ここでやられるわけにはいかねーんだ!!

俺は絶対あいつを助ける!!






Symphony of destiny  第五章・10





「やっぱお前か。 丸井。」





そう言い、亜久津は途切れた炎の間から現れた男を見据える。

丸井は、感情を無理矢理押し殺したような表情で口を開いた。





「・・・なんでこんなバカなまねしたんだ?」





そう言う丸井。 その声には、何かいろんな感情が混ざり合っているような気がした・・・。





「けっ。 そんなもん決まってんだろ。

 榊の野郎に奪われた太一を取り戻しに行くんだよ。」





「・・・お前のアーティシャルが榊様の所に連れてかれたのは、確かに俺も知ってるさ。

 榊様にとってお前が邪魔だったのも知ってる。 だから捕まって地下牢に幽閉されたのも・・・。

 でも、だからってこれはやりすぎだろ?! こんなことをやって、無事でいられるわけないじゃないか!!

 ・・・俺がここに来たのは、榊様に命令されたからなんだ。 俺は、お前と戦わなきゃならない・・・。」





そう言い、うなだれる丸井。

その丸井を見ながら、亜久津は言う。





「・・・なら、戦えよ。」





「え・・・?」





「戦えと命令されたんだろ? だったら戦えばいいじゃねーか。

 俺は王都を裏切ったんだ。 だが、お前は裏切っていない。 反逆者は処分されるのがここの掟だ。

 掟を破れば、お前も反逆者として狙われることになるぞ? それが嫌なら戦え!

 全力で俺を止めろ! ・・・俺はもう覚悟を決めたんだ。

 あいつの・・・太一ためならどんなことでもするってな。 ・・・さあ、お前も決めろ!」





そう、亜久津は丸井に向かって怒鳴った。 丸井は再び黙る・・・。

・・・丸井の心は今、かなり揺れ動いていたのだ。

王都への忠誠心と、自分の今のパートナーであるジャッカルを取るか。

自分に戦う術を教えてくれた、亜久津を取るか。

永遠とも呼べる時間が流れた。 ・・・丸井はその顔を上げる。





「・・・決めたよ。 俺は・・・王都をう・・・ガハッ!!」





「!!!」





丸井が言おうとした時、急に彼が呻き声を上げ倒れた。

突然のことに、亜久津も驚きを隠せない。 倒れる彼の背には、1本の長く鋭いナイフが突き刺さっていた。





「・・・裏切ることは、死を意味する。 それを知っての行動か。」





そう言いながら歩いてくる者が。 その姿を見て、亜久津は息を呑む。





「まさか、貴様が出てくるとはな・・・。」



                                          ☆



「だーっ!! あんにゃろー、一体どこにいるんじゃ?!」





そう言いながら、仁王は街中を走る。 だが、そんな彼に向けられる人の目はない。

それはそうだ。 彼は今、自分の気配を完全に消しているのだから。

柳生と話した彼は、必死になって跡部を探していた。 だが、王都は広い。

その中でたった1人の人物を探し出すことは、かなり無理があった。

だが、それでも見つけなければならない。 なんとしても。

そう思いながら探していたその時!





「!!! この気配は?!」





急に仁王の顔が強張った。 彼の顔に、焦りが生じる。





「ヤバイぜよ、この状況。 街ん中に兵士が入ってきたぜよ。

 くっそ。 このままじゃと数の多い向こうに見つけられる可能性がある。

 ・・・とにかく急ぐしかないか・・・!」





そう呟き、再び周りに視線を走らせた。

と、その目に・・・。





「!! 淳?!」





その目に映ったのは、1人の少年だった。





「くすくす。 仁王、かなり手間取ってるね。」





「なんでお前さんがここに? ・・・もしかして柳生が言ってた助っ人って淳のことだったんか?!」





「そうだよ。 あいつに頼まれてね。 跡部を探しにきたんだ。

 そうそう、で跡部だけどさっき見つけたよ。」





「んなっ?! ホントか?!」





「ここで嘘言ってどうするのさ。 本当だよ。 この先にいる。

 さすがだね。 感覚で自分が狙われてるって気付いたみたい。 今は街の中を移動してる。

 でも、その周りを兵士達が逃がさないようにしっかり囲んでたけどね。」





「じゃあ、結構状況はヤバイな。 で、どうやって助けるんじゃ?」





「それは俺に任せて。 必ずシーユに連れて行くよ。

 で、仁王は一応念のために俺の傍にいてくれない? もしも戦闘になった時は、仁王のほうが頼りになるんだし。」





「ああ、分かったぜよ。 じゃあ、すぐに行動に移すか。

 何かあってからじゃあいかんからな。」





「そうだね。 じゃあ行こうか。 着いて来て。 こっちだよ。」





そう言って淳は走り出す。 そのあとを追って、仁王も走り出した-----。



                                         ☆



(さっきの声は本当に誰だったのだろうか・・・?)





そう考えながら、柳生は走る。

さっき自分に語りかけてきたあの声。 それは、今までに聞いた誰の声でもなかった。

そして、もしかしてあれは罠だったのでは?とも思えるくらい先に進んだその時!





「!!!」





柳生は川が急カーブで曲がっていて、浅瀬になっている所にうつぶせになって倒れている1人の男を見つけた。

その髪は、鮮やかなオレンジ色・・・。





「千石君!!」





そう言いながら、柳生は駆け寄る。 そして、その体を仰向けに起こした。





(体中が冷え切っている。 脈もかなり弱い。

 このままだとかなり危険だ。 すぐに手当てしなければ。)





そう思った柳生は、彼を右手で支え、空いた左手を意識の無い千石の顔の上にかざした。

そして・・・。





「この者に我の力を。 リライア。」





そう唱えると、暖かな光が千石の体を包み込んだ。

すると、彼の顔色が少しだがよくなった。





「・・・とりあえず応急処置はしたから少しの間は大丈夫でしょう。

 でも、油断は出来ませんね。 すぐにシーユに戻らなくては。」





そう呟くと、彼は再び呪文を唱えだした。

するとすぐに彼の足元に魔法陣が出現し、光が2人を包み込んだ。

そして、光が消えた時には2人の姿は跡形もなく消えうせていた-----。









【あとがき】

テストも無事終了したので更新スピードをアップです。

なんか今の所が予想以上に長くなってしまています(汗)

で、ついに淳が登場! 実は仁王の仲間だったんです。 彼のことはまだ謎ってことで。

やっと出てきてくれてうれしいよー!

おっと、ここで1つお知らせが。

たぶんですが第五章は次回で終了します。 さあ、このあと一体どうなるのか?!

早めの更新を心がけます!



06.7.7



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