なんて所だ。

確かにここなら、今まで見つからなかったのも分かる気がする・・・。





Symphony of destiny  第六章・1





「ここが・・・レイダーツなんですか?」





シーユから、忍足の戻った力で一気に移動した長太郎達。

彼らは今、赤く燃える山の麓に立っていた。





「そうや。 ここがレイダーツと呼ばれとる火山や。

 まだ、かなり活発に活動しとる。 普通の人間じゃあ近づくことすら出来ひんよ。

 さて、手遅れになる前にとっとと行かなあかんな。 長太郎、ちょっと腕だしい。」





「? 何ですか?」





そう言いながらも、長太郎は忍足に右腕を差し出した。

その腕に、忍足は自分のぴんと伸ばした指を2本、肘の所に押し当てた。 そして、小声で何か呟きながらゆっくりと手首に向かってすべらせていく。

すると、指の通ったあとに、何やら模様が刻まれた。 その模様は1度浮き上がったかと思うと、すうっと消えていった。





「これでよし、と。 もうええよ。 これで長太郎もレイダーツに入れる。」





「?? どういうことですか? 今のは一体?」





「今のは、まあ簡単な結界みたいなもんや。 レイダーツは活発に活動しとる火山やって言うたな?

 そんのせいで山はかなり熱いんや。 火の力を持っているか、結界を貼れるかせえへんと奥には進めへん。

 長太郎、お前もそうや。 せやから、今入れるようにするための結界を刻んだんや。 それは、熱からお前さんの体を守ってくれる。」





「そうだったんですか。 ありがとうございます。」





「ええよ。 よし、行くで。」





「はい、マスター。」





忍足はそう言って歩き出した。 そのあとを、長太郎が追う。

果たしてこの先には、一体何が待ち受けているのだろうか?



                                                   ☆



「!!! 一体、何があったんだ?!」





シルフィードから戻り、榊にことの報告をするために城に来た手塚とリョーマ。

彼らの目に飛び込んできたのは、所々から燻った煙を出す城の姿だった。





「!! 手塚にリョーマじゃないか!」





そう言いながら、2人の傍に駆け寄ってくる者がいた。





「乾?!」





見慣れたその姿に、2人も近寄る。

彼は急いで走ってきたためか、ぜいぜいと息を切らしていた。





「乾、話してくれ。 一体何があったんだ?」





「・・・実は、俺もまだ状況をよく飲み込めていないんだ。

 だが、とりあえず榊様は無事だ。 城も見た目ほどは損傷は激しくない。」





乾はそう話す。 だが、手塚はこの時彼の顔に暗い影が落ちているのに気付いた。

どうやら、リョーマもそれに気付いたようだった。





「・・・乾、どうしたんだ? 何かあったのか?」





手塚がそう声をかけると、彼は暗い顔で頷いた。





「・・・ああ。 城が炎に包まれた時、俺に逃げろと言いにきた海堂が巻き込まれてな。

 命に別状はなかったからまだよかったが、かなりの火傷を負ったんだ。 ・・・俺が、もっと早く気付いていれば、あいつは・・・!」





そう悔しそうに言う乾。 そんな彼を見て、手塚はリョーマに軽く目配せした。

それにリョーマは軽く頷き、口を開いた。





「あの、乾さん。 俺を海堂さんの所に連れていってくれませんか?」





リョーマの突然のその言葉に、乾は何でだ?と言葉を返す。





「少しだけですが、海堂さんの怪我をよくすることが出来るんです。

 そこまでではないですけど・・・。」





リョーマは少し遠慮気味に言う。 しかし、乾の顔は輝いた。





「本当か?! なら、すぐにやってくれ!

 手塚、リョーマを少し借りていってもいいか?」





「ああ。 早く海堂の怪我の治癒をしてやってくれ。

 リョーマ、俺は榊様の所に行ってくる。 お前は終わったらそのまま家へ戻れ。

 この調子だと、またすぐに次の任務に行かなければならないだろう。 今のうちに体を休めておけ。」





「イエス、マスター。 マスターもあまり無理はしないでくださいね?」





「ああ、分かっている。 じゃあ乾、俺は行くからな。」





「分かった。 すまないな。」





乾がそう言うと、手塚は気にするなと言って身を翻した。

そして彼は、城の上に消えていった-----。



                                                   ☆



「・・・土、無。 そして雷に水の欠片。 それらは全て王都の手中。

 残るは火に風、そして闇に光・・・か。 この状況、私達にはかなり不利ですね・・・。」





何かの儀式上のような物の上に立ち、1人呟く者がいた。 その顔は、フードで覆われていて見ることはできない。

その人物が立っている所を中心に、周りには細かく刻まれた魔法陣のようなものが描かれている。

そこには純白に輝く宝石のようなものが1つ、存在していた。 それを見ながら、その人物は呟く。





「でも、今はまだ大丈夫だ。 最後の切り札は、私達の元にやってきた。

 『彼』がまだいるのなら、最悪の事態になることはないですね。 しかし・・・。」





こう言って、空を仰ぐ。 そこには、ほのかに赤く染まりだした空があった。





「明らかに戦力は向こうのほうが上です。 奴らはまた、心を封じた人形を手に入れた。

 いくらこちらに幸村君達がいるといっても、実際は厳しいでしょう。 それに、もしも全ての者が動き出したら・・・。」





また、沈黙がおりる。





「・・・ですが、それでも諦めるわけにはいきません。 私達が諦めたら、全ては滅びてしまう。 そうなったら・・・終わりだ。

 ・・・時が止まって、どれほどの時間が流れたのでしょう? どれほど、この光りを見続けてきたのでしょう?

 願わくば、この光りが消え去ることなく、私達の時が動き出しますように・・・。」





その小さな呟きは、夜の帳の降り始めた空に、静かに消えていった・・・。









【あとがき】

今回は頑張って早く更新です。 最近、ノリにノッているのでもう書きまくりです。

久しぶりにフードの方が出てきました。 彼の正体はじきに分かりますので、お楽しみに♪

さて、この第六章から、このお話は破滅へと向かいだします。

全ての者の奏でる交響曲がどのような形で幕を閉じるのか、それまでどうぞお付き合いください・・・。



06.7.22



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