こんな考えしか思いつかない僕を、許してください・・・。





Symphony of destiny  第七章・9





『こいつらを消すのなぞ、簡単すぎる作業だ。

 時間の無駄だな。 その間に少しでも潰しておくか。』





4人を見ながら、男はそう言う。 その言葉に、跡部達の顔が歪む。

それを見て、楽しいとばかりに顔をにやけさせた男は右手を高く掲げる。 そして・・・。





『時の狭間に封じられし者達よ! 今ここに姿を現し、積年の恨みを晴らせ!

 デスリザルト!!』





男がそう唱えた瞬間、強烈な光りが空を覆った。

その光りはすぐに消え去った。 しかし、空には不気味な亀裂が走っていた。

その亀裂の合間からは、不気味に光るいくつもの目があった。





『行け!!』





男がそう怒鳴ったのを合図に、その目の持ち主達は一斉に亀裂から踊り出てきた。

そこから現れた者。 それがこののち、『魔物』と呼ばれる者達だった。 自由になった彼等は、喜びの咆哮を上げながら飛び回る。





「ヤバイでこの状況!! なんとかせな!」





「んなの分かってらあ! 観月!」





「忍足君と柳生君で、時の動きを出来るだけ制限して下さい!

 跡部君と僕はあの出てきた者達を出来るだけ消します!!」





はじめのその指示で、4人は一斉に動いた。

忍足と柳生は二手に別れ、男の左右に飛ぶ。 そして互いに唱える。





「闇よ! 彼の者の全てを封じよ! リストレクト!!」





「邪悪を消し去れ! ディスパーグ!!」





忍足の呪文で、男の周りに一瞬にして闇が渦巻いた。 そして、その闇ごと柳生が無に帰そうとする。 しかし・・・。





『ラプス。』





男がそう唱えた瞬間、闇が消えさらには柳生の術までもが破られた。 それに、驚愕する2人。

彼等に、男はニヤリと笑う。





『こんな弱いものでこの俺が倒せるとなぞ思ったか?』





2人の背筋に、冷たい汗が流れた・・・。



                                                    ☆



「ラグリッション!!」





跡部の声が響くたび、突如として空から出現した異形の者達は消えていく。

しかし、数は減るどころか増えていく一方だった。





「ちっ! このままだとらちがあかねじゃねーか!」





悪態をつきながらも、跡部は剣を振るう。 と、彼から少し離れた場所で戦っていたはじめが、隙を見て跡部の所に近づいてきた。





「跡部君!」





剣を振る手を休めないまま、はじめは跡部に言う。





「このままだと本当にらちがあきません。 僕の考えが甘かったようです。

 この者達は、あの空間の亀裂からほぼ無限に出てくるみたいです。 これを止めるには、元凶である時をなんとかするしかありません!」





「確かにそうみたいだな。 だが、どうやってやるんだ?!

 いや、封印は出来る可能性が高いが場所はどうする? いいとこ思いついたのか?」





跡部のその言葉に、はじめは一旦言葉を切った。 それに疑問を持ちながらも、跡部は先を促す。

少しして、はじめはやっと口を開いた。





「・・・1つだけ、適切な場所があります。 あそこなら、半永久的に封印できるでしょう。

 しかし・・・。」





はじめの顔が曇った。 それに跡部は時間がないんだ!と、急かす。

そして、決意したようにはじめは跡部にその『適切な場所』を告げたのだった・・・。



                                                 ☆



「くっ!!」





「柳生!」





男の放った衝撃によって、柳生の体が吹き飛ばされる。

地面に叩きつけられると思った瞬間、跡部によって支えられなんとか激突は免れることが出来た。





「すいません・・・。」





「礼なんかいい。 立てるか?」





「はい、大丈夫です。」





跡部と柳生の元に、忍足が時の攻撃をやり過ごしながら走ってきた。





「無事か?!」





「ああ、大丈夫だ。

 ・・・観月、タイミングが重要だ。 ためらうなよ・・・。」





柳生を支えていた手を離すと、跡部ははじめにそう言った。

その言葉に、2人は訝しげな顔をするがそれには触れずに跡部は男の元へと跳躍した。





「跡部?!」





慌てて追おうとする2人を、はじめが押しとどめる。





「観月君?! 何で止めるんですか?!」





急ぎ跡部の元に向かおうとする2人に、はじめは先ほど跡部にも話したことを伝える。

それを聞いた瞬間、2人は固まった。





「そんな・・・。 そんなこと、出来るわけないやろ?!

 何であいつにばっか背負わせなきゃあかんねん!!」





「私もそう思います! どうして彼ばかりに?!」





言い立てる2人に、はじめは言う。 跡部には言っていないことを。

そのことを聞いた瞬間、2人の表情がほんの少しだが和らいだ。 はじめは柔らかに微笑みながら言う。





「僕達にしか出来ないことをしましょう。 例えそれが、苦しみとなってこの身を裂こうとも。

 仲間ですもんね、僕達は。 いくら僕でも苦しみを1人で背負わせるなんて、そんなことはさせませんよ。」





彼等は目を向ける。 その先には、男と1人対峙する跡部の姿。

彼等は決意する。 自分達も苦しみを背負うと。





-----チャンスは1度だけ。 彼等の決意は、この世界を無事に救えるのだろうか・・・?









【あとがき】

またちょっとだけしか進んでなーい!! ヤバイ、ヤバイですよこの状況。

出来れば次くらいで過去の話は終わりにしたいなあ・・・。



06.12.28



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