時は動き出した。

今、悲劇が始まる・・・。





Doll  完全版・2





次の日の朝、跡部達はいつも通り朝練に来ていた。 いつもの1日の始まり。 しかし、

ひとつだけいつもとは違うものがあった。 





「おい。 樺地はどうした?」





「知りませんよ。 あれっ? まだ来てないんですか? 珍しいですね。」





そう、樺地が来てないのだ。

いつもは1番最初に来ている彼の姿がないことに、皆疑問を感じたが、すぐに来るだろうと練習に入った。 

しかし、練習も終わりごろになった時。





「跡部!」





急に榊が現れて、跡部を呼んだ。 

こんな朝から呼ばれることに、いぶかしげな顔をしながら、彼は榊の元へ向かった。 

2人は部室へと入っていき少しして榊が出てきてレギュラーと日吉を呼んだ。 

彼らに部室に入るように言った榊は、足早にその場を去った。 

首をかしげながら入っていった部室の中には、ソファに力なく座る跡部が。





「一体何があったんか?」





入ってすぐ、忍足が尋ねた。





「・・・・・・だ。」





「は?」





「・・・樺地が・・・死んだ。」





跡部の口から発せられた、とんでもない言葉。 それに全員が言葉を失った。





「そっ、そんな、まさか・・・。 何で?!」





岳人が叫ぶ。 ゆっくりと振り返った跡部の目はうつろだった





「・・・学校に来る途中、急にトラックが突っ込んできて・・・。 即死だったそうだ・・・。」





あまりに突然の仲間の死。 しかし、悲しみにくれる彼らの悲劇は、始まったばかりだった・・・。



                    ★



その夜、跡部達は樺地の家に来ていた。

そして、悲しみのどん底にいた彼らを、丁度来た榊が呼び出した。





「・・・お前達に、言っておきたいことがある。」





そう言って榊が話し出した。 樺地の死んだ時のことを。





「・・・樺地の死因だが、どうもトラックだけが原因ではないらしい。 

 警察の話によると、彼の体に大きな切り傷があったそうだ。 ・・・絶対にないはずのな。

 トラックにはねられただけではそんな傷はつかん。 何か鋭い刃物で切られたような傷だ。

 直接の死因はどうもそれらしい。 だが、何なのか分からない。 

 よって彼の死因は原因不明だ。 理由も、犯人も分からない以上、お前達にも危険があるかもしれない。・・・十分気をつけてくれ。」





「そんな・・・。」





全員は、ただただこの事態に耐えるしかなかった・・・。



                  ★



次の日、全員は学校に来ていた。 樺地の死を少しでも忘れようと。 

少しでも危険を回避しようと。 しかし、魔の手はすぐそこに忍び寄ってきていた・・・。



                  ★



・・・その日の放課後、日吉は1人理科準備室にいた。 

授業の片付けを先生に頼まれたからである。 

跡部に1人でいるなと言われたが、学校なら大丈夫だろうと思い、彼は1人でいた。





「・・・でも、なんか気味が悪いよな・・・。」





片付けながら、日吉は呟いた。 それはもちろん、樺地のことである。

傷のことが、ずっと気になっていた。 と、その時!





ゾクッ





彼を、悪寒が走りぬけた。 





(誰かいる。 誰かが俺を狙っている・・・。) 





反射的に身構えた。 用心深く辺りを見回す。

と、急に気配が消えた。 気配が消えたことに、少しだけ安心して気を抜いたその瞬間!!





「――――――!!!」





目の前に紅が広がるのが見えた・・・。



                  ★



部活が終わってから、長太郎と宍戸は、校舎の中を歩いていた。 日吉を探すために。

いつもは必ず部活に来る日吉が来ない。 そのことに長太郎は不安を感じていた。

昨日のこともあり、不安は余計募った。 

そのため、部活が終わってから探しに来たのだ。 宍戸は長太郎を1人にさせないようについてきていた。

とりあえず日吉の担任の先生に聞いてみたら、授業の片付けを頼んだという。

なので、2人は理科準備室に向かい、中に入っていった。





「日吉―、いるー。」





そう声をかけながら、奥へと進んでいく。 すると宍戸が、





「おい、長太郎。 何かにおわないか?」





と、聞いてきた。 確かに言われてみるとそんな気がする。 

どこかでかいだことのあるにおい。 あまり、嗅ぎたくないにおい。 これは・・・。





「・・・血?」





そう、これは血のにおいのようだった。 急に不安が増した。 

もしかしてこれは、と。 恐ろしいことを考えてしまった2人は、急いでにおいの元のほうへ。

はたしてそこには・・・。





「日吉・・・。」





そこには血の海に沈み、事切れている日吉が。 





「なっ、何で・・・?」





「おいっ! しっかりしろ、長太郎!!」





その光景に、長太郎は意識を手放した・・・。



                   ★



・・・再び死人が出た。 今度は日吉。 

彼の死人は腹部を切られたことによるものだった。 

そして、検死解剖で分かったことだが、彼の体からは、内臓が全て綺麗になくなっていた。 

こんなこと、普通の人間が出来るはずがない。 犯人は未だ不明だった・・・。

しかし、彼は手がかりを残した。 それは、漆黒の髪。 

彼の右手に、固く握り締められていたこの髪を、跡部は全力で調べさせた。



                    ★



しかし、翌日。 再び事件が起こってしまった。 





「忍足と宍戸がいない? なっ、何で?! さっきまで家にいたのに?!」





そう、忍足と宍戸が消えたのだ。

それは部活も学校も休みの土曜日のこと。

昨日、日吉が殺されたことで自分達に本当に危険が迫っていると思った跡部は、全員に召集をかけたのだ。

せめて、皆でいれば少しは危険が減るだろうと。

しかし、その矢先に忍足と宍戸が忽然と消えたのだ。 何も残さずに・・・。





「くそっ! 遅かったか!!」





そして、それを知ったジローも、あとを追うように消えた。 





「なにっ?! ジローと連絡がつかないだと?! くっそ、こんな時に・・・。

 まさか・・・ジローも? ・・・そんなことないよな。 でも、まさか・・・。

 とにかく、ジローの家に行くぞ! もしかしたら何かあるかもしれない!!」





跡部達は大急ぎでジローの家へと向かった。

はたして彼の部屋には、一枚のメモが・・・。





「跡部、ジローはどこに行ったの?」





「ちょっと待て。 今、読むから。」




跡部は、声に出して読み始めた。





『急にいなくなってごめんね。 でも、俺は行かなくちゃいけないんだ。

 このままだと2人の命が危ない。 だから、俺は助けに行くよ。

 今はきっといいと思うけど、あいつが皆を狙ってる。 人形に気をつけて・・・。』




ジローの残したその言葉に、全員は首をかしげた。





「人形? どういうこと?」




滝がそう問いかけたが、跡部は答えない。 その顔は、青ざめていた。





「・・・まさか、もしかしてあれか?!」





人形という言葉に彼ははっとした。 そして彼らは、跡部の家へと向かった。



                    ★



跡部の家に着くと、4人は彼の部屋へと急いだ。 すると・・・。





「・・・やっぱり。」





そこには空のガラス箱が。 中に入っていたのは、黒曜だった。





「やっぱりジローが言ってた人形ってこれのことだったのか。 

 でも、まさか、そんなことが? まあいい、とにかく調べればいいことだ。」





跡部はそう呟き、執事達に言った。 





「おいっ、今すぐ黒曜のことを調べろ! 大至急だ!!」 





ほどなくして、資料が集まった。 





「まっ、まさか! これは?!」





それによって判明した事実。 黒曜の製作者、叶北冥はとても人のいい人物だった。 

しかしある時、とある村でだまされたことをきっかけに変貌する。

それまで北冥は、人に幸せを与える人形を作っていた。 だが、事件の後、彼は人を恨み、

呪いの人形を作るようになる。 その人形を持った者は、必ず死ぬか不幸になる。 

そんなものを彼は作り続けた。 だが、そんな人形を作る日々は、ある日終わりを迎える。

彼は、とある廃寺で作業をしていたのだが、そこに村人が押し寄せたのだ。

村人は、彼の人形を恐れ、元凶の北冥を殺したのだった。 しかしこの時、1体の人形に北冥の血がつく。 

その瞬間、怨念の力で人形は動き始め、村人達を惨殺した。 

そしてその後、この人形行方は不明だという。 

この人形こそが、北冥最後の作品にして、強大な力を持った人形、黒曜なのだった。





「・・・まさか、こんな恐ろしいものだったとは・・・。」





「知らなかった・・・。 ねえ、跡部。 じゃあ樺地と日吉は黒曜に・・・。」





「やられたことになるな。 こいつは、所有者以外の者も殺すらしい。 

 そうか、だからあいつらも・・・。 とにかく、忍足達が心配だ。

 黒曜はきっと、自分が作られた廃寺にいる。 急いでそこに向かうぞ!!」





跡部のその言葉に、全員は頷いた。








【あとがき】

早々と2話目です。

今回から少し変化してます。 セリフがちょっと増えてたり。

でも、結構無理矢理つけた節があるので、変なことになってるかもしれませんが・・・。

そうならないように気をつけます。



05.9.29



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