そういやあ、誰がいるか聞いてなかったな。

力になってくれるっちゅーことは、顔見知りかなんかか?

まあいい。 とにかく行けば分かるか。






Symphony of destiny  第五章・7





「よっと。」





そう言って仁王はすとんと着地した。

彼がいるのは暗く、寒い石に囲まれた空間。 そう、ここは王都の城の地下にある牢獄だった。





王都に着いた仁王はすぐに柳生と別れ、城に向かってきた。

しかし、そこは王都の中心である所。 正面には兵士が何人もいて、関係者以外はうかつに近寄ることも出来ない。

なので彼は城の横の人目の無い所から、3メートル以上はあろうかという柵を飛び越えて、中に侵入した。

そしてそこから見つからないように動き、少ししてから地下の牢獄に通じる、明り取り用の格子を見つけたのだった。

見つけるとすぐに彼はそれをはずし、そこから中に忍び込んだ。

牢獄の中は以外に狭く、ここに閉じ込められているはずの者達の声は何も聞こえない。

兵士に見つからないように、彼は中を歩き、目的の人物を探す。

と、牢の1番奥まで来た時、人の気配に気がついた。





(誰かおるな・・・。)





そう思いながら、ゆっくりと進んで行く。

そして辺りの様子を伺い、誰もいないのを確認すると牢の中を覗き込んだ。

するとそこには・・・。





「亜久津・・・!!」





牢の中を見た仁王は驚きの声を上げる。

そこにいたのは、石壁に両手を拘束された白い髪の男。

その眼光は鋭く、それだけで人を射殺してしまいそうな強さを放っていた。





「お前・・・仁王か?! 何でこんな所にいる?!」





「それはこっちのセリフじゃ! まさか捕まっとるんがお前なんてな。

 とにかく今自由にしてやるぜよ。」





そう言って仁王は扉を閉ざしている重く、大きな鍵に左手を当て、ふんっと軽く力をこめた。

すると、一瞬光が小さく瞬き、がしゃんと音をたてて鍵が壊れた。

それをはずし、仁王は中に入った。 そして、亜久津の両手を拘束していた鎖を同じように壊した。





「これでいい。 亜久津、なんでお前こんな所にいたんじゃ?

 それに、お前のパートナーのあのちっこいのはどうした?」





そう仁王が尋ねると、鎖によって赤くなってしまった手首をさすりながら彼は答えた。





「榊の野郎にはめられたんだ。 太一はあいつの所に連れてかれた。

 榊は太一の力が欲しかったんだよ。」





そう憎々しそうに言う亜久津。

それに何かを疑問に思ったのか、仁王はさらに聞く。





「何であいつの力が必要だったんだ? 太一は確か戦えないはずじゃ・・・?」





「ああ、太一の戦闘能力は皆無だ。 だが、特殊な力がある。

 ・・・目だ。 太一の能力はどこまでも見ることが出来る千里眼だ。」





亜久津のその言葉に納得する仁王。

確かに太一の能力はかなり特殊で、榊が手にいれたがるのも分かる気がする。

だが、どうも分からない。 何故、亜久津から強引に太一を奪ったのかが。





「なあ・・・。」





と、仁王が口を開きかけたその時。





「!!」





仁王の頭に、柳生の声が流れた。





『仁王君、聞こえますか? 私です。

 どうですか? 彼とは無事に接触することが出来ましたか?』





「ああ、ちゃんと助けたぜよ。 じゃけど、お前も知ってたなら教えてくれよ。

 亜久津が捕まってんの見てかなり驚いただろ。」





『すいません。 しかし、今はそんなこともう問題ではありませんよ。

 話は聞きましたか?』





「いや、まだあんまし聞いとらん。 何で榊は太一を奪ったんじゃ?

 契約者から無理矢理引き剥がしても命令なんか聞かんじゃろ?

 それに榊は太一を一体どうしたいんじゃ? 力が必要なら亜久津に協力させればいいだろ?」





『そう、そこが私も疑問に思っている所です。

 そこを亜久津君に詳しく聞いてもらえませんか?』





「ああ、分かった。」





そう言うと、仁王は亜久津に何で太一を強引に奪ったのかと、どうやって命令を聞かせているかを尋ねた。





「それはあんまし俺もよく知らねえんだが、榊は何かをやろうとしているらしい。

 それに太一の力だ必要だったってことだ。

 その何かが分からねえんだが・・・。 とにかく、それに俺が邪魔だったのは確かだろうな。

 だから無理矢理連れて行ったんだ。

 で、お前達は知らないみたいだが、あいつには何か特殊な能力があるらしい。

 俺が聞いた話によると人を操ることが出来るとか。 これが本当なら、あいつは太一を操ることが可能だろうな。」





その話に納得する仁王。 確かにそれが本当なら太一の契約が切れていなくても彼を操ることが出来るだろう。

と、その時また柳生の声が聞こえてきた。





『今の話で大体分かりました。 やはり彼は何かを知っていて、それを実行しようとしているみたいですね。

 やはり危険人物でしたか・・・。 仁王君、ありがとうございます。

 さて、ここからが重要ですよ。 あなたはすぐに亜久津君を逃がして最上階に向かってください。

 その際、決して姿は見られないように。 仮にもそこは王都の中心部です。

 あなたといえど、見つかって戦えば無傷ではいられないでしょう。』





「お前、ちゃっかり聞いとったんじゃな・・・。

 ああ、分かっちょる。 柳生、お前は今どこにいるんじゃ?」





『私は今、城に比較的近い所にいます。 跡部君を探しているんですが、まだ気配すら感知できないんです。

 このままだとそちらに行けないかもしれません。』





「おい、仁王。 お前、さっきから何言ってんだ?」





と、ふいに亜久津がそう言ってきた。

そう思うのも当然だろう。 さっきから仁王は1人で百面相をしていたのだから。

周りから見ればその光景はバカのように見えるだろう。





「ああ、すまん。 連れがテレパシー能力を持っててな。

 今後についてちょいと作戦会議じゃ。」





「そうか。 そういえば、お前は何でここに侵入して俺を助けたんだ?

 俺がいるってのだって知らなかったんだろ?」





「あー、その辺は話すと長くなりそうだ。 まあいい。 かいつまんで話ちゃる。

 お前、千石知っとるか?」





「ああ。 知ってるも何も俺と千石は同期だ。

 騎士で同期ってのは珍しいがな。 で、千石がどうしたんだ?」





亜久津にそう問われると、仁王は顔を少し曇らせて言った。





「今、あいつが危ない状況に立たされとるんじゃ。

 このままだとあいつは、榊に殺される可能性が高い。」





その言葉に、亜久津はかなり驚いた。

それもそうだろう。 いきなり同期の知人が殺されるかもと言われたのだから。





「は?! 何でだ?! まさかあいつバカでもやったのか?」





「いや、そうじゃない。 榊にとって、今の千石は邪魔なんじゃ。

 だから殺そうって考えとる可能性が高い。 あいつはもう呼び出されて、今はこの城の中にいる。

 俺は千石を助けに来たんじゃ。 あいつに死なれるのは困るからな。

 で、亜久津。 お前には協力してもらいたいことがあったから、助けに来たんじゃ。」





「協力だと?」





「ああそうじゃ。 千石には今、一緒にいる奴がいる。

 そいつは今町にいる。 そいつ・・・跡部っちゅー奴を探してもらいたいんじゃ。」





仁王がそう言うと、亜久津は少しの間黙った。

そしえ、少しの後口を開いた。





「・・・分かった。 助けられたんだ。 協力してやる。

 だが、条件が1つ。 お前じゃなくて、俺を上に行かせろ。」





「は?!」





その言葉に、仁王はかなり驚いた。





「何考えとるんじゃ?! それがどれだけ危険なことか分かっとるじゃろ?!

 上に行けば、お前は脱獄者として殺されるかもしれないんだぞ?!」





「大丈夫だ。 殺されることはない。 俺を殺したら太一の契約を永遠に切れなくなるからな。

 それに・・・俺にはやらなきゃいけないことがあるんだ。」





そう言う亜久津。 その言葉を聞いて、仁王ははっとした。





「もしかしてお前、まさか太一を助けに行くつもりじゃないだろうな?」





そう尋ねると、亜久津は軽く頷いた。





「ああ、そのつもりだ。 あいつは、俺にとって大切な奴なんだよ。 榊なんかに奪われるわけにはいかねえ。

 それに、千石も逃がさなきゃいけねえだろ? とにかく、榊の気をあいつからそらさなきゃいけねえ。

 それをやるのはお前より俺のほうがいいだろう? わざと姿を見せていけば、榊の気を少しでもそらすことが出来るだろう。

 その隙に千石を逃がせばいい。 あと、お前よりも俺のほうが戦闘は得意だぞ?」





亜久津がそう言うと、仁王は確かにと頷いた。

確かに亜久津のほうが戦闘は得意だった。 だが、それでも仁王は納得出来ない。

彼が反論をしようとしたその時。





『・・・仁王君、彼に任せましょう。』





唐突に柳生がそう言った。





「は?! お前、何考えとるんじゃ?!

 亜久津を行かせるのは、奴を死地に向かわせるのと同じだぞ?!」





そう反論する仁王。 しかし・・・と柳生は続ける。





『しかし、私としては彼に行ってもらったほうがいいと思うんです。

 彼のほうが囮としての効果は高いでしょう。 酷いことを言っているのは分かってます。

 しかし、時には非常にならなければいけない時もあるんです。 それを、分かってください・・・。』





そう言って、柳生は黙る。

辛そうな顔をしている仁王を見て、状況を察したのか、亜久津は言った。





「俺のことは気にするな。 危険なのは重々分かってる。

 大丈夫だ。 俺は。 今までだってそうだったんだ。 必ず太一を助けてお前らと合流する。

 だから仁王。 お前は行け。」





そう言う亜久津。 それに、仁王はようやく首を縦に振った。

それによしと亜久津は言い、すぐに彼に言った。





「分かったんならとっとと行け! 脱出ルートは俺が確保してやる。

 さて、ド派手にいってやろうじゃねーか!」





そう亜久津が言った瞬間、彼の周りを強烈な熱気が渦巻いた。

それに思わず後ずさる仁王。 さすがの彼でも、亜久津の力の前には多少ひるんだ。





『久々に見るが、相変わらずなんちゅー強さじゃ!

 これなら大丈夫かもな・・・』





と、そう仁王が思った時。





「この熱気は何だ?! 何があったんだ?!」





少し遠くから、やっと以上を感じた兵士達が走ってくる音が聞こえてきた。

そろそろマジで行かないと、と思った時、亜久津の周りを覆っていた熱気が突如炎に変わった。

そして、彼が軽く右手を横になぎ払うと、炎は瞬く間に巨大になり、牢の壁を突き破った。

そこから見えたのは、城の中と外の景色。

2人はそこでお互いに顔を見合わせて軽く頷くと、亜久津があけた穴からそれぞれ飛び出していった・・・。









【あとがき】

もー、最近何を書いてるんだか分からなくなってきつつあります(汗)

なんか肝心なとこを書いてない気がしてならない・・・。

文章力欲しいよ〜。



06.6.3



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