あなたの正体がどんなのでも、俺はついていきます。

あなたは俺にとって、とても大切な人なのだから・・・。






Symphony of destiny  第五章・4





「・・・どうですか? 戻りましたか?」





光の消えた部屋の中で、柳生は忍足にそう問う。





「ああ、しっかり戻っとる。 ・・・ホントは、戻りたくなかったんやけどな・・・。」





「すいません。 でも、状況が状況なんです。 今までだったら大丈夫だったんですけど・・・。

 あなたの力もどうしても必要なんです。 協力していただけますよね?」





「当たり前や。 俺達は仲間やからな。

 これから先、また長い戦いになるやろうけどよろしくな。」





「はい、お願いします。」





そう言いあって、2人は互いの手を握り締めた。



                                       ☆



「マスター!」





部屋に満ちていた光が消え、体が動くようになった瞬間、長太郎は忍足の所に向かって走った。

柳生は、長太郎に道をあけるようにすっとその場をどいた。

忍足はさっきと同じ場所に立っていたが、その身に纏う雰囲気は明らかに違っていた。

それに長太郎は少しばかり戸惑いながらも、声をかけた。





「マスター、無事でよかったです。」





「ああ、心配かけさせてすまへんな。」





「本当によかったです。

 ・・・マスター、一体何があったんですか? あの光の中で。」





そう尋ねると、忍足は少し寂しそうな笑みを浮かべた。





「・・・今から言うことは、全部本当のことやからな。

 でも、ひとつ聞きたいことがある。 この話を聞いたら、自分のこれからの人生は変わってまうやろう。

 それでもええか? ええなら話してやるさかい。」





忍足のその言葉に一瞬戸惑った長太郎だが、すぐに答えた。

その言葉には、迷いなど一切なかった。





「それでもいいです。 俺はあなたについて行くと決めたんです。 例え何があろうとも。

 俺の人生は、マスターと共にいることで成り立っているんです。 だから、いいです。」





その言葉に、忍足は安堵の表情を漏らした。

実際に、彼は内心かなりほっとしたのだ。 この長太郎が、自分と一緒にいることを望んでくれたのに。

そして忍足は、話し始めた・・・。



                                         ☆



「ホントに気が思いなあ・・・。」





溜め息をつきながら千石は歩く。 その横には、疲れた顔をした跡部が。

どうやらここに来るまでに同じ言葉を相当聞かされていたのだろう。





「いい加減諦めろ! ここまで来たらしょーがねーだろーが。」





ウンザリした声で跡部がそう答える。 そう言われても、千石はまだうじうじとしていた。

と、そうこうしているうちに2人は王都の中心街までやって来ていた。

ここまでやて来た時、千石は進む足を止め跡部に言った。





「跡部君、俺は今から城に行くから君はここに残っていて。」





「何でだ?」





「いろいろと面倒臭いんだよ。 説明したりするのが。

 あと、俺の勘が言っているんだ。 君はここから先には行っちゃいけないって。」





「何だそりゃ? まあいい。 お前がそう言うのなら残っていてやる。 とっとと行って来い。」





「うん。 じゃあ行って来るね〜。」





そう言葉を交わすと、千石は城に向かって再び歩き始めた・・・。



                                         ☆



手塚の家の地下にある魔法陣からリョーマの力を使い、2人はシルフィードへ来ていた。

谷の入口についた彼らは、そのまま進み村の入口までやってきた。





「マスター、ここからどうします?」





リョーマがそう尋ねる。 確かにその通りだった。

語りの民の所に行けと言われたまではよかったのだが、場所などの情報は一切ない。

とりあえず、どこにいるかを突き止める必要があった。





「とりあえず聞き込みをしよう。 少しでも情報を集めなければ。」





「了解、マスター。」





そう言って、2人は村の中に足を踏み入れた。



                                         ☆



「・・・マズイな。」





そう呟くのは橘。 その傍には神尾と杏、そして亮もいた。

全員、かなり深刻そうな顔をしていた。





「まさか昨日に続いて騎士が来るとは・・・。

 しかも今度は3強の手塚だ。 彼は間違いなく俺達の敵だろう。」





そう呻く橘。 その言葉に疑問を抱いたのか、亮が口を開いた。





「・・・敵ってどういうことです?」





「俺達で言う『敵』とは、オーブを集めるのが正しいと思っている者達のことを指すんだ。

 それは大体王都の騎士のことを指すんだが・・・。

 王都の騎士達は、支配者榊の命でそれぞれ動いている。 そして、彼の命令の一貫した所はオーブに関する任務ばかりだということだ。

 榊は、理由は知らないがオーブを全て集めようとしている。 それがどんなに危険なことか、お前も十分に知っているだろう?

 だから、敵なんだ。 世界を守るためには、オーブは集めないほうがいいのに・・・。」





「でも、昨日来た千石達には話してたよね?」





「ああ。 あいつは騎士だが、このことを分かってもらえるような気がしたんだ。

 現に、俺だってこのことを知ったから王都を離反したんだ。」





「そうだったんだ。」





そう言うと、亮は再び口を閉ざした。 と、今度は神尾が口を開いた。





「マスター、彼らのことはどうしましょう? あの2人はどうやら語りの民を探しに来たみたいです。

 でも、追い返そうにも俺達は出ていけなせんよね・・・?」





「ああ、今あいつらに俺達の存在がばれたら大変なことになる。

 だが、このまま放置するわけにもいかんし・・・どうすれば・・・?」





そう考えていた時、部屋の中にいきなり1つの気配が現れた。





「連れてくればいいね。」





「樹?!」





現れたのは語りの民の1人である樹だった。





「村にまた騎士の気配がするなあって思ったらオジイがいきなり『呼んでおいで』って言うんだ。

 どうやら何か話しがしたいみたいだったね。」





「そうか・・・。 だが、心配だな。」





そう洩らす橘。 それに、樹が不安を少しでも消すように答えた。





「大丈夫だね。 向こうには不二と佐伯もいるから。

 万が一戦いになっても2人なら俺達を逃がすくらいのことはしてくれると思うよ。」





樹がそう言っても橘は不安そうだったが、亮が言った。





「分かった。 じゃあ2人の案内役は俺がするよ。

 だから樹は先に戻って待ってて。 なるべく早く連れて行くから。」





「うん。 じゃあ、よろしく頼む。」





そう言って、樹は再びその場から消えた。

そして亮は、橘にきっと大丈夫だからと言って部屋を出て行った。





「本当に何もなければいいが・・・。」





亮と樹のいなくなった部屋で、橘はそう呟く。

その彼の顔を、神尾と杏が心配そうに見守っていた・・・。









【あとがき】

何かいろいろぶっとんできてしまっています。 特に忍足のこととか。

ここら辺のことはもう少しあとで明らかにしていく予定です。

最近更新回数がかなり減っているので、どこまで書いたかよく分からなくなることがしばしば。

これはヤバイなあと思っていたり。



06.4.16



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