真実は明かされた。

走れ、仲間を守るために。 戦え、もう二度と失わないように―――――。




Doll  完全版・3





「・・・うっ・・・ここは・・・?」





薄暗い部屋で、忍足は目を覚ました。 辺りを見回すと、横には気を失った宍戸が。

なぜ自分がここにいるのか気になったが、とりあえず宍戸を起こすために手をのばそうとした。 だが・・・。





「んな?! 何で俺縛られとんねん?!」





彼は両手を後手に縛られていた。 あと、ご丁寧に足までも。 よく見ると宍戸もである。

と、その時、宍戸がうめき声をあげ、目を覚ました。





「忍足? ここは一体どこなんだ?」





「分からん。 気付いたらここにいたんや。」





『ふふふふふ。』





と、その時怪しい声が。 声のほうに顔を向けると、そこには不気味に笑いながら空中を漂う黒曜が。 

この光景に、2人は声も出なかった。





『ふふふ。 お前達もじきにこいつらと同じようになる。 ここからは逃れられない。 さて、他の奴らを先に始末してくるとしよう。』





黒曜はそう言い残して消えた。 残された2人は、恐る恐る周りを見回した。

するとそこには、大量の白骨死体が。





「なっ、何だこれ・・・。」





宍戸がそう言ったその時。





『助けてくれ・・・。』





と、いう声が忍足の耳に届いた。 





「? 今の声、一体何や?」





不思議に思って回りを見回すが、誰もいない。 と、再び声が。





『我らの声が聞こえるのか? そうか・・・。 我らは黒曜に殺された者。 あれに殺されたのち、魂がここに縛り付けられている。 

 お願いだ。 あれを壊してくれ。 そうすれば我らは自由となれる。』





忍足に語りかけたのは、黒曜に殺された者だった。





「ちょっと待っとくれ。 聞きたいことがある。 あれは一体何なんや? 

 何で俺らを狙う?」





霊のいるほうに向かって話す忍足。 霊感のない宍戸はただ首をかしげるだけだった。





『あいつは呪いの人形です。』





さっき忍足の目の前に現れ話かけたのとは違う声が。

彼の問いに答えたのは、死に別れた仲間。





「日吉・・・。」





忍足のその言葉に、宍戸は目を見開いて驚いていた。

しかし、自分には見ることができないので、彼はあきらめて上げていた顔をふせた。





『・・・俺は黒曜に殺されました。 樺地もそうです。 奴は先輩達も殺すつもりです。 あいつの原動力は憎悪。 

 人間に対する憎悪のみで動いています。 あと、ここは寺です。 黒曜が作られた。 

 先輩達はえさとして連れてこられたんです。 跡部部長を来させるために。 今、先輩達はこっちに向かってきています。』





「そうなんか?! じゃあ、このままやと跡部たちの命も危ないっちゅーことやないか?!」





『ええ、そうなんです。 だから、先輩にお願いします。 黒曜を破壊する手段がこの寺にあるはずなんです。 

 それを探して奴を壊してください! そうすれば、俺達は全員救われます。』





「分かった。 絶対にお前らを救ってやるでな!」





『ありがとうございます。』





日吉はそう言って2人の縄を解いた。





「日吉・・・お前、本当にそこにいるんだな・・・?

 もう1度、お前を見たかったよ。 俺に霊感が何もないのが悲しいな・・・。」





『宍戸先輩・・・。』





宍戸がそう呟くと、日吉は辛そうに言った。 しかし、この言葉が宍戸に届くことはない。

この光景を、忍足は辛そうに見ていた・・・。

辛そうに宍戸を見ていた日吉は、不意に顔をそらせ忍足のほうを見た。 そして。





『あいつを倒せるものがこの寺の、かつて位牌を安置していたところにあるそうです。

 案内します。 ついてきてください!』





「ああ!」





2人は走り出した・・・。



                   ★



時はさかのぼり、忍足たちが目覚める前、ジローは1人寺に向かって歩いていた。





「・・・2人はまだ無事なんだよね?」





歩きながら、ジローは話かける。 そこには誰もいないように見える。 

・・・普通の人には。 しかし、そこには確かにいた。





『まだ・・・大丈夫です。 それに、日吉もいますから。』





「そっか。 でも少し急いだほうがいいよね。 ・・・助けてあげれなくてごめんね。

 樺地・・・。』





ジローと話していたのは樺地だった。





『いえ。 先輩がみんなを助けようとしている。 それだけで十分です。』





ジローにも霊感があった。 しかも、他の人よりも強い力が。 

そのため、彼は黒曜のことをずっと怪しいと思い、目をつけていたのだ。 

しかし、黒曜にほうが上手で、日吉と樺地が殺されてしまった。 

ジローが1人で寺に向かっていたのは、わかっていたのに防げなかった自分への責任を感じているからだった。





『もう少しで・・・着きます。』





樺地がそう継げた。 仲間を救えなかった・・・。

だから彼は向かうのだ。 これ以上、仲間を失わないために。 死んだ者を救うために。

たとえ、自分の命と引き換えになろうとも・・・。



                   ★



時は再び戻り、跡部達は仲間が捕らわれているであろう廃寺に向かっていた。 

途中、何度か道に迷いそうになったが、そのたびに何かが導いてくれた。 

そして、走って走って、ようやく寺が見えてきた時、中から何やら争う音が! その音に、4人が急いで入るとそこには・・・!





「ジロー!!」





そこには荒い息をし、体から多少の血を流しているジローと、不気味に笑う黒曜が。

ジローは、跡部達が来たのを見ると、哀しそうに笑った。





「何だ。 みんな来ちゃったんだ。」





と、その時!





『ふふふふふ。 まさかそっちからわざわざ来てくれるとはな。 手間が省けたわ!』





「くっそ。 このままじゃヤバイ! 皆、ここは俺にまかせて亮ちゃん達の所に行って!

 大丈夫・・・。 俺は絶対に死なないから。」





そう言って、ジローはにっこりと微笑んだ。





「分かった。 絶対に、絶対に死ぬんじゃねえぞ!!」





跡部がそう言い、その場を走り去ろうとしたその時!





『行かせるか!!』





「えっ?」





黒曜がそう言った瞬間、黒い何かが滝の体をかすめた・・・ように見えた。だが、次の瞬間、滝の体がゆっくりと倒れていった。





「「滝!!」」 





滝の体からは、大量の血が流れ出していた。 

そしてその光景を不気味な顔で見ていたのは・・・。





「人形・・・。」





それは人形だった。 黒曜とは違う人形。 そいつの手には真っ赤に染まった小刀が。 

そう、滝を攻撃したのはこの人形だった。 これも、北冥の作った呪いの人形の1体だった。





「・・・よかった。 まだ生きてる。 止血すれば何とか・・・。

 岳人、長太郎! 滝は俺が見る。 だから早く宍戸達の所へ行け! 

 ここにいても狙われるだけだ!」





跡部のその言葉に、2人はしぶしぶ頷いた。





「・・・分かった。 絶対に、絶対に死ぬなよ!」





「・・・必ず戻ります。 それまで、生きててくださいよ!」





そう言って、2人は本堂から走り去る。 しかし・・・。





『逃がすな! 追え!』





黒曜のその声で、突如10体近くの人形現れ、2人を追った。 

跡部は、滝の止血をしながら、願った。 全員が生きてここから出られるようにと・・・。



                                         ★



本堂を出た2人は、人形に追われながら必死に廊下を走っていた。 

しかし、意気込んで出てきたが、どこに忍足達がいるのか分からない。 だが、とある部屋の前まで来た時。





『こっちです!』





と、呼ぶ声が、長太郎の耳に届いた。 その声の主は、樺地だった。

何でここに樺地が?と思いながらも、2人は樺地に導かれるまま、走っり、部屋の中に飛び込んだ。

樺地に導かれ、入った部屋の扉を閉め、ほっとした時、





「岳人、長太郎!」





誰かが2人を呼んだ。 そこにいたのは・・・。





「侑士!」





「宍戸さん!」





そこにいたのは、黒曜に連れ去られた忍足と宍戸だった。 

2人は、日吉に導かれここ、位牌安置室に来ていた。 そして、人形のある部屋を探していたのだった。 

岳人と長太郎が飛び込んできた時、2人は丁度その部屋へと続く階段を見つけたところだった。





「2人共無事でよかったあ。 ところで長太郎、何でここって分かったんだ?」





岳人が不思議そうな顔をして尋ねた。





「えっ? だって先輩、樺地が導いてくれたじゃないですか。 今、ここにいますよ。

 それに、日吉だっているじゃありませんか。」





「えっ? そうなのか? ・・・ダメだ。 俺には何も見えない。」





「俺だってそうだよ。 俺らには霊感がないらしいな。」





2人はそう言って肩を落とした。 と、次の瞬間!





ダンダンダンッッ





急に何かが扉にあたる音が。 そう、人形達が扉を開けようとしているのだ。





「くっそ。 ヤバイでこの状況。 とっとと人形見つけな。」





『部長たちも心配ですしね。 樺地、部長たちのところに行ってくれ。

 ここは俺達で何とかするから。』





『ウス。』





そう言って樺地は消えた。 

そこに残された5人は、岳人と宍戸が扉を押さえ、残りの3人が地下へと降りていった。









【あとがき】

遅くなりました。 やっと続きです。

・・・なんか、死んだ2人が出てきてます。

最初はこんな予定じゃなかったんですけど下書きを書いてたらこうなってました。

もうどうにでもなれ-----。

投げやりですいません。

長かったこの話も次で終わる予定です。

もう少し、お待ちください。



05.10.8



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