最後にここに来た時と、何も変わってへんな。

この感じ、懐かしいわ。





Symphony of destiny  第九章・3





入口から中に入った途端、今までに見たこともないような濃度の闇が4人を包み込んだ。

ねっとりとまとわりつくような感じに、長太郎は思わず眉を顰める。 と、その時忍足の声がしたかと思うと淡い光が点いた。





「これで周り見えるやろ? さすがにこんだけ闇濃いと目も慣れへんからな。

 さて、こっちや。」





4人の周りにゆらゆらと浮かぶ、2つほどの光の玉。 歩くとそれも付いて来た。

忍足に案内されるまま、3人は足を進める。 と、不二が口を開いた。





「ねえ忍足。 ここって魔物いないの? さっきから気配はおろか物音1つもしないんだけど。」





彼のその言葉で初めて気付いた。 確かにそうだ。

今まで闇にばかりに気をとられていてまったく注意を払っていなかったが、何の気配もしない。

本来ならそれはありえないこと。 どんな場所にも、『何か』は存在するはずなのだから。





「おらへんよ。 ここには魔物はおろか生き物もおらん。

 闇が濃すぎるんや。 こんな中で生きていれるもんはない。 まあ、元々はここまで濃い場所やなかったんやけどな。

 500年前、不老不死んなった俺達はオーブを各地に安置する作業に入った。

 それぞれ最も適していると思われる場所にな。 闇のオーブの担当は俺やったんや。

 オーブは、その地に影響を及ぼす。 その結果がこれや。 まさかここまでになるとは思ってんかったがな。

 あまりにも凝縮された闇は、ここの光を全て奪った。 光のない場所で、生き物は生きていくことは出来ひん。

 せやからここには何もおらへんのや。」





忍足のその言葉に、3人はふんふんと頷いた。

そう会話をいている間にも、4人は先へと進んで行った。 時折下りながらも、先へと行く。

と、かなり進んだ所で忍足は足を止めた。





「着いたで。 この先に闇のオーブはある。 ・・・不二、感じるか?」





「うん。 そうとう濃い闇が充満してる。 こんなの、感じたことない。

 2人は大丈夫かな?」





そう言って不二は長太郎と佐伯を見る。





「多分大丈夫や。 とりあえず、もっと強い結界を張るさかい。

 まあ、そんな心配することはあらへんけどな。 他の奴がおる気配はないし。

 どうやら王都の連中よりも先に着けたみたいや。 早く手に入れてシーユに戻るか。

 ここから離したくはないが、取られるわけにはいかへん。」





そう言うと、忍足は長太郎と佐伯のほうに向き手を翳して言霊を唱えた。

2人を、入口で包み込んだような半透明の膜が再び包む。





「・・・これで入っても大丈夫や。 せやけど、きつくなったらいつでも言えよ。

 さて、と。 行くか。」





忍足のその言葉に、頷く3人。 そして彼等は、更に濃い闇の中へと足を踏み入れた・・・。



                                                    ☆



「・・・どうやらここのようだな。」





かなり進んでから、手塚はそう言って足を止めた。 それに倣い、日吉と桃城も足を止める。

中に入った3人は、少し下りになっている通路をひたすら進んで行った。

手塚が足を止めたのは、闇が更に濃くなっている場所の一歩手前。 闇のエレメントを持っていなくても、濃さの違いくらい分かる。





「そのようですね。 ・・・気配は感じられませんから、どうやら敵よりも先に来れたみたいです。

 急いで回収しますか?」





「ああ。 戦闘になっても面倒なだけだからな。 ・・・行くぞ。」





そう言って手塚は再び足を進めた。 彼の後を、2人も追う。

と、不意に何かを思い出したように日吉が口を開いた。





「そういえば伝えていませんでした。 榊様が俺達の他にもう1人、寄こすとおしゃっていました。

 多分そろそろ到着するはずです。」





「分かった。 だが、戦闘が起こる感じはないからやることはなさそうだがな。」





そう返すと、また歩き出した。

それに今度こそ2人は続き、彼等は闇の中に消えていった・・・。



                                                     ☆



「・・・無事でよかった。」





荒れ果てた地に立ち、そう呟くのははじめ。 彼の目の前には、白く輝くオーブ。

そのすぐ後ろには淳が同じく立っている。

2人の周囲には、瓦礫の山が築かれている。 これは、500年前にここに1つの町があったという証。

時のオーブとの戦いの際、町の大半が破壊された。

戦いが終わった後、魔導士達はこの町を外界から隔離した。 人々はここに戻ること叶わず、それぞれ各地に散って行った。

そして時のオーブをその身に封じた跡部を守るため、3人はここの存在を隠蔽した。

長い時をかけて、人々は全てを忘れていった。 そして今、この地の存在を知る者は数少ない。





「まだここには辿り着けてないみたいだね。」





淳がはじめのすぐ横まで来て言う。

それにはじめは頷く。





「ええ。 ここは最も厳重に監視していましたから。 そう簡単に見つからないように。

 しかし、それも闇のオーブが見つかってしまっては全く意味が無くなってしまいます。 光と闇は一対。

 互いは反発し、しかし引き合ったりもする。

 全ては忍足君達にかかっています。 彼等が失敗すれば、事態は余計悪くなるでしょう。」





「でも、もしそうなっても跡部がこっちにいるうちは大丈夫だよね?」





「とりあえずは、ですがね。

 時のオーブは彼の体の中にありますからね。 彼さえ僕達の所にいれば、封印を解かれることはありません。

 しかし、彼だけいても完全に防げる保障はありません。」





その言葉に、淳は首を傾げる。





「どういうこと?」





「オーブには、同じエレメントを持つ者の力を増幅するという特徴があります。

 その増した力は、半端なものではありません。 まあそれはその人の潜在的な力にもよりますが。

 一介の兵士でしたら、僕達の敵ではありません。 討伐隊は、多分大丈夫というくらいでしょう。

 しかし、もしも3強がオーブを持ったら。 その時は危険です。

 淳、レイダーツでの忍足君達の戦闘のことは聞きましたよね?」





「うん、聞いたよ。 やられそうになった鳳を助けて、火のオーブを取られたって。」





淳のその言い方に、はじめは苦笑いを溢す。





「まあ、結論を簡単に言えばそうなんですが。

 あの時忍足君が鳳君を助けに行ったため、真田君は火のオーブを持ち帰った。

 その直前真田君が忍足君に向かって放った攻撃は、威力的には強いがそこまでではなかった。

 反撃できなかったのは、鳳君に気を取られていたから。

 これがどういうことか分かりますか?」





「・・・まさか・・・。」





「そう、君が思った通りです。

 真田君は、火のオーブの力を使っていなかった。 つまり、自身の力のみで忍足君を止めたんです。

 多分あの時、彼はオーブの力を借りるということを思いつかなかったんでしょう。

 オーブは本当にただ持っているだけでは、力を得ることは出来ませんから。

 つまり、彼はオーブを使えばもっと強い力を得ることが出来る。 それがどれだけのものかは想像もつきません。

 しかし僕が予測するに、まともに戦うことが出来るのは数人でしょう。 とりあえず、淳は無理ですね。」





「・・・決め付けなくてもいいじゃん。」





「そう言われても本当のことですから。

 あなたはまだ発展途上です。 これからずんずん力は伸びます。 じきに、僕にも追いつくかもしれません。

 まあ、僕に追いつくのは並大抵ではありませんが。」





彼のその言葉に、淳は少しむっとした顔をする。

それもそうだろう。 自分の力を否定されたようなものなのだから。





「単刀直入に言わないでくれる?」





「そう言われましても。

 あなたと僕では、生きている時間が違うんですよ。 これでも僕は500年以上生きているんですから。

 この間、僕は何もしていなかったわけではありません。 負けないように、強くなるために色々と努力したんですから。

 ・・・話がずれてしまいましたね。 とにかく、3強がオーブを持ったら危険です。 そのことが心配なんですよ。」





「・・・だね。 じゃあやっぱりオーブを失うわけにはいかないね。

 観月、これは持って帰るの?」





「いえ、これはここに置いたままにしておきます。

 光の力は強すぎるんです。 ここから出したら、すぐに見つかります。」





そのはじめの言葉の意味が分からなくて、淳は尋ねる。





「どういうこと?」





「この地には、結界が張ってあるんです。 光の力を洩らさないように。

 まあ本当の目的は、跡部君の存在を隠すためだったんですが。

 ここから出せば、たちどころに気付かれます。 特に、支配者の彼のエレメントが闇だと分かった以上、慎重にいかなければ。」





はじめの真剣な表情に、淳も顔を引き締める。





「それで、これからどうするの?」





「とりあえず、ここの結界を強化しておきます。 少しの心休めにしかなりませんが・・・。

 その後は戻って、対策を考えましょう。」





そう言うと、はじめはオーブに近づいて行く。 淳はその光景を眺める。

目の前まで進んだはじめは、何かを憂うように目を軽く細める。 そして少しの間そうしていたかと思うと、おもむろに右手を上げた―――。



                                                 ☆



「・・・さて、と。」





そう言いながら、椅子からよっこいしょと腰を上げたのはオジイ。

彼の行動の意味が分からなくて、そこにいた面々は疑問の表情を浮かべる。





「どうしたの?」





千石がそう尋ねると、オジイは全員を1回振り返って言う。





「ちょっと用事を済ませに行ってくるよ。 心配しないでいいから。」





オジイはそう言うと、ゆっくりとした足取りで歩く。

その姿を全員が目で追っていたその時、不意に彼の姿が掻き消すように一瞬でその場から消えた。





「なっ?!」





それに、さすがに驚く面々。 しかしその中で柳生は何が起こったのか分かっているのか、落ち着いていた。





「ちょっ?! 今の何だよ?!」





あまりに驚いたのか、まくし立てるように言う岳人。

それに柳生は、落ち着いて返答する。





「はっきりとは分かりませんが、今のはあの人の得意なことの1つです。

 空間を捻じ曲げているのか、はたまた他の何かか。 私には正直分かりません。

 しかし、大丈夫ですよ。 今まで、あの人の言っていたことが違えたことはありませんでしたから。

 とりあえず、落ち着いて下さい。」





彼のその言葉に、全員はまた静かに座る。

そんな中、跡部は先ほどと同じ体制で思案に耽っていた。





(・・・今のは、間違いなく空間転移だ。 あのじいさん、何者だ?

 ・・・何でだ? 記憶がねーってのに、こんなのが分かるなんて。 だが、ありえねー話じゃねーな。

 俺の力は、あいつらの話を信じるんなら時のはずだからな。 同じなら、分かる・・・。)





そう考える跡部の表情は、端から見るといつもと変わらないように見えた。

・・・果たしてオジイは、一体どこに行ったのだろうか?

緩急をつけながら荘厳なメロディーを奏でるこの曲は今、終わりへと向かって最後の楽章へと進んでいく―――。









【あとがき】

書くの遅くてすいません! そんでもって話ほとんど進んでなくてすいません!!

久々の更新なのに、こんな出来ってどうよ? グダグダすぎて、もう目も当てられないです(汗)

多分次回から戦闘です。 やっとこさバトルシーン書けます。

そんでもってそろそろ・・・ふふふ。(何だよ?!)

さあ次回もお楽しみに! (だからさっきの何だよ?!)



07.4.22



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