諦めることは簡単だ。 しかし、それは許されない。

立て。 立って、前を見て、戦え。






Symphony of destiny  第七章・8





『はーっはっはっ!!』





男の喚起に溢れた笑い声が、その場に響き渡る。





『遂にやったぞ! 俺は自由だ!』





両手を空に向かって大きく掲げる。

その様子を、彼等は絶望的な目で眺めていた。





「結界が、破られるなんて・・・。」





地面に両手をつき、うなだれるはじめ。 忍足と柳生も、呆然としていた。

だが、跡部だけは違った。





「おい、お前等! 何諦めてんだよ!

 俺達が諦めたら終わりじゃねーか! 俺達が何とかしなきゃ、全てが滅ぶんだぞ!!」





彼は、希望を捨てていなかった。 こんな状況でも、何か出来ると信じていた。

そんな彼を見る3人。 跡部の目は、未だに強い光を放ち続けていた。





「・・・そうですね。 私達が諦めたら、誰が時を止めれるというのでしょう?

 それに、散々ここを守ってきたんですからちゃんと最後までやらなくてはいけませんね。」





そう言ったのは、柳生だった。 彼は口元をほのかに笑みの形に形作ると、言った。





「そうやな。 確かにここで投げ出したらかなり無責任や。

 観月、自分はここで諦めるんか? それでホントにええんか?」





はじめを見下ろし忍足はそう問う。

それに、はじめはゆっくりと立ち上がった。





「・・・よくなんかありませんよ。 そうですね。 ここで諦めようとするなんて、僕らしくありませんでした。

 心配をお掛けしてすいません。 ・・・全力で止めましょう。」





そう言うはじめの目には、いつもの強い光が戻っていた。

ああ。と言う4人。 彼等は、時を宿した男をその強い瞳でまっすぐに見つめた-----。



                                                 ☆



「・・・オーブ達がざわめき始めた。 そろそろかな・・・。」





そう、呟く声がかすかに聞こえた気がした・・・。



                                                  ☆





『全力で止めるだって? この俺を? はははははっ!!

 無理に決まってるだろ?! お前等ごときの貧弱な力で、止められるなど思うな!!』





「何かいい方法はあるんですか?」





声高々に言う男を半ばシカト状態で、柳生は問う。

それに、はじめが答える。





「とりあえずあれの動きを封じるべきでしょう。

 完全にとは出来なくても、この場所から一時的にでもでられないようにすれば、少しは時間をかせげます。」





「そうやな。 せやけどそのあとは? どないすんねん?」





忍足のその問いに、口を開いたのは跡部だった。





「封印するしかねえだろ。 そうしなきゃ、暴走は止められねえ。」





「せやけどどうやって? あいつの力は強大や。

 それを封じるにはそれ以上の力が必要になる。 俺等の力で足りるんか?」





「大丈夫です。 それは何とかできますよ。 だってここにはオーブがあるでしょう。

 私達だってオーブの力を使えば、増幅することが出来ますからね。 最大限に引き出せば、時を止めるくらいは出来るはずです。」





「そうやな。 ・・・なあ、封印って一体どこにするんや?」





ふいに忍足がそう口にした。 それに、固まる3人。





「・・・そういえば考えてなかったですね。」





「ええ。 どこにするのが1番なのでしょう?

 この場所に封じるのは不可能でしょう。 封印を破られたのですから。 容易に破れないようにするとなると・・・。」





はじめが悩む。

と、その時。 無視され続けていた時がついにしびれを切らした。





『俺をなめてるんじゃねえぞ! お前等なぞ、欠片も残さず消してやるっ!!』





時が怒鳴った。 そして、その右手をバッと上に上げた。

その瞬間、地面が地響きを上げて揺れだした。 その場に立っているのが困難となり、4人は高く飛び上がる。





「おい! お前等は早くオーブを取れ! その間は俺がなんとかする!!」





跡部はそう怒鳴ると、腰の剣を引き抜いた。

そして男に剣先を突きつけ、そのまま腕を軽く引き勢いよく押し出した。





「ラグリッション!!」





その瞬間、空間が切り裂かれ衝撃が男を襲った。

普通ならば、避けることは不可能な時の衝撃波。 しかしそれは、男にいとも簡単に破られた。

恐ろしい速度で遅い来る衝撃を、男は右手をその方向に掲げることで止めたのだ。 それには跡部も、目を見開いて驚愕した。





「そんな馬鹿なっ?!」





『俺の力をなめるなよ。 たかが人間ごときに、オーブであるこの俺を止められると本気で思っていたのか?

 しかもそんな攻撃で。 そんなもの、いくら放ったとしても傷1つつけることは出来ないぞ。』





男はふんと鼻で笑う。 それに、ストンと地面に降り立った跡部はチッと舌打ちをする。





(あれが効かないなんてな。 まさかそこまで強力だったとは。

 だが、4人の力を合わせれば何とかなるはずだ。 あいつらは・・・。)





そう考えながら、跡部はチラリと後ろを目だけで見る。

時の目が逸らされたため、その隙に3人は自分の属性のエレメントを手にしていた。





(よし。 これで少しは対抗できるはずだ。)





跡部は目を元に戻す。 眼前の男は、にたにたと笑っていた。



                                                    ☆



手に取ると、オーブは僅かに暖かかった。

柔らかな光を放つオーブ。 その光りは、優しさに満ちているような感じがした。





「お願いですから、力を貸して下さい・・・。」





祈るように呟いた言葉。 すると、それに答えるように光りは一瞬強くなった。

それに微笑みを浮かべ、はじめはオーブをスッと押し上げ宙に浮かせた。 宙に浮いたオーブは、はじめの左肩の辺りでふっと消えた。





「絶対に止めてみせる・・・。」





そう自分に言い聞かせるように言うと、はじめは男をキッと見た。

その目には何の迷いもなく、ただ強い意志があった-----。









【あとがき】

繋ぎって苦手です(汗) 案の定どうやって進めたらいいのかかなり悩みました。

今回はあまり進みませんでした(汗) このままだといつまでたっても肝心な所に入らないので、今度からはもう少し考えて書きたいと思います。



06.12.25



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