一体何があったんだい?

君は、本当に優しかったじゃないか。 その優しさを、忘れてしまたの?





Symphony of destiny  第六章・5





「・・・マスター、大丈夫ですか?」





アキラが橘にそう言う。

・・・村から塔へと通じる道の途中に、橘とアキラはいた。 その場に不二と佐伯はいない。

彼らは村の入口付近に向かったのだった。 打ち合わせ通りなら、手塚とリョーマの2人だけがここに来ることになる。

静かに風が吹く中、2人はたたずんでいた。





「大丈夫だ。 心配するな。」





アキラの問いに、橘はそう答える。 彼はアキラに背を向けているため、その表情を伺うことは出来ない。





「でも、手塚さんと戦うなんて! あの人とは2度と戦わないって言ってたじゃないですか!」





「でも、しょうがないだろう? あいつと今戦えるのは、俺しかいない。 不二達では残念ながら力不足だ。

 ・・・そう言う俺も勝てるかどうかは分からないがな。 実戦から遠ざかっていたこの6年の差は大きい。」





「だったら・・・だったら戦うのを止めればいいでしょう?! 無理に戦ってマスターがいなくなるのなんて嫌だ!

 俺はもう、前のマスターのように失いたくなんかないんです!!」





アキラがそう、悲痛な声で叫ぶ。





「・・・お前のその気持ちも分かる。 だが、それでも戦わなければいけない時があるんだ。」





だったら・・・と、アキラが言う。





「だったら、マスターは俺が絶対に死なせません。 俺の命に代えても、絶対に。」





そう、アキラは力を篭めて言う。 その言葉に、橘が振り返った。

彼が見たアキラの目は、決意に満ちた強い光を放っていた。





「・・・そうか。 お前の決意は分かったよ。 アキラ、お前は自分の信念に従って行動すればいい。

 何があっていて、何が間違っているという答えがあるわけじゃあない。 自分で出した答えが本当の答えなんだ。

 だが、ひとつ言っておこう。 お前は自分の命に代えてでも。と言ったな。 だが、お前が犠牲になって俺だけが生きていてもしょうがないんだ。

 俺はお前以外のパートナーを持つ気などない。 お前じゃないとダメなんだ。 だから、お前も死ぬな。

 オジイの言っていたように、死んでは先もなくなってしまうからな。

 ・・・確実に2人で生きて戻ろう。 ここでダメでも、生きていれば必ずまたあいつらと決着はつけれるからな。」





そう言うと、橘は軽く微笑んだ。 それに、アキラも表情を崩す。





「分かりました、マスター。 結局はこういう答えに落ち着くんですね。

 ・・・なんか、あの時と似てますね。 6年前も、こんな風に言ってたことがありましたよ。」





それに橘もそうそうだったな、と返す。 と、再び彼は口を開く。





「そうだアキラ。 お前、体は大丈夫なのか? この前の襲撃の時も結構疲弊していただろ。」





「大丈夫です。 とりあえずディフェンルードみたいな大技を使わなければ。

 今回は村を守る必要がありませんから。 その分余裕があります。」





「そうか、ならいいが。 ・・・そろそろ来るな。」





橘がそう言った時、村のほうから近づいてくる人影が見えた・・・。



                                                 ☆



時間は少し遡り、村の入口付近にいる手塚達・・・。





「・・・そろそろ、か。」





手塚はそう言って空を見上げる。 彼がさっき言った通り、風が少し強くなってきた。

と、その時。





「手塚さん、大変です! 村人達が一斉に姿を消しました!」





室町がそう怒鳴る。 その声に慌てて手塚は村に目を向けた。





「・・・確かに消えているな。 何があった?」





「分かりません。 本当に、いきなり全ての村人の姿が消えたんです。」





「そうか。 と、いうことは村人の中に幻影を作ることの出来る者がいたということだな。

 そして、奴らは俺達の存在に気付いていた。 かなり手強い相手みたいだな。」





「どうしますか?」





「すぐに村に入るぞ。 村人を全て逃がすために何人かエレメントを持つ者がいるはずだ。

 俺達の目的は、風のオーブと反逆者の殲滅。 向かって来る者は全て殺せ。」





手塚のその言葉に、室町達は了解しましたと言う。

リョーマも頷くが、その胸中はかなり複雑だった。





(本当に戦うことになるんだ。 嫌だな、人を殺すのって・・・。)





そう思いつつも、リョーマは手塚のあとを追った。

村に入ると、4人は奥へと進んで行った。 そして少し広くなっている所に近づいて行くと、そこに2人の人影が見えた。





「・・・お前達が俺達への刺客というわけか?」





手塚がそう無表情で問う。 それに、そこにいた人物の1人である不二が答える。





「まあ、そんな所かな。 でも、手塚と越前の相手は僕達じゃないよ。

 僕達の相手はあくまで残りの2人。 君達の相手はこの先にいる。」





不二はそう言って、自分達の後ろを指差す。 そこには、さらに奥へと続く道が広がっていた。





「ふん。 そんなことを言って俺達を分断させ、時間稼ぎをするつもりか? 見苦しいな。

 そんな挑発に乗るわけなかろう。」





手塚はそう言う。 それに、今度は佐伯が言う。





「・・・この先にいるのが橘だと知っても?」





その言葉に、手塚の表情が一瞬だが変わった。 一瞬見えたのは、恐ろしいほどの憎しみだった。

だが、彼はすぐにそれを隠してリョーマに言う。





「・・・リョーマ、行くぞ。」





「え?」





突然のその言葉に、戸惑うリョーマ。 だが、そんな彼にはお構いもせずに彼は今度は室町達に言う。





「この場は任せるぞ。」





「はい、分かりました。 すぐに追います。」





それに頷くと、手塚はつかつかと歩き出す。 その後ろを慌てて追うリョーマ。

手塚達は無言で不二達の間を通りすぎた。 2人が通った時、不二達の背中に嫌な汗が流れる。





(強い・・・。 通っただけで感じるこの殺気。 僕達じゃあかなわなかっただろう。

 これが・・・3強・・・。)





(橘達、大丈夫かな? 特にアキラ君が心配だ。

 でも、今は目の前のことに集中しよう。 祐太のことも気になる・・・。)





手塚達が通ったあと、その場に残った室町が口を開く。





「あなた達が相手をしてくれるのでしょう? だったら、早く始めましょう。

 生憎俺達は暇ではないんです。」





「威勢がいいね。 でも、ここはそう簡単には通さないよ。

 それに、僕達はそんなに弱くはない。 君達じゃあ倒せないかもね?」





佐伯がそう言いながら、にこりと微笑む。 彼が笑うと、それに反応するかのように周りの風が強く吹いた。

2人の横で、不二が祐太に向かって言う。





「祐太、僕だよ。 何か言ってよ。」





だが、祐太は何も言わない。 相変わらず無表情のままだ。

と、それを見た室町があざ笑うかのように言う。





「今の祐太に俺以外の言葉は聞こえませんよ。 たとえあなたでもね。

 祐太のお兄さんの、不二周助さん。」





「なぜ、それを・・・?!」





「祐太が教えてくれたんですよ。 自分なんかよりもはるかに強い兄がいると。

 そして、そんな兄を越えたいんだともね。」





「祐太に・・・何をした!!」





「僕は何もしていませんよ。 したのはあの方ですから。

 さて、こんな無駄話をしている暇はありませんでしたね。 祐太、あの2人は敵です。 殺してしまいましょう。」





「なっ?!」





室町がそう祐太に囁くと、彼はビクンと反応した。

そして、今までうつむいていた顔を上げる。 そして・・・。





「・・・敵は・・・殺す!!」





そう怒鳴った瞬間、彼の体が宙を舞う。

キラリと光った剣を自らの剣で受け止めた佐伯が不二に向かって怒鳴る。





「周助! ためらっている時間はないよ! 今はとにかく、戦うんだ!!」





「分かってる・・・。 室町! 君の知っている事、全部話してもらうよ!!」





「ふふ。 果たしてそれが出来ますかね?」





不二の剣を止めながら、室町が不適に笑う。

一つの戦いが今、始まった-----。









【あとがき】

室町喋りすぎだーーー!!

本当はしゃべらせる予定なんて何にもなかったのに、いつの間にか饒舌に。 どうしよう・・・(汗)

とりあえず、1つの戦いが始まりました。 祐太は一体どうなってしまったのでしょうね?

手塚達のほうも書かなきゃー。 あっちもよくわかんないことになります(自分で言うな。)

でも、そんなんでもバトルシーンを書くのは好きだ!



06.8.31



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