何でだ? 別に器がなくても暴走さえ止めればいいんじゃないのか?」





跡部が尋ねると、オジイは首を振った。





「それだけじゃだめだったんだ。 止めても、また再び暴走する危険がある。

 次に暴走したら、もしかしたら止められないかもしれない。

 それを防ぐためにも、器は必要だったんだ。

 だけど、この問題もすぐに解決することが出来た。

 監視者である彼が、器となって『時』を封じると言ったんだ。 時のエレメントを持つ自分ならなんとか出来ると。」





オジイは一呼吸つく。





「そして、遂に戦いが始まった。

 世界が滅ぶか、『時』の野望が打ち砕かれるかのね。

 戦いは苛烈を極めた。 しかし、だんだん『時』がのっとっていた者の体が疲弊し始めたんだ。

 世界でも指折りといわれていても、さすがに『時』の力に耐えれるだけの体は持っていなかったんだね。

 そこを、4人は見逃さなかった。

 3人の魔導士は持てる力を全て使い、『時』の動きを止めた。

 そして、監視者である彼の中に押し込んだんだ。

 『時』を自らの体に入れた彼は、他のオーブの力を使い、自分もろともそれを封じた。 こうして世界は破壊を免れたんだ。

 ・・・さて、これで長かった昔話は終わり。」





その言葉で、オジイの長い話は終わった。

話を聞き終わった彼らはうーんと背伸びをした。 と、千石がオジイに尋ねた。





「昔のことは分かったよ。 で、ひとつ聞きたいことがあるんだ。

 これが真実なら、今王都がやっていることはかなり危険なことになるんだよね?」





その質問はもっともだった。

全員は、再びオジイの顔を見た。





「うん、かなり危ない。 『時』を封じる時に、他のオーブを使ったって言ったよね?

 その逆の、封印を解くためにも他のオーブは必要なんだ。

 オーブを全て集めれば、『時』の封印を解くことが出来る。 だけど、それは同時に世界の破滅を意味するんだ。

 今の指導者が何を考えているのかは分からない。 けど、オーブだけは揃えてはいけないんだ。」





その言葉に、千石は黙った。

しかし、少ししてまた口を開いた。





「・・・じゃあ、今俺がしていることはいけないことなの?」





「一概には言えないが、危険なことだ。 出来ればこれから、オーブは集めないようにしてもらいたい。

 もし集めても、指導者にだけは絶対に渡さないで。」





オジイのその言葉に、千石はうんと頷いた。

塔の周りを、穏やかな風が吹いていた-----。









【あとがき】

久しぶりに更新です。 そして、やっと第五章に入りました! やったーvv

なんか1話目なのにかなり濃い内容になってしまいました。

いきなり話が500年も前にトリップしてたり(汗) 

でも、この話は後々の重要な複線になります。 あー、書きたいことはたくさんあるのにい〜。

時間がかなりないこの頃です。



06.3.12



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