あの人は一体何を考えているのだろう・・・?





Symphony of destiny  第五章・3





オジイが話し終わった時、千石は沈痛な面持ちをしていた。 それもそうだろう。

今まで自分がしていたことが、どれだけ危険なことか知ったのだから。

そんな千石を見かねて、不二が声をかけた。





「そんな落ち込まなくてもいいんじゃない?

 まだ取り返しがつかなくなったわけじゃないんだから。」





「だけどさ、俺はこのオーブを手に入れるために守っていた者まで殺したんだよ?

 今ならわかるよ。 竜の言っていたあの言葉が。」





そう言った時、オジイがその言葉に反応した。





「竜? 竜って一体どこにいたんだい?」





「リンドブルーです。 あそこに水のオーブを守っていた竜がいたんです。

 俺は、これを手に入れるためにあの竜を殺してしまった。」





「そうか、あそこの竜が死んだのか・・・。」





そう言ってオジイは、窓から空を見上げた。

そして、再び千石に向き直ると口を開いた。





「君は竜を殺したと言ったけど、そんなに悔やむことはないよ。」





「え?」





以外なその言葉に、千石は驚いた。 それは一緒にいた跡部も同じだった。





「あそこの竜は、もう寿命だったんだ。 いつ死んでもおかしくない。

 彼は、自分の使命は全うしなくてはならないという使命感に囚われていた。

 生きたいけれど生きれない。 そんな状況の時に君が現れたんだろうね。

 本当だったら、あの竜は今の君じゃあ相手にならないほど強いんだ。

 あの竜は自分の使命を、君に殺されるということで全うしたんだ。 だから、そんなに悔やむことはないよ。」





そうオジイは言って口を閉ざした。

その言葉に、千石は少しだが救われた気がした。

と、その時。





「あ!」





いきなり神尾が声を上げた。





「どうした? アキラ。」





「何者かがこの谷に入りました。 1人ですが、たぶん騎士か討伐隊でしょう。

 今、村に向かって進んできています。」





その言葉に、跡部が不思議そうな顔をした。





「何でそんなことが分かるんだ?」





「それは、彼がこの谷全体に結界を張っているからだよ。

 この谷に入った者は、全てアキラ君に気付かれる。 まあ、例外もあるみたいだけど。」





「そうだったのか。」





ふーんと、跡部は納得する。 と、橘が。





「千石、跡部。 村に戻るぞ。 こここを他の者に知られると少々マズイのでな。

 俺の存在も知られるとマズイんだが。 ・・・まあ、とりあえず戻るぞ。」





「分かりました。 じゃあ跡部君、この際ここの谷から出ようか。

 このままずっといてもしょうがないから。」





「ああいいぜ。」





跡部がそう言うと、千石は頷いた。 と、今度は不二達が声をかけてきた。





「じゃあ、僕達とはここでお別れだね。」





「お前達は戻らないのか?」





「うん。 僕達はここに残るから。 でも、また会えるよ。

 なんか、そんな気がするんだ。」





「俺もそんな気がするよ。 それまで、元気でね。」





「うん。 また、ね。」





「じゃあな。」





そう言って千石達は2人に別れの言葉を告げた。 と、今度はオジイが声をかけた。





「2人共、自分の道を失わないでね。 また、どこかで。」





「はい。」





「おい、そろそろ行くぞ。」





千石がそう答えた時、橘がそう声をかけた。 その言葉に頷き、2人は橘達に近づいて行く。

そして、2人が来ると神尾は唱えた。





『我らを元の場所へ! リタード!』





その瞬間、その場に強い風が吹いた。

その風が消えた時、そこには誰もいなかった・・・。



                                        ☆



『いい方法がありますよ。』





そう言いながら、判田が部屋の中に入ってきた。

手塚達3人は彼のほうに顔を向けた。





「いい方法ってなんですか?」





手塚がそう尋ねる。 それに、部屋の中にあった椅子に座りながら判田は答えた。





「ここからかなり離れた所に、シルフィードという谷があります。

 そこに語りの民と呼ばれる者達がいるそうです。 彼らはこの世界のことを記録している者だと聞いています。

 もしかしたらオーブがどこにあるか、知っているかもしれません。」





その言葉に、榊が頷いた。





「確かに知っているかもな。

 手塚に越前。 すぐにそこに向かえ。 そしてオーブの在処について情報を入手して来い。」





「分かりました。」





そう言って、手塚は頭を下げた。





この後、2人はこの場を立ち去り、リョーマの力を使ってシルフィードへと向かった。



                                       ☆



「今日お前達が知った事実は話してもいいが、俺達の存在については誰にも言わないでくれ。」





村に着き、2人がそこを立ち去ろうとした時、橘がそう言った。





「知っている通り、俺達はもうこの世に存在していないはずの者だ。

 今、生きていると分かれば王都はまた刺客を差し向けてくるだろう。

 そうなった場合、この谷に多大な迷惑をかけてしまう。 それだけは何としても避けなければならないんだ。

 だからお願いだ。 本当に誰にも言わないでくれ。」





そう言って、橘は頭を下げた。





「あ、頭を上げてください! 大丈夫です。

 俺達は絶対に言いません。 ね! 跡部君も言わないよね?」





「ああ。 安心しろ。 言わねーから。」





2人がそう言うと、橘は頭を上げた。

その顔には、安堵したような表情を浮かべていた。





「本当にありがとうな。 助かる。

 ・・・! そろそろ行け。 もう少しで村に入ってしまう。」





「分かった。 こっちこそありがと。 またどこかで会えるといいね。」





「ああ、そうだな。 また会おう。」





そう言葉を掛け合って、互いは分かれた。

だが2人は、いや4人はまだ知らない。 この出会いと別れが、後に悲劇を起こすなど・・・。



                                     ☆



「あれは・・・?」





谷に向かう道を歩いていた人物は、自分のほうに向かってくる2つの人影を見つけた。

その片方のほうは、なにやら自分に向かって手を振っているように見えた。





「あれは・・・千石?!」





「あっ、向こうも気付いたみたいだ。

 あの格好は見たことがあるなー。 おっ! 討伐隊の柳沢じゃん!」





3人は、村の手前で互いに顔を見合わせた。





「やっ! 久しぶりだね、柳沢。」





「まったく変わってないだーね。 元気にしてたみたいだーね。

 おっ、ついにパートナーが見つかったのか?」





「うーん、まあそんなもんかな。」





千石は説明が面倒になったのだろう。 そう言って言葉を濁した。

それを深く追求せず、柳沢は千石に向かって言った。





「そうそう、伝言というか命令だーね。

 すぐに王都に戻って来いだと。 榊様が呼んでただーね。」





「マジで? 分かった。 すぐに戻るよ。 わざわざありがとね。」





「別にいいだーね。 じゃあ、俺はもう行くだーね。 じゃあまたな。」





「うん、ありがとー。」





千石がそう言うと、柳沢は軽く手を振りすぐにその場から消え去った。

そこには、千石と跡部の2人が残された。





「・・・王都から呼び出しか。 行きたくないなあ。」





「でも行かなきゃならねーんだろ。 まあ、大丈夫だろ。」





「そうだといいけど。 まあ、とにかく行こうか。」





「ああ。」





そう声を掛け合うと、2人はその場から消え去った。

後には、穏やかな風が吹く谷だけがあった-----。









【あとがき】

なんか今回あんま進んでないのにやたら長くなってしまった(汗)

さて、今回で平和(?)っぽい内容は終わりです。

次かその次くらいから一気に話が展開していきます。

どうなるかは、またしばらくお待ちください。



06.4.1



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