こんな危険な橋を渡ることになろうとは・・・。

しかしスリルがあって、これも中々面白そうだ。






Symphony of destiny  第八章・7





「・・・また面倒なことになったな。」





幸村とジャッカルの会話を後ろで聞きながら、蓮二はそう呟いた。

少して幸村は話を終え、蓮二の元に戻って来る。





「話は聞いてたでしょ? そーゆーことだから上に行くよ。

 多分ブン太は榊か判田の所にいるから。」





「ああ。 分かったが先に説明してくれ。 分からないことが多すぎる。

 ジャッカルは一体何者何だ?」





蓮二にそう聞かれ、幸村は答える。





「とりあえず簡単に説明するね。

 ジャッカルは元々来たくて王都に来たわけじゃないんだ。 無理矢理連れて来られたっていうのがいいかな。

 理由は彼の持つ力が特殊だったから。 今から1年前、王都が無のオーブを入手したのは覚えてるよね?

 それを保護するために、榊は強力な守りの力が必要だったんだ。

 でもそんな力を持つ者は中々見つからなかった。 そんな時、土のオーブが新たに見つかったんだ。

 それを入手しに行ったのは判田だったらしいよ。 で、その時近くに村があったんだって。

 そこに立ち寄った際、見つけたのがジャッカルだった。 どうやったのかは俺には分からないけど、判田は彼の力を見抜いたらしい。

 で、使えると思って連れて来たんだって。」





「・・・そんな理由だったのか。」





「うん。 初めて知ったでしょ? このことは判田と榊しか知らないからね。

 2人は俺達にはあんまり詳しい説明はしてなかったし。 まあ、王都なんてしょっちゅう人が入って来るから気にしないのも無理はないけど。」





幸村がここまで言うと、蓮二は気になっていたことを口にした。





「・・・精一、1つ聞いていいか? 何でお前はこのことを知っている?

 というか、何で俺に言ってくれなかったんだ? 一応パートナーなんだが・・・。」





「ごめんごめん。 その時は言わなくてもいいと思って。

 まさかその時は、王都を裏切ることになろうとは思いもしなかったからね。

 で、何で知ってるかだけど偶然聞いたんだよ。 榊と判田が話しているのをね。」





「そうだったのか。 まあそれならいい。

 お前が榊の所に侵入して聞いたとかじゃかなったからな。」





蓮二がそう言うと、幸村はそんなことしないってと言う。

お前だからやりそうなんだ。と、心の中で思うが口には出さず、蓮二はどうやって上まで行く?と話を逸らした。





「そうだね、とりあえず俺の結界を張って行こう。

 最上階はさすがに無理かもしれないけど、その近くまではなんとかごまかしていけると思う。」





「そうだな。 そうするのが1番いいだろう。

 で、もし見つかったらどうするんだ? 今はきっと手塚も弦一郎もいる。 バレたら来るぞ。」





それに幸村は、さほど深刻そうではない顔で言う。





「その時は適当に蹴散らして脱出するさ。 まだ彼等には負けないよ。

 注意すべきは越前の力だけだからね。 真田も手塚も赤也も、技は皆大味なやつばかりだ。

 そんなのをこんな城の中でかませば被害が出る。 そうなるとこっちの思うツボだからね。 大丈夫、そんなに心配する必要はないよ。」





ニコリと笑いながら言う。 それに蓮二は、相変わらず恐ろしい奴だ。と1人思った。





(初めて会った時から思っていたが、やはり恐ろしいな。 3強の彼等を相手にするのを、恐れないなんてな。

 まあ、確かに1番実力があるのは精一だが・・・。 それでも、少し恐ろしい・・・。

 ・・・敵に1番回したくないな。)





そう思っていると、幸村が。





「さて、そろそろ行くよ。 日が沈むまで、もうそんな時間ないし。

 淳をいつまでも待たせるわけにはいかないからね。」





それに頷くと、幸村は言霊を唱えた。 すると、再び2人の体を結界が覆う。

言葉を発することが出来ないので、目線で合図をしあうと、彼等はその場から音を立てずに駆け出した―――。



                                                    ☆



「闇・・・が、見えます・・・。 強い、闇の力が・・・。」





虚ろな目を宙に向け、太一がそううわ言のように言う。

その後ろには、ゆったりとした椅子に座る榊の姿。





「・・・それはどこだ?」





「ダルト・・・メア・・・。」





太一の口からその言葉が漏れた瞬間、榊の口元に笑みが浮かぶ。





「もういい。 下がれ。」





そう言われると、太一は軽く礼をしてその部屋を去った。

1人残った部屋で、榊は呟く。





「そうか、あそこにあったのか。 ・・・あの者達も考えたものだ。 確かにあそこならば安全だ。

 しかし、甘いな。 私に対抗するにはまだ、な。」





歪んだ笑みを浮かべたまま、彼は窓から外を見る。

その目は一体どこを見ているのだろうか・・・?



                                                    ☆



「俺は元々、王都にいたんじゃよ。」





話してやると言って仁王の口から出たのは、予想もしていない言葉だった。





「はっ?」





それに、思わず千石が間抜けな声を上げる。 驚いたのは彼だけでなく滝もだった。

唖然とした表情をしている。 ただその中でオジイだけが平然としていた。





「・・・ドッキリ?」





「違うっちゅーに。 ここで嘘言ってどうすんじゃ? ホントの話じゃよ。 っつてももう5年も前の話じゃがな。

 確かに俺は王都にいいた。 まあ知らんのも無理ないじゃろ。 俺の存在を知ってんのは、榊と判田と亜久津と菊丸と伊武くらいじゃ。

 まあ榊と判田は、他の奴等といたことは知らんけどな。 バレたらちょいとやばかったからな。」





「え? 亜久津と知り合いだったの? それって結構すごい・・・。

 で、一体どこに所属してたのさ?」





「所属はなし。 俺の存在自体が極秘だったからな。」





それに千石がすかさずじゃあ何してたのさ?と聞く。

疑問に思うのも無理はないだろう。 自分も王都に属してはいたが、彼のことなど噂でも聞かなかったのだから。





「内部調査。 裏切りもんがいないかとか調べて密告する役じゃ。

 すんごく嫌だったんじゃよ。 仲間を売るようなことだから。 でもホントの話、結構見逃してたの多かったんじゃ。」





「本当に?」





「ああ。 1番いい例が橘じゃ。 あいつが裏切るんホントは知ってた。 じゃけど知らんかった事にしといた。

 っつーか、あいつらが行動起こした時、わざと王都から離れてたんじゃ。 そうするのが1番簡単にやりすごせるからのう。

 そうじゃ、もう1つ教えといちゃる。 橘が何で逃げ切れたか。 あれ、幸村がわざと逃がしたんよ。」





「はっ?!」





仁王のその言葉はあまりにも驚愕する内容だった。 千石は開いた口がふさがらない。

王都を離反した橘を追った幸村は榊に、確かに始末したと報告をしていた。

それはばれることはなく、榊達はそれを信じきっていた。 千石も同じだ。 しかしシルフィードで彼は生きていた。

確かに今思い返すと、彼から何で逃げ切れたのか理由を聞いていなかった。





「やっぱ知らんかったんか。 幸村は基本、去るもの追わずなんじゃ。 まあ、それでも手にかけてきたもんは多いけどな。

 橘に追いつくんは簡単じゃった。 柳の力は神尾以上だからな。

 追いついた時、幸村は上手くごまかしてやるっちゅーたんや。 それを橘は信じて、そのまま逃げたんじゃ。

 まあ橘と幸村は仲がよかったからな。 そうしても不思議じゃなかった。」





「・・・何でこれも知ってるの?」





「この会話、直接見てたからじゃ。」





この言葉に、千石はパタンとテーブルに突っ伏した。

ありえない。と呟く。 仁王のあまりの話に、滝もたじたじだった。





「仁王君、君情報屋に向いてるよ。 是非とも1度一緒に仕事したいくらい。

 やるねー。」





「それほどでもないんじゃけどな。

 で、橘が裏切ってから1年後に今度は俺が王都を抜けた。 まあ抜けるのは簡単じゃったよ。

 任務で外に行った時、上手く死んだようにしといた。 榊達には今もバレてない。

 そのあとアレクキサールで偶然柳生に会ってな。 気が合ったからここに来たちゅーことじゃ。

 これが俺の正体、っていうほどでもないんじゃが。」





話が終わると、千石ははーっと溜め息をついた。

と、今まで黙っていたオジイが口を開いた。





「・・・ということは城の内部構造、みんな知ってるんだね?」





「ああ、知っちょる。 3強でも入れんような場所もな。 まあ、それはそんなに多くはないが。

 なんでじゃ?」





そう問われると、オジイはお茶を一口すすって言った。





「もうすぐその知識が必要になるからだよ。」





その言葉の意味が分からず、首を傾げる3人。

しかしオジイはそれ以上言うつもりはないのか、またお茶をすすった。









【あとがき】

仁王の過去をちょっと入れてみました。 ってかここだけの話。

彼のことはほとんど考えてなかったんで、かなり無理矢理です(汗)

ま、いっか(よくない。)



07.2.20



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