この俺に、負けなんてありえねーんだよ!!





Symphony of destiny  第六章・9





「サンダー!!」





赤也の放つ雷が、長太郎を狙う。 それを、出現させた土の壁によって防ぐ。

さっきまでは、有利だった。 そして今も、有利なはずだった。 しかし、実際彼は目に見えない重圧を感じていた。





(何だ、この違和感は。 何か、おかしい。 さっきまでとは決定的に。

 赤也君の攻撃力がわずかだが上がっているような気がする。 何だ? 何が、一体・・・?)





そう考えながら、赤也の攻撃を避ける長太郎。 と、その一瞬の思考によって出来た隙を、赤也は見逃さなかった。





「もらった!!」





バッ!





辺りに鮮血が巻き散る。 赤也の剣による攻撃は、長太郎の右腕を確実に切り裂いた。





「くっ。」





咄嗟に距離を取る。 マズイ。と、思った。

自分の利き腕は右だ。 このままでは、満足に剣を振ることが出来ない。

右腕を押さえ、悔しそうな表情を見せる長太郎に向かって、赤也がニヤッと嗤いかける。

その目は、真っ赤に充血していた・・・。



                                                 ☆



「水よ!」





忍足が杖を掲げ、そう言うと空中に出現した水の塊が真田に向かって襲い掛かる。

それを剣で叩き落し、または避けながら彼は脱出の機会をうかがっていた。





(俺にとってかなり有利な場所だが、こいつの前ではそれほど関係はない。 魔導士と一介の騎士の力の差は歴然だ。

 このままだと確実にやられる。 なんとか、隙は出来ないものか・・・。)





そう考えながらも、真田の体は止まらない。

忍足の放った攻撃を避け、宙に舞った瞬間に彼も唱える。





『炎の渦よ! 全てを燃やし尽くせ! ガルーディア!!』





真田がそう唱えた瞬間、彼の周りに炎が渦巻いた。 それは、彼を守るようにグルグルと覆う。

炎は彼を守ったまま、忍足に猛烈な速度で襲いかかる。 前後左右、どこも逃げ場のないように。 だが。





『水よ! 我を守る鉄壁の盾となれ! ウォーターシールド!!』





瞬時に大量の水が彼を覆う。 その盾の前に、炎はことごとく消され消滅した。





「ちっ。」





真田が舌を打つ。





「残念やったな。 それくらいじゃ俺の盾を破ることなんて出来へんで。 まあ、さすがに今のはちいっと危なかったけどな。

 ここが火山やったから攻撃力が上がったんやろな。 せやけど、まだ自分の力不足や。」





忍足のその言葉に、真田は苦虫を噛んだような顔をした。

確かに、彼の言う通りだった。 今の技は、真田が使えるものの中ではかなり強力だったからだ。

それを、破られた。 彼にとってそれは、かなりの屈辱だった。 それを察知したのか、忍足は言う。





「どうやら、これ以上強力なやつはまだあんまし使えへんようやな。

 さて、そろそろ終わりにさせてもらうで!」





そう言い、杖を振り上げたその時!





『雷よ! その力で全てを打ち砕け! サンダークラッシュ!』





突如その場に巨大な雷が幾本も落ちた。 忍足はとっさに結界を張る。

真田も同様に炎の結界を張っていた。 落雷の降りしきる中、彼は長太郎の姿を探す。





「長太郎! どこや! どこにおる?!」





そして、彼は見つける。 力尽き、今にも倒れそうになりながらも必死に攻撃に耐える長太郎の姿を。





「長太郎!!」





このままでは彼が危ない。 そう思った彼は、この攻撃の元凶、狂ったように雷を落とし続ける赤也を見る。





(あいつがこの元凶か! ここやとあんまし使いたくはないんやけど、今はこれしかない!)





そして、忍足は赤也に杖を向け口を開いた。





『全ての者に潜みし闇よ! 彼の者の全てを封じよ! ダークスプレイト!!』





忍足がそう唱えた瞬間、赤也の足から伸びていた影が突如動いた。

それは、瞬時に赤也の体を覆いつくした。





「うわああああ!!」





突然のことに、赤也はさらにパニックを起こし叫び声を上げる。 集中が切れたことにより、雷は消え去った。

忍足はそのまま、赤也の動き以外も封じようとする。 即ち、声や思考、果ては・・・心臓の動きまでも。

しかし、忍足は赤也にばかりに気を取られすぎていた。 そのため、彼の気配に気付くのが遅れた。





「ガルーディア!!」





聞こえたのは真田が言霊を唱えた瞬間、忍足に強烈な炎が迫る。

咄嗟に結界を強めた瞬間、赤也に向けていた集中が切れた。 それにより、彼を覆っていた影が元に戻る。





「ちっ。」





舌打ちをする忍足。 彼が炎を防ぎきり、赤也のほうに目を向けた時、そこには既に真田がいた。

彼は、気絶した赤也の体をしっかりと抱えていた。 そして、忍足に言う。





「今回はとりあえず引き分けということにしておこう。 炎のオーブは貰っていくぞ!」





そう言った瞬間、真田の持っていた時の欠片が光り、2人の姿は瞬時に消え去った。





「ちっ、またヤバイことになったわ。 けどその前に、長太郎! 大丈夫かいな?!」





忍足は急いで長太郎の元に駆け寄る。





「・・・すいません、マスター。 足、ひっぱちゃって・・・。」





「そんなことはどうでもええ! とりあえず黙っときいや。 今、傷なんとかするさかい。」





忍足がそう言うと、長太郎は再びすいませんと言って、意識を飛ばした。

忍足は、彼の体をざっと見回す。





(直接雷に打たれたわけやなさそうや。 せやけど、剣の傷がかなり多いな。 出血も多い。

 このままやと、危険や。 とりあえず応急処置だけしとくか。)





彼は、唱える。





『この者に癒しを。 ヒール。』





すると、暖かな光りが長太郎を包み込んだ。

それにより、みるみるうちに出血が止まった。





「ふう。 とりあえずこれで少しは大丈夫やな。 こういう時に治癒力がほとんどないと辛いわ。 早く柳生に診てもらわな。

 ・・・まさか、赤也があんな危険やったなんて思わへんかったわ。 あの攻撃力の高さはあなどれん。

 とにかく、今は戻るか。 あー、絶対あいつらに怒鳴られるわあ。」





そう言いながらも、忍足は長太郎を担ぎ上げる。 そして一言。





「ダークルード。」





そう唱えた瞬間、彼の足元に漆黒の闇が口を開いた。 それに、2人の姿は吸い込まれるように消えた。

あとには、いたる所土のめくれ上がった火の山の表面が残るばかりだった・・・。









【あとがき】

さあ、一足早く忍足達の所は終了です。 なんか、真田が弱い気が・・・。

この感じだと、赤也のほうが強い(汗) 最初は真田のほうが強いはずだったんだけど・・・。 まあいいや(いいのか?!)

次からはシルフィードの面々です。 多分ですが、あと2・3話でこの章は終了・・・のはず。

頑張るぞー!!



06.10.29



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