早速ですが、すぐに動かなくてはいけません。

事態はかなり切羽詰ってます。

このままだと手遅れになってしまいます・・・。






Symphony of destiny  第五章・6





「まさか・・・そんなことが・・・。」





長太郎はそう呟く。

その傍らには、様々な感情の混ざった顔で彼を見つめる忍足の姿。

そしてその少し後ろには、心配そうな顔をして立つ柳生と仁王の姿があった。

呟いて黙りこくる長太郎。

その沈黙に耐え切れなくなったのか、忍足が口を開いた。





「・・・なあ、長太郎。 聞いて後悔しとるんか?」





その言葉に、その場の空気はさらに重くなる。

そして、少しの間をあけて長太郎は口を開いた。





「・・・いえ。 後悔はしていません。 むしろ、聞いてよかったと思っています。

 ただ、事実の重さに驚いているんです。 ここまで重い話だとは、予想してなかったですから。」





長太郎のその言葉に、忍足は安堵した。

もし後悔して、自分は着いていかないと言ったらどうしようと、彼はずっと思っていたのだった。





「そうか・・・。 ならよかった。 俺もほっとしたわ。

 ・・・もう1度確認させてくれ。 俺についてきてくれるか?」





忍足がそう言うと、長太郎はにっこりと笑い、言った。





「はい、マスター。 俺はあなたについていきます。」





その言葉を聞いて、忍足もやっと笑みをこぼした。

と、その様子を見た柳生が声をかけてきた。





「忍足君、よかったですね。 そして、長太郎君。 これから、よろしくお願いします。」





「はい、こっちこそお願いします。」





長太郎がそう言うと、柳生はにこっと笑みを返した。

だが、すぐにその笑みを消し去って、今度は真面目な顔をして言った。





「仲間も増えてもっとよろこびたい所なのですが、時間がありません。

 すぐに動かなくては・・・。 先ほど情報が入りました。

 千石君と跡部君が王都に入ったそうです。 呼ばれた要件は、きっとオーブのことでしょう。

 榊は、彼らからオーブを奪い取ろうとしているはずです。

 でもそれだけならいいのですが、きっとそれだけでは終わらないでしょう。

 『あれ』にも危険が及ぶ可能性があります。 それだけはなんとしても避けなくては・・・。

 あと、『レイダーツ』にも人が向かったみたいです。 このままでは、かなりの数のオーブを奪われていまう。

 すぐに手を打たなくては。

 まず、王都には私達が向かいます。 レイダーツへは、忍足君達が向かってください。」





「分かった。 レイダーツの地形は変わっとらんな?」





「ええ。 たぶん変わってはいません。

 長太郎君はちゃんと守ってあげてくださいね。 生身ではかなり厳しいでしょうから。」





「そんなの分かっとる。 幸村達は?」





「僕達はここに残るよ。 もう少ししたらまたここに人が来るから。」





「・・・ああ、あいつか。 あいつに会うのも久しぶりやなあ・・・。

 よし、分かった。 早速向かう。」





そう言って4人に背を向ける忍足。 それを慌てて追う長太郎。

と、急に忍足が振り返った。





「そうや、幸村。 ここに俺の愛馬の景こさせるから休ませてやってくれんか?」





「分かった。 景って、『リシーヌ』の所にいた子だよね?」





「そうや。 大切にしたってな。」





そう言うと、今度は長太郎が口を開いた。





「あれ、マスター。 景で行くんじゃないんですか?」





「今回は景でいかへんよ。 あそこは遠すぎるからな。

 それに、柳生のおかげで戻った力もある。 リハビリも兼ねてそれを使うんや。 それ使えばあっちゅーまや。

 おっと、急がなあかんかったな。 じゃ、またあとでな。」





「ええ。 あなた達も十分に気をつけて。」





「ああ。」





そう言うと、2人は外に出て行った。 するとすぐにその気配は消えうせた。

それを確認すると、今度は柳生達が。





「それでは仁王君、行きましょうか。」





「ああ。 で、段取りは決めとるんじゃろうな?」





「ええ、大体は。 とりあえず着いたらあなたは城の地下牢へ向かってください。

 そこに私達の力になってくれる人が囚われているはずです。」





「分かったぜよ。」





「そしたらあとは私が色々指示しますから。

 ちゃんと聞いてくださいね。 多分、彼も誰か人をよこしてくれるはずです。

 とにかく、なんとしてでも千石君達は救い出します。 いいですね?」





「ああ。 よし、じゃあ行くか!」





「ええ。 ・・・じゃあ、幸村君。 ここを頼みます。」





「大丈夫だよ。 じゃあ、いってらっしゃい。」





そう言い、幸村は手を振った。 それを見ながら、柳生は何か小声で唱えた。

すると2人の足元に魔法陣が出現し、光が2人を覆った。

一瞬のうちに光は消え、そこにはもう誰もいなかった・・・。



                                       ☆



「はあ、気が重い・・・。」





そう呟きながら千石は歩く。

彼はもうすでに城の前に来ていた。 そこには、数人の兵士が。

しかし千石の姿を見ると、敬礼をして固く閉まっていた門を開けてくれた。

そして、彼はさらに歩く。 と、その時。





「あれ? 千石さんじゃないすか。

 珍しいですね。 王都に戻って来るなんて。」





そう言って、声をかけてきた人物がいた。





「あ、久しぶり〜。 元気にしてた? 海堂君。」





そう、声をかけてきたのは乾の助手として働いている海堂だった。

彼は、両手に大量の資料を起用にかかえながら千石のもとにやってきた。





「ええ。 乾さんの世話で大変ですけどね。

 ところで今日は何の用で来たんですか? ここまでわざわざ来たってことはかなり重要な呼び出しでも?」





「そうなんだ。 ちょっと榊様から呼び出されてね。

 気が重いけど行かなきゃいけないからね。 じゃあ、そろそろ行くよ。」





「はい。 引き止めてすいませんでした。

 そうだ。 あとで少し時間があったらお茶でもしていきませんか?

 乾さんもたまには息抜きで誰かと話すのもいいでしょうし。」





「そうだね。 それもいい。 じゃあ、あとでそっちの研究室行くよ。」





「はい。 待ってますね。」





「うん。 じゃあ、またあとでねー。」





そう言葉を交わして、2人は別れた。

しかし、この約束が交わされることはなかった・・・。



                                        ☆



コンコン





榊の部屋の扉を軽くノックする千石。

その顔は少し緊張しているかのように、強張っていた。





「入れ。」





中からそう声が聞こえた。





「失礼します。」





そう言って部屋に入る。

部屋の中は、かすかに暗い。 どうやら、さっきよりも天気が悪くなったみたいだと、千石は思う。





(さっきはもう少し明るかったのに。 こりゃあ一雨くるな。)





そう思っていると、椅子に座って自分に背を向けていた榊がこちらを向いた。





「急に呼び出して悪かったな。」





「いえ。 で、用件は一体何ですか?」





千石がそう言った時、榊の目が鋭く光ったような気がした。





「長くお前が持っているものがあるだろう?

 ・・・オーブを、渡してもらおうか。」





榊がそう言った瞬間、千石の背に嫌な汗が流れた。

その場で固まる千石。 その様子を、榊は鋭い目で見つめ続けていた-----。









【あとがき】

なんか予想外に海堂が登場。

よーく考えたら彼、番外編でしか出てなかった(汗) ごめんね!

決して嫌いなわけじゃないよ!

この偏ったキャラ構成、もう少しなんとかすればよかったかなあ(汗)



06.5.17



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