僕に出来ることって何だろう?

僕はあまりにも無力で、強くなんかない。

それでも、出来ることがあるのだろうか?





Symphony of destiny  第八章・1





森の中を、1頭の馬が駆けていく。 しかし、それは馬というには少し違う。 その上には、2人の人間。

馬は、普通ではありえない速さで駆ける。 自分の故郷へと向かって-----。





「マスター、今から行く所って一体どんな場所なんですか?」





森を駆ける魔物、景の背に乗る2人のうちの1人である長太郎は、そう忍足に尋ねた。





「めっちゃええ所やで。 長太郎も絶対気に入る。

 まあ、そういう俺も最後に行ったんはもう何年も前なんやけどな。」





景の手綱を握りながら、忍足はそう言う。 それにそうなんですか。と、穏やかに返す長太郎。

今、世界はこんなにも平和じゃないか。

長太郎はふとそう思う。 青空がどこまでも広がり、穏やかな風が吹いている。 戦いの影など見えない。

しかしどこかでは人が、魔物が争い血を流している。 それを考えると、長太郎は胸が苦しくなった。





「・・・マスター。 本当の平和が来るのはいつなんでしょうか?」





忍足の背中を見つめながら、長太郎はそう尋ねる。





「・・・分からん。 せやけど、自分らが努力したらきっと来るって俺は思てる。

 そう思わんと、戦いなんて出来ひんよ。」





忍足のその言葉に、そうですね・・・。と、長太郎は返す。

どんな理由でも納得できなければ、気が狂ってしまうかもしれない。と、心の奥で長太郎は思った。



                                                     ☆



「さて、と。 じゃあそろそろ行くね。」





そう言って幸村は椅子から立ち上がる。 蓮二も腰を上げた。





「本当に気をつけてくださいね。」





柳生が心配そうに言う。

彼等2人は、今から強力してくれるかもしれない人物に会うために、王都に向かおうとしていた。





「ああ、大丈夫だよ。 向こうもまさか侵入してくるなんて思わないだろうしね。」





ニコリと微笑みながら、幸村は傍に立てかけておいた剣を手に取る。





「でも、本当に気をつけたほうがいいよ。」





椅子に座ったまま、千石がそう忠告する。





「榊様のすぐ傍には今、壇君がいる。 彼の千里眼は恐ろしいほど何でも見ることが出来るからね。

 あっ、そういえば柳生君。 亜久津は? ここにはいないみたいだけど・・・。」





千石のその問いかけに、柳生と仁王は苦しそうな顔をする。





「どうしたの?」





「彼は・・・、ここには来ません。」





「え?」





「本当です。 あなたを連れてここに戻ってきたあと、観月君づてにオジイに頼んで透視してもらったんです。

 彼は、亜久津君は何者かに破れて王都に再び掴まりました、」





柳生のその言葉に、千石は固まる。 仁王が悔しそうに呻く。





「俺があん時行ってれば、こんなことにはならんかったんじゃ!」





拳を強く握り締め、仁王は言う。 それを見ながら、千石はそう・・・。と一言呟いた・・・。



                                                      ☆



「俺も一緒に行くから。」





あのあと部屋を出た幸村と蓮二にそう言ったのは、淳だった。





「え?」





「まあ、行くって言っても単なる見張り役だけどね。 外に誰かいたほうが、何かあった時便利でしょ?

 観月ほどじゃなくても、一応俺はあいつの後継者なんだし。 少しは役に立つって。」





「じゃあ、お願いするよ。 でも、危なくなったら俺達を置いて離脱してね。

 君にはまだやることがあるんだからさ。」





「それは幸村だって同じじゃない。 まあ、とにかくうまく事を運ぶしかないね。

 さて、と。 そろそろ行ったほうがいいね。 夜になると色々面倒だからさ。」





それに2人はああと頷く。 面倒というのは、夜になると城の警備はより厳しくなるのだ。

それは当然といっては当然なのだろうが、それでも厳しすぎるほどだった。

今までも、何人もの賊が城に忍び込もうとしたのだがそのことごとくが失敗していた。





「王都のすぐ傍の谷川まで、俺が飛ばそう。

 あそこからなら、比較的安全にいけるはずだ。」





柳の言葉に、頷く2人。

それを確認すると、蓮二は忍足と長太郎を連れて来た池の上に乗る。

すぐに幸村と淳も乗る。 そして柳が呟くように言霊を唱えると、水が覆って3人の姿は瞬時に消え去った・・・。



                                                  ☆



「怯えないで。」





リシーヌの広い、広い草原。 その緑の草に覆われた中に、樺地は座っていた。

彼の周りには、犬のようなものや鳥のような姿をしたものがいた。

しかし、これらは皆ただの生き物ではない。 まず、サイズが違う。 どれも、体長2、3メートルはあった。

あと、その姿も普通の人が見慣れているようなものではなかった。

この者達は、リシーヌで生まれ育った魔物達だった。





「怯える必要はないから。」





諭すような口調で樺地は言いながら、魔物達をなでてあげていた。





「様子はどうだい?」





と、その時河村が近寄ってきた。





「大分、怯えてます。 オーブのざわめきを、敏感に感じ取っているんでしょう。」





「そうか・・・。 でもここは安全だから、そんなに怯えることはないよ。

 皆が守ってくれているからね。」





そう言いながら、河村も魔物の頭をなでる。 それを、気持ちよさそうにしている彼等。

と、ふいに樺地が顔を上げた。





「どうしたんだい?」





「・・・いえ、何も。」





顔を再び元に戻し、樺地は思う。





(・・・空が泣きそうだ・・・。)





青い、青い空を見ながら、樺地は1人心の中でそう思った-----。









【あとがき】

なんかこの話よく分かんなーい!

さあ、やっとこさ始まりました第八章。 最初はやっぱりよく分からん展開でした(汗)

次からはもっと分かりやすくなりますから(多分)

そろそろ、また新しい人を出さねば。 さーて、そこまでなんとか早く書くかー!!



07.01.12



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