知らなかった。 本当にこんなことが・・・。
Symphony of destiny 第五章・2
-----お前の知らない、過去の歴史と共に話してやろう。
榊は2人に向かってそう言った。
そして自分の前に座らせると、話し出した。
「まず・・・そうだな。 あの書物のことから話してやろう。
あれが書かれたのは、今から400年以上前。 だが、詳しいことは分かってはいない。
ただ、あれを書いたのが魔導士で、青と赤の2冊が存在することは分かっている。
で、今回お前達に捜索させたのは赤のほうだ。
青は現在私が所有している。」
「そうだったんですか。 ですが、なぜ今まで隠していたんです?
あと、それには一体何が記されているんですか?」
「隠していたのは、これがかなり重要な物だからだ。 決して出回ってはならない。
記されていることは・・・説明するのが面倒だな。 直接読んでみろ。」
そう言って、榊は机の引き出しから1冊の本を取り出した。
確かにそれは青い本だった。 しかし、不思議なことがあった。
「これがそうですか。 ・・・ところで、400年以上も前のものなのにかなり綺麗ですね。
ページも何も汚れていない。」
「その本には特殊な力が施されているんだ。 いつまで経っても読めるようにするためだろう。
表紙をよく見てみろ。 細かい模様が刻まれているだろう?
それがこの本を守っているんだ。」
榊にそう言われ、手塚は表紙に目を落とした。
すると、確かに細かい模様が刻まれていた。 それは、どこか魔法陣を連想させた。
「本当だ。 では、見させていただきます。」
そう言って、手塚は本のページを捲った。
表紙を捲って1番最初に目に入ってきたのは、数行の言葉。
『-----この書を読む全ての者へこの言葉を。
世界は脆く、そして儚い。 しかしそれでも強く、美しい。
世界を守るは、8つの力。 破壊をもたらすのは、1つの力。
使い方を誤るな。 さすれば世界は滅ぶであろう-----。』
この書き出しで、始まっていた。
リョーマも、手塚の横から本を覗いていた。 彼は、さらにページを捲った・・・。
☆
「マスター!!」
動かない体で、長太郎が叫ぶ。
その時、すでに忍足の姿は光に呑まれて見えなくなってしまっていた。
必死になって体を動かそうとするが、動かない。 焦りと不安に駆られていると、すっと肩に手を置かれた。
「幸村さん?」
手を置いたのは、幸村だった。 彼は微笑み、長太郎を安心させるように言った。
「大丈夫だよ。 彼を、柳生を信用してあげて。」
「・・・はい。」
長太郎はまだ不安そうだったが、そう小さな声で言った。
幸村はもう1度微笑み、光に覆われた場所を見つめた・・・。
☆
「!!!」
柳生が自分の額に手を当てた瞬間、辺りを光が覆った。
周りにあったものは全て光に遮られて見えなくなり、柳生しか見えなくなった。
「少しの間我慢しててくださいよ。」
そう言って、柳生が何か唱え始める。 その言葉を聞いた瞬間、忍足の中の何かが音を立てて外れた。
「うわあああ!!!」
口から叫び声があふれ出す。 何かが自分の頭の中に流れ込んでくる。
それが何かを考えることも出来ないくらい、圧倒的情報量が次から次へと入ってきた。
やめてくれ! もうやめてくれ!!
心の中で必死にそう叫ぶ。 しかし、それでも情報が入ってくる。
その情報量に意識を失いそうになった時、急に柳生の唱える呪文がゆっくりになった。
それと同時に入ってくるのも少なくなった。 と、ふと気付いた。
・・・ああ、これは何かが入ってくるんじゃない。 甦ってくるんだ。
と。 そして柳生が唱え終わる最後の瞬間、ようやく思い出した。
自分の正体と、生きているその存在理由を。
・・・辺りを覆っていた光が、だんだんと薄くなっていった-----。
☆
・・・本に魅入られたかのように、手塚はページを捲る。
リョーマも、そのスピードに合わせて目を走らせていた。
・・・たっぷり30分は経ったかと思われた時、ようやく手塚が本から目を上げた。
その手元には、最後のページが開かれたままの本がある。
「読み終わったようだな。 これで分かっただろう。 過去の歴史が。」
「はい。 ですが、これに書かれているのは『時』を封印したという所まででした。
『時』のことについての詳細はほとんどなしに等しかったですよ。」
「ああ、その通りだ。 その書物にはそこまでしか書かれていない。
続きはもう1冊の赤の書物のほうに記されている。 私は、詳細を知るべくお前達に書物を探させてのだ。」
「そうだったんですか。 ひとつ尋ねたいのですが、これには『時』は危険なものだと書かれていました。
その封印を解かないためにも、オーブは集めるなと。
ですが、あなたはオーブを集めろと言う。 なぜ集めさせるのですか?」
「全てのオーブがどこにあるか分からない状態だと、世界の危機に気付くことも出来ないだろう?
だが、全て目の届く所にあれば世界を危機にさらすこともない。
そう考えたからこそ、私はお前達に集めることを命じたのだ。 分かったか?」
そう榊が言うと、手塚は頷いた。
「そういうことだったんですか。 分かりました。」
「分かったのならいい。 そうだ、1つ言っておこう。
我々のやっていることは世界を守るのに必要なことだ。 争いを防ぎ、平和に保つために。
しかし、それを快く思わぬ者もいるだろう。 あまつさえ、自分が『時』の力を使ってやろうと思う者さえいるかもしれない。
その者達は、我ら王都に仇名す者だ。 世界を破滅に導く者だ。
そのような者を見つけた場合、それがどんな者であっても必ず止めろ。
場合によっては殺してもかまわない。 とにかく、必ず止めろ。」
榊は、力強くそう言った。 それに、手塚は頷いた。
「必ず、おっしゃる通りにします。」
と。 その言葉に満足したのか、榊は話し始めた。
「では、お前達に赤の書物の情報を与えよう。 これは桃城達が入手してきてくれたものだ。
赤の書物は現在、黒く短い髪をした男が持っているそうだ。
その正体などは一切不明。 顔すらもほとんど見えなかったという。
しかし、日吉がその書物の中身を垣間見てな。 こんなことが書いてあったそうだ。
『全てのオーブは、しかるべき場所にある』と。
これから考えるに、オーブはそれぞれの属性に最も近い場所にあるだろう。
だが、ひとつ問題があってな。 いくつか分からない物があるんだ。」
「・・・だったら、いい方法がありますよ。」
そう突然声がし、部屋の扉が開けられた。
そこに立っていたのは、にまにまとした笑みを顔に浮かべた判田だった-----。
【あとがき】
最近めっきり更新の数が減ってしまって辛いです。
さて、今回は榊さん達の話でした。 遂に手塚達も500年前のことを知りました。
で、もうかなり前に登場した書物のことが出てきました。 実は2冊セットだったことが発覚。
で、話には出てこなかったですが、書いた人のこともじきに分かりますよー。
ってか、早く書かなきゃ。
06.3.23
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