俺の力でどこまで出来るのかは分からねえ。

だが、たとえここで死んでもぜってえ止めてみせる!





Symphony of destiny  第七章・10





「はああっ!!」





跡部の剣が男を狙う。 しかしそれは、見えない壁によってなんなく阻まれてしまう。





『無駄無駄あ!』





男がそう声高々に言う。 しかし跡部の口元には微かに笑みが浮かんでいた。

と、その時。





「ダルシィス!!」





跡部の真横を、忍足の放った漆黒の刃が通り抜ける。 刃は1本だけでなく、何本も男を狙って空を裂いて飛んできた。

しかしそれも男はなんなく止めてしまう。

だがこの隙に3人は跡部の横まで来ていた。





「お前等?!」





「大丈夫ですよ。 絶対に成功します。

 ・・・僕達3人が彼の周りを3方向から取り囲みます。 そうしたら跡部君は彼の所へ。

 あとは、先ほどの話通りに。」





「ああ分かった。 ・・・頼むな。」





跡部のその言葉に、3人は頷く。

そして彼等は一斉に飛び、男を取り囲んだ。





『ふん。 何をしようと無駄だ。 この俺を止めるなんてな。』





「そう言っていられるんも今のうちや! いくで! 闇よ!」





「オーブよ! 私に力を!!」





「聖なる光よ! 邪を封じよ!!」





3人がそう唱えた瞬間、強い力がその場に満ちた。





『なっ、何を?!』





機会をうかがっていた跡部は即座に飛び出し、動きの鈍くなった男の横に。

そして剣をつき刺そうとしたその時!





『こんな・・・力で! この俺・・・を封じれると思うなっ!!』





オーブによって動きを制限されていたにも関わらず、男は恐ろしいほどの力でそれを振りほどいた。





「「うわっ!!」」





力を集中させていた3人は、その衝撃によって弾かれてしまった。

しかし跡部はなんとかその場に踏みとどまる。 しかし・・・。





「かはっ?!」





男の手が、跡部の腹に深々と突き刺さった。





「跡部!!」





『はははっ!! これで貴様も終わりだなっ!』





高々と笑う男を尻目に、跡部はグッと自らの体に刺さったままの男の腕を掴む。





『どうした? まだ足掻くのか?』





男の声を無視し、跡部は叫んだ。





「今だ! やれっ!!」





しかし3人は動くことが出来ない。

それを見て、口から大量の血を吐きながらも跡部は再び叫んだ。





「何を躊躇ってやがんだ! 俺が死んだら終わりだろうが!!

 今しかチャンスはねえんだよ! やれえ!!」





彼のその必死な叫びに、3人は目を覚ましたかのように一斉に動いた。

それにようやく危機感を抱いた男は、跡部の体から腕を引き抜こうとする。

しかし、跡部の腕は一体どこにそんな力が残っているのかまったく動かない。





『放せ! くそっ! 放しやがれっ!』





男が足掻く。 しかし、腕は一向に放れない。

そうしているうちに、はじめ達は2人を3方向から取り囲んだ。 そして・・・。





『『封じられし者は時。 封じし器も時。

 互いを相殺し、今永久の時の狭間に押し込めよ!

 オーブよ! 我等にその強大なる力を貸せ!

 我等に彼の者を封じる力を!

 リクレール・ガランティア!!』』





3人が唱えた瞬間、跡部と男を中心に巨大な魔法陣が出現した。

そこから、目を覆いたくなるほどの強烈な光が空に向かって一直線に放たれる。





『くっ・・・そ! この・・・まま・・・このまま・・・むざむざと封印されて・・・たまるかあ!!』





男がそう叫ぶ。 魔法陣の内側から、男の放出する力がはじめ達の力を押し返そうとする。





「なっ?! まだそんな力が?!」





慌てる3人。 しかしその時、彼等の力とはまた別の強大な力が魔法陣を包み込んだ。





「これは・・・。」





それは、彼等の属性ではないオーブ達だった。

強大な力に影響されたのか、はたまた違う理由か。 理由は不明だったが、オーブは3人に力を与えてくれた。



                                                 ☆



『ぐわあああああ!!!』





男の断末魔の叫び声が聞こえる。

光の中で、跡部は1人そう思った。 体の中に、自分のものではない何かが入ってくる感触がする。

ふっと口元を緩めて、彼は静かに笑った。





(これで、ケジメはつけれるな・・・。)





はじめの提案。 それは、同じ時のエレメントを持つ跡部の体の中にオーブを封じることだった。

時のオーブよりも巨大な力で男の動きを止め、跡部の体の中にオーブを押し込む。

そして跡部は自らの命と引き換えにオーブの力を相殺させ、体の中に留める。

力を失ったオーブは彼の体の中から出ることは出来ない。 しかし、命を代償にする跡部も自身の力で動くことは出来ない。

動くことのなくなった彼の体を、残りの3人がさらに上から封印し、オーブが目覚めないようにする。

・・・これが、はじめの提案に跡部の意見を重ね実行に移された時のオーブを封じる方法だった。





(・・・もう、あいつ等には二度と会えねーだろうな。)





薄れゆく意識の中で、跡部は最後にそう思った。

そして・・・跡部の意識は途切れた・・・。



                                                   ☆



「はあっ、はあっ。」





荒い息をつきながら、3人は立っていた。

彼等の立つ中央には、時のオーブをその身に封じ、もう目を覚ますことのない跡部。

さらにその周りには、彼等を助けてくれた8つのオーブが宙に浮かんでいた。





「・・・無事に・・・出来たんやな・・・。」





忍足がそう呟く。 残りの2人は、疲労の溜まった表情をしながらも頷いた。





「・・・さて、と。 あとはここの後始末だけですね。」





はじめのその言葉に、2人は頷く。 そして、はじめの口から再び言霊が流れようとしたその時。





「待ちなさい。」





ふいに、何者かの声がした。





「あなたは・・・?」





その声の主を訝しげに見る。 とその時、柳生があっという顔をした。





「その声! あなたは以前、私に忠告をした方では?!」





柳生のその言葉に、その者は頷いた。 それに驚く3人。

何か言おうとした忍足を遮って、その者は口を開いた。





「君達に提案するよ。 ここで眠りにつくよりも、もっといい方法がある。」





「えっ?」





「自身の時を止めるんだ。 そうすれば不老不死となり、それが解けるまで永久に生きることが出来るよ。

 一緒に眠るよりもよっぽどいいでしょう? 見守っていくことが出来るんだから。」





その人のその言葉に、3人は確かにと頷く。 それはとてもいい案だった。

永久に生きることが出来るのなら、彼の封印が解けないように見守っていくことが出来る。 3人は、すぐさまその案に乗った。





「じゃあ決定だね。 ・・・すぐに始めようか。」





「その前に、1つ聞いてもいいですか? あなたは一体・・・?」





「・・・わしはずっとこの世界を見守ってきた者だよ。 もうずっと昔からね。

 これから、きっと辛いことが多くなると思う。 不老不死というのは、そう愉快なものではないからね。

 おっと。 わしのことだけど、『オジイ』って呼んでくれればいよ。」





・・・光が再びその場を包んだ。





------この時、僕達は人としての輪から外れた。 そして彼と同じ、永遠の時を過ごすことを決めた。

どんな苦しみが待っていようとも、それに挫けるようなことはしない。 彼はもっと苦しいはずなのだから。





僕達は魔導士。 全てを見守る者-----。









【あとがき】

終わったあああ!!!

すんごくかかりましたけど、これでやっと過去の話は終了です。 いやー、ホントここまで長かったです(泣)

オジイが登場しましたね。 彼に関しては未だに謎ばっかです。 一体どんな人なんでしょうねえ?

さて、この章も残すとこあと少し。 この話を聞いた彼等は一体どうするのでしょうか?

では、また次回!!



06.12.29



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