ここに来るんも、久しぶりや。

相変わらず、綺麗なトコやな・・・。





Symphony of destiny  第八章・2





「着いたで。 ここがリルシールや。」





景から降り、忍足はそう言う。 長太郎はすごい、と感嘆の声を洩らす。

そこは、緑に覆われた美しい場所だった。 こんな所など、長太郎は今まで見たことがなかった。





「さて、と。 いつまでもここにいるわけにはいかんな。 ここは入口やさかい、見つかりやすい。

 もう少し行ったとこに、景を育てた奴等のいる家がある。 早く行こか。」





そう言い、忍足は歩き出す。 手綱を握られていない景も、そのあとをトコトコと付いて行く。 長太郎もあとを追った。

少しばかり歩くと、1件の木造の家が現れた。

その前まで来ると、忍足は景をその場に残し扉を開いた。





「久しぶりだね。」





扉を開けてすぐした、声。 その懐かしさに、忍足の顔が綻んだ。





「ああ、久しぶりやなオジイ。 あと・・・全員いるみたいやな。」





そう言って彼は部屋を見回した。 中では語りの民やシルフィードにいた面々、情報屋までもがそれぞれ思い思いの場所に座っていた。

忍足のあとに入ってきた長太郎も、知っている顔を見て笑顔を向けた。

とりあえず座ってと、剣太郎が2人に椅子を勧める。 それに座ると、誰が言うこともなくオジイが口を開いた。





「まずは軽く自己紹介から。 名前は知っていても、顔までは知らないからね。」





彼のその言葉で、各々自己紹介を始める。 それが一通り終わった所で、オジイは再び口を開いた。





「さて、と。 状況は大体分かっていると思うから、ここでは特に説明はしないから。

 とりあえず情報屋の皆と、シルフィードの皆は彼等と一緒にシーユに行って。 わしも一緒に行こう。

 だけど、残りの皆は全員ここに残るんだ。」





オジイのその言葉に反論したのは、黒羽だった。 それもそうだろう。

残れと言われているのはリシーヌの3人と語りの民である彼等3人だけ。 そのことに、彼は納得がいかないのだった。





「じゃあ、君達は戦うことが出来るのかい?」





オジイのその言葉に、グッと返答に困る黒羽。 彼等、語りの民は戦う力を持たない。

力を持っているのは、天根くらいのものだ。 しかしそれも、戦うための力ではない。

押し黙った黒羽に、樹が言う。





「バネちゃん、諦めるのね。 俺達じゃあ邪魔になるだけだよ。」





「でも・・・いっちゃんは本当にそれでいいのか?」





「いいわけないね。 ホントは俺も一緒に行きたい。

 でも、戦えないのに行っても迷惑かけるだけね。 それに、俺達にはこれらのことを語り継ぐっていう役目もある。

 それをやりぬくためには、今危険を冒して行くことは出来ない。」





樹のその説得に、黒羽はしぶしぶながらも頷いた。





「分かった。 ここに残るよ。 でも、約束してくれ。

 全員、生きて必ず戻ってくるってな。」





彼のその言葉に、全員は頷く。 それに満足したのか、黒羽は表情を崩した。





「これでもう大丈夫そうだね。 じゃあ早速で悪いんだけど、忍足君。

 シーユまで飛ばしてもらえないかい? 祐太君を早く観月君に見てもらわなきゃいけないんだ。」





「祐太って・・・ああ、さっき言ってた奴のことか。 分かった。 はよ行ったほうがええな。

 目覚ましたら、また色々と面倒やさかい。 不二はお前やったな。」





不二のほうを向いて忍足は言う。 それに、軽く頷く。





「自分の弟、人間に戻してやることは無理やけど、絶対に闇は抜いてやるさかい、安心してな。

 まあ、やるんは俺やないんやけど。 観月のことは知っとるよな?」





「うん。 彼には虎次郎のことでお世話になったからね。」





「そういやあそうやったな。 そんなら大丈夫やな。

 さて、長太郎。 俺は不二達と一旦シーユに戻る。 けど、またこっち来るからお前はここにいるか?

 色々見たいやろ?」





忍足のその言葉に、長太郎の目が輝いた。





「えっ! マスター、いいんですか?」





「ええよ。 これからまた忙しくなるやろから、今のうちに息抜きしとき。

 せやけど、この場所を出たらあかんで。」





「大丈夫です! 絶対に出ませんから。」





ニコニコと笑う彼の顔は、本当に嬉しそうだ。

それに忍足も笑みを返すと、他の面々のほうを向いた。





「っちゅーことで、長太郎はここに置いてくわ。

 俺は不二と祐太を連れてシーユに行くが、他に今行きたい奴おるか?」





そう問うと、滝が行くよと言った。





「僕はこれを届けなきゃいけないからね。」





そう言って取り出したものに、全員はあっと声を上げる。





「「それはっ?!」」





滝が取り出したのは、蒼に輝くガラスのような破片。

しかしそれからは、確かな力を感じた。





「そう、水のオーブの欠片だよ。 これを観月に渡さなきゃと思ってね。」





「なっ、何でそれをお前が持ってるんや?!」





忍足が驚愕の声を上げる。 それに滝は、笑顔で答える。





「リンドブルーにあった水のオーブ。 あれは千石達によって倒された竜が、最後の力を振り絞って3つに砕いたって聞いた。

 で、その時1つはその場に残って千石が入手。 もう1つの行方は僕はつかめなかった。

 で、最後の1つはいつの間にか僕の手元にあったんだ。 多分、僕のエレメントに引き寄せられたんだろうね。

 水のエレメントを持っている人って、以外に少ないからね。」





滝のその説明に納得する彼等。





「そうか。 せやけど、ホンマよかったわ。 これで全部の水のオーブが揃う。

 まあそう言っても、欠片の1つは既に王都の手中やけどな。」





「え? もう1つの欠片はどうしたの?」





「もう1つは蓮二が持っとる。 俺達をリンドブルーに呼んだ時に、偶然見つけたんやと。

 きっと、その欠片も蓮二を呼んだんやろな。」





「きっとそうだね。 でも、呼んだのが王都の騎士じゃなくて本当によかったよ。

 これ以上オーブが渡ったら大変なことになるからね。」





そう言うと、忍足はそうやなと肯定した。 と、その時。





「うっ・・・。」





ふいに聞こえたうめき声。 その声に、皆はバッと後ろを向く。

見えたのは、身じろぎをして今にも目を覚ましそうな祐太。 それに、全員の血の気が引く。





「ヤバッ! 起きたら色々面倒なことになるぜ?!」





「んなこと言ったってどうするって言うんですか! ここでまた殴ったらさすがに可哀想でしょう!

 不二さんもいるのに!」





ぎゃあぎゃあとそう騒ぐ岳人とアキラ。 その間にも、祐太は今にも起きそうだ。

はあっと溜め息をつき、忍足が起きるのを阻止しようと彼の元に足を向ける。 だが、それよりも早く彼の傍にいた者が。





「オジイ?」





眠る祐太の傍らに立ったのはオジイ。 彼は、静かに右手を祐太の顔の上に翳す。

と、ふいに青い光が。 それに、騒いでいた面々も静かになる。

たっぷり30秒ほど、オジイはそうしていた。 そして光が消えていくと、オジイは手を戻した。





「何したの?」





不二が心配そうに尋ねる。





「何、ちょっと時を止めただけだよ。 大丈夫。 強いものじゃないから。

 30分も経てば自然に切れるようにしてある。 さて、また起きそうになる前に行こうか。」





オジイのしたことに驚いていた皆は、はっと我に返る。 そして、それぞれああとか返事を返す。





「じゃあ行くで。 行く奴はこっち来い。」





忍足がそう言うと、不二と虎次郎、滝、オジイが傍に来る。

と、ここで忍足はアキラを呼んだ。





「何ですか?」





「自分も一緒に来い。 俺の目が曇ってないんなら、相当体にガタがきてるはずや。

 自分でも分かってるんやないか?」





彼のその鋭い指摘に、アキラの顔が曇る。





「・・・確かにそうです。 もう俺の体は長くは持ちません。」





アキラのその告白に、そのことを知らなかった面々は驚きの声を上げる。

不二もそのことは知らなかったのか、えっと洩らす。





「そんなら早めになんとかせな。 俺は無理やけど、もしかしたら観月がなんとか出来るかもしれへん。

 橘も一緒に来るんやろ?」





「ああ、当然行く。 アキラを1人になんてさせれないからな。」





「よし、これで今行くんは決まりやな。 じゃあここは頼むで。」





「分かってる。 じゃあまたあとでね。」





河村のその言葉に軽く頷き、忍足は言霊を唱える。

彼等の周囲を闇が覆う。 それが吸い込まれるように消えた時、彼等の姿はもうなかった-----。









【あとがき】

一箇所に人が集中しすぎていて、誰がいるのか最近更に分からなくなてきてしまいました(汗)

もうちょいちゃんと把握しておかないと。



07.01.26



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